ひと口に山形の果樹栽培といっても、地域の土壌など特性の違いによって栽培される種類も異なります。山形県内でも、それぞれの地域的な特性に合わせて、個性豊かな果物が開発されてきました。

まずは、全国生産量の約8割を占めるサクランボ（桜桃（おうとう））。明治時代から栽培されていたサクランボですが、その頃のサクランボは酸味が強すぎたため、缶詰用としてのみ栽培されていました。東根町（現・東根市）でサクランボを栽培していた佐藤栄助は、1912（大正元）年から2種類のサクランボを交配して品種改良を始めます。そして1924（大正13）年、生でもおいしく食べられるサクランボ「佐藤錦」の開発に成功します。「佐藤錦」は、現在では山形の果物の代名詞ともいえます、全国区の一大ブランドに成長したのです。

ほかにも、山形の果物といえば洋ナシがあります。山形では250年ほど前から和ナシが栽培されていましたが、洋ナシの栽培が始まったのは大正初期の東置賜郡屋代村（ひがしおきたまぐんやしろむら）（現・高畠町）といわれています。当時栽培されていた品種は「バートレット」。生食用としての評価は高くなく、缶詰用としての栽培が広がります。そのとき、「バートレット」の畑の片隅に、受粉確率を高める受粉樹として植えられていたのが洋ナシの「ラ・フランス」でした。この「ラ・フランス」、見た目こそ悪いですが、果肉が緻密で、独特のよい風味がありました。それに気づいた農家によって、1970年代から生食用に栽培され始め、一躍有名フルーツの仲間入りを果たしました。

山形フルーツの一角をなす、もうひとつの品目がブドウです。ブドウは江戸時代、甲州（山梨県）から置賜地域に入ってきたといわれています。明治初期に欧州産、米国産の品種が入ってくると栽培はいっそう盛んになりました。今では、「巨峰」「高尾」「ピオーネ」「安芸クイーン」「デラウェア」といった、全国的に人気のブドウが収穫されています。

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