山梨県内にある道祖神には、他ではあまり見られない特徴があります。「丸石道祖神（まるいしどうそじん）」という名の通り、多くが球体をしているのです。

山梨県内には1000カ所以上の道祖神がありますが、そのうち700カ所以上が「丸石」。直径110㎝以上にもなる巨石もあれば、手のひらに乗るほどの小さな石もあります。さらに、単体で祀られているもの、大小組み合わされているもの、同じくらいの大きさのものが寄せ集められているものなど、場所によってさまざま。共通しているのは、いずれも丸い石を使っているということです。

そして、なぜその形をしているのか、いつ頃から、どんないわれがあるのかは、謎に包まれていますが、平安時代末期に描かれた『信貴山縁起絵巻尼君の巻（しぎさんえんぎえまきあまぎみのまき）』には、丸い石が積まれた風景が描かれていることから、かなり古くからこのあたりに丸い石があり、信仰の対象となっていたことがわかります。

最大の特徴である丸い形、これもまた、なぜこの形なのか理由ははっきりわかっていません。丸い形が「円満」を思わせるとして、人々の崇拝を集めていたため、川から流れてきた、もしくは火山活動によって丸くなった石が、道祖神信仰と結びついた、といった自然発生的な説がある一方で、それにしては等しく丸い形がそろい過ぎているのでは、といった意見もあります。あるいは、最初は自然のものを据えていたけれど、次第に人の手で削るようになったのでは、という推測もあり、解明はされていません。

いずれにしても、その形を神の象徴として誰かが削り出したのであれば、そこには安寧や安全などへの祈りが込められていたに違いありません。

今も「丸石神」「道祖神さん」「サイノカミ」などと呼ばれ、ところによっては花や供え物が置かれています。謎のまま、ロマンをかき立てる丸石神は、現代でも人々の暮らしを見守ってくれる身近な存在なのでしょう。

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