トップ > カルチャー >  北海道・東北 > 山形県 >

出羽三山の修験道と権現

修験道とは、飛鳥(あすか)時代の呪術者・役小角(えんのおづぬ)を開祖とする宗教で、山を聖なる場所として畏れ崇拝する山岳信仰が、仏教思想と習合したものです。自然を究極の仏の世界ととらえ、神霊が宿る山岳のなかに身を投じて自然と一体化することで、仏の境地に至ることを目的とします。行者は修験者や山伏と称し、彼らは山中で命がけの修行に耐え、呪力や法力などの霊験を修得していきます。出羽三山の湯殿山は即身仏(そくしんぶつ)(ミイラ化した僧侶)が多いことでも知られています。即身仏となるには、山にこもり、ほぼ絶食状態で肉体をそぎ落としてから、生きたまま土中の石室に入る。飢饉や病に苦しむ人々を救う力を得るための即身仏修行は、究極の修験道といってもいいでしょう。

修験道の総本山は吉野の金峯山寺(きんぷせんじ)です。そこには「権現(ごんげん)」が祀られ、山の守護者として崇められています。権現とは神仏の仮の姿のことで、山岳信仰の神々に仏教でいう仏を融合させ、神として実態化させたものと考えられています。出羽三山においては、月山では月読命(つくよみのみこと)と阿弥陀如来、羽黒山では伊氐波神(いではのかみ)・稲倉魂命(うかのみたまのみこと)と聖観世音菩薩(しょうかんぜおんぼさつ)、湯殿山では大山祇命(おおやまつみのかみ)・大己貴命(おおなむちのみこと)・少彦名命(すくなひこなのみこと)と大日如来が権現として祀られています。

羽黒山、月山、湯殿山の順に参拝。明治時代の神仏分離政策によって修験道が禁止されるまでは、年に春・夏・秋・冬の4回峰中(ぶちゅう)修行が行われていました。現在は秋と冬のみ。
山形県ホームページなど各種資料を元に作成。

出羽三山の修験道の歴史

出羽三山における修験道は、約1400年前に崇峻(すしゅん)天皇の子である蜂子皇子(はちこのおうじ)が羽黒山を開山したのが始まりと伝わっています。父を蘇我馬子(そがのうまこ)に暗殺された蜂子皇子は宮中を脱出したあと、船で北陸沿いを北上し、やがて三本足の大烏(おおがらす)に導かれて羽黒山にたどりつきます。そして羽黒山で霊力を得て社をつくり、続いて月山、湯殿山を開いたとされます。蜂子皇子の修験道は「羽黒派古修験道」と呼ばれています。それは、修験道の開祖とされている役小角よりも時代が早く、役小角に修験道の極意を教えた能除仙(のうじょせん)が蜂子皇子と同一視されているからです。出羽三山は修験道羽黒派の総本山として、東北・関東・信越地方の修験者を擁する大教団へと発展し、現在に至ります。

出羽三山参拝が広がって発達した山形鋳物

山形市の周辺でつくられている伝統工芸品に「山形鋳物」があります。いまやその種類は日用品から機械製品まで幅広いですが、起源は非常に古く、平安時代末期といわれています。山形鋳物が大きく発展したのは江戸時代で、ときの城主が産業育成に熱心だったことに加え、庶民の間で出羽三山参拝が広がり、土産物の仏具の需要が高まったことが要因だといいます。

『山形のトリセツ』好評発売中!

地形、交通、歴史、産業…あらゆる角度から山形県を分析!

山形県の地形や地質、歴史、文化、産業など多彩な特徴と魅力を、地図を読み解きながら紹介するマップエンターテインメント。山形の知っているようで知られていない意外な素顔に迫ります。思わず地図を片手に、行って確かめてみたくなる情報を満載!

Part.1 地図で読み解く山形の大地

・出羽富士・鳥海山の成り立ちと火山がもたらす湧水や地形
・山形盆地の成り立ちと扇状地に発展した県都・山形市
・大江町の最上川川床で発見!ヤマガタダイカイギュウって何だ!?
・河川がつくった肥沃な庄内平野を35㎞におよぶ庄内砂丘が守る
・最上川・五百川峡谷の誕生と流域に形成された河岸段丘
・どうやって誕生し段丘が発達?山形唯一の有人離島「飛島」の謎
・冬の名物・美しい樹氷はどうして蔵王山に形成されるのか?

…などなど山形のダイナミックな自然のポイントを解説。

Part.2 山形を駆け抜ける鉄道網

・急勾配と豪雪を克服し新庄へ至る全国初のミニ新幹線・山形新幹線
・急峻な板谷峠で奥羽山脈越え!逞しき幹線・奥羽本線の今昔
・九州~北海道の貨物車両が走り日本海縦貫線をなす羽越本線
・日本初の交流電化路線にして今や貨物の重要路線の仙山線
・最上川の絶景峡谷を走る!新庄と余目を結ぶ陸羽西線
・三山・高畠・尾花沢の3路線 山形交通の鉄道路線網とは?

…などなど、山形ならではの交通事情を網羅。

Part.3 山形で動いた歴史の瞬間

・木の実でつくったクッキーも!? 山形県域の縄文時代
・和人が蝦夷の領域へと進出! 城柵から見る開拓の歴史
・鎌倉御家人が地頭として進出! 次第に激化する権力争い
・伊達氏との対立を経て統治者に君臨した最上氏の栄枯盛衰
・街道と航路が整備され 発展する沿道の産業と商業
・領主交代に領民が抵抗! 天保の国替え反対一揆とは?
・異名は鬼県令!? 初代県令三島通庸が推進した土木工事

…などなど、激動の山形の歴史に興味を惹きつける。

『山形のトリセツ』を購入するならこちら

リンク先での売上の一部が当サイトに還元される場合があります。
1 2

記事をシェア

※掲載の情報は取材時点のものです。お出かけの際は事前に最新の情報をご確認ください。

まっぷるトラベルガイド編集部は、旅やおでかけが大好きな人間が集まっています。
皆様に旅やおでかけの楽しさ、その土地ならではの魅力をお伝えすることを目標に、スタッフ自らの体験や、旅のプロ・専門家への取材をもとにしたおすすめスポットや旅行プラン、旅行の予備知識など信頼できる情報を発信してまいります!

エリア

トップ > カルチャー >  北海道・東北 > 山形県 >

この記事に関連するタグ