目次
最上川は中~下流に峡谷、下流部には河岸段丘
この最上川中~下流には、五百川峡谷(いもがわきょうこく)や最上峡(もがみきょう)という峡谷が刻まれています。このうち五百川峡谷は、白鷹町(しらたかまち)の荒砥(あらと)地区から朝日町を経て大江町の左沢(あてらざわ)地区まで約25㎞にわたり連続しています。また、五百川峡谷は、上郷(かみごう)ダム付近を境として上流部は川が直線的に流れますが、下流部には河岸段丘が発達し、川は曲がって流れる特徴があります。流路が明らかに異なる理由のひとつには、上流部は硬質な泥岩層(でいがんそう)、下流部はやわらかくて、水の流れが変わりやすいシルト層や砂岩層でできている点があります。なお、河岸段丘とは、河川沿いにできた平らな段丘面と段丘崖という急崖からなる階段状の地形です。これは、隆起や海面上昇と河川による侵食を繰り返すことで形成されたものです。なお、最上川の河岸段丘は、山間部にある朝日町などに貴重な平地をもたらし、朝日町では集落のほとんどが段丘面上に築かれています。
最上川の歴史は約1000万年前の地殻変動からはじまる
最上川の原形となる水の流れが生まれたのは、約1000万年前のこと。海底にあった現在の庄内~新庄、山形、米沢一帯が地殻変動によって隆起し、日本海から続く入り江となりました。最上川で化石が発見されたヤマガタダイカイギュウは、このような入り江に生えている海藻などを食べて生活していたと考えられています。
最上川の歴史は大地の隆起によって現在の形に
約500万年前、大地の隆起が進み、日本海から続く入り江は分断され、現在は盆地になっているエリアがほぼ湖や沼になり、それらをつないで生まれたのが原始の最上川である。第四紀(約258万8000年~現在)になると、大地の隆起は激しさを増し、河川はより大地を侵食し、河川周辺は切り立った峡谷になっていきました。こうして五百川峡谷や最上峡は生まれました。
最上川の歴史は五百川峡谷に刻まれる
五百川峡谷の段丘群は、Ⅰ~Ⅴに区分することができます。現在の河床との比高は、段丘群Ⅰが200~140m、段丘群Ⅱが140~70m、段丘群Ⅲが70~50m、段丘群Ⅳが50~数m、段丘群Ⅴが数メートル以下となっています。段丘群は標高の高いものほど古く、低いものほど新しい。
五百川峡谷段丘群I~Ⅱ
段丘群Ⅰは、ほとんど平坦面がなく、朝日町の和合平などにわずかに分布するだけです。段丘群Ⅱは、侵食などによって段丘面が削られているものの、平坦な面が残っています。また、比高約80m付近には、湖沼堆積物からなる層が見られる。これは宮宿付近で起こったと考えられる山体崩壊によって最上川が堰き止められ、その上流が湖となっていた時代の堆積物であります。
五百川峡谷段丘群Ⅲ~Ⅴ
段丘群Ⅲは、朝日町西部公民館周辺などに見られます。段丘群Ⅳは、幅の広い段丘面が多く、段丘群Ⅴは現在の河床沿いに低く分布しています。
地層に含まれていた木片の年代測定から、段丘群Ⅳが形成された時期は、約3万年前であることがわかっています。五百川峡谷には、現在に至るまでの1000万年間の最上川の歴史が刻まれているのです。
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Part.1 地図で読み解く山形の大地
・出羽富士・鳥海山の成り立ちと火山がもたらす湧水や地形
・山形盆地の成り立ちと扇状地に発展した県都・山形市
・大江町の最上川川床で発見!ヤマガタダイカイギュウって何だ!?
・河川がつくった肥沃な庄内平野を35㎞におよぶ庄内砂丘が守る
・最上川・五百川峡谷の誕生と流域に形成された河岸段丘
・どうやって誕生し段丘が発達?山形唯一の有人離島「飛島」の謎
・冬の名物・美しい樹氷はどうして蔵王山に形成されるのか?
…などなど山形のダイナミックな自然のポイントを解説。
Part.2 山形を駆け抜ける鉄道網
・急勾配と豪雪を克服し新庄へ至る全国初のミニ新幹線・山形新幹線
・急峻な板谷峠で奥羽山脈越え!逞しき幹線・奥羽本線の今昔
・九州~北海道の貨物車両が走り日本海縦貫線をなす羽越本線
・日本初の交流電化路線にして今や貨物の重要路線の仙山線
・最上川の絶景峡谷を走る!新庄と余目を結ぶ陸羽西線
・三山・高畠・尾花沢の3路線 山形交通の鉄道路線網とは?
…などなど、山形ならではの交通事情を網羅。
Part.3 山形で動いた歴史の瞬間
・木の実でつくったクッキーも!? 山形県域の縄文時代
・和人が蝦夷の領域へと進出! 城柵から見る開拓の歴史
・鎌倉御家人が地頭として進出! 次第に激化する権力争い
・伊達氏との対立を経て統治者に君臨した最上氏の栄枯盛衰
・街道と航路が整備され 発展する沿道の産業と商業
・領主交代に領民が抵抗! 天保の国替え反対一揆とは?
・異名は鬼県令!? 初代県令三島通庸が推進した土木工事
…などなど、激動の山形の歴史に興味を惹きつける。
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