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小泉八雲は松江の学校で働き始める

来日後、小泉八雲は契約条件に不満を抱き、同年中に特派員としての契約を切り、知人の紹介で島根県松江市にあった尋常中学校(現・松江北高校)に英語教師として赴任しました。赴任する際の辞令にハーンのつづり「Hearn」を「ヘルン」と表記していたことが広まり、本人も気に入ったことから、この愛称で呼ばれたといいます。

このとき身の回りの世話をしていた女中が、のちに妻となる小泉セツでした。小泉八雲とセツはふたりだけがわかる独特な片言まじりの「ヘルンさん言葉」で意思疎通をしたといいます。

小泉八雲の作品の原点はセツから聞いた出雲の伝承

セツは幼少期から物語が好きで、小泉八雲にも出雲地方や日本各地に伝わる不思議な話を聞かせており、これが小泉八雲の執筆活動の一助となりました。

それを元に独自の考察を加えて執筆されたのが、『知られぬ日本の面影』や『怪談』です。『知られぬ日本の面影』所収の「神々の国の首都」は松江の印象記で、小泉八雲がこの地に到着して最初に滞在した松江大橋周辺、日常的に散歩してまわった寺社のことなどが記されています。

小泉八雲が暮らした松江の武家屋敷

1891年、小泉八雲は塩見縄手の武家屋敷で5か月ほど暮らしています。妻のセツは旧松江藩士の娘でしたが、この家は小泉家のものではなく、旧藩士・根岸家に借りたものです。江戸時代後期に建てられた屋敷は、敷地面積約1000㎡の広さで、三方に日本庭園が眺められます。

随筆『知られぬ日本の面影』はこの屋敷で執筆され、第16章「日本の庭」の舞台となっています。彼は浴衣に下駄姿でこの庭を散歩したり、部屋から庭を眺めたりするのが好きだったといいます。

小泉八雲が暮らした武家屋敷は、現在国の史跡に指定され、「小泉八雲旧居(ヘルン旧居)」として一部が一般公開されており、小泉八雲が愛した日本庭園も当時と同じように鑑賞できます。隣接する「小泉八雲記念館」では、八雲の遺愛品、自筆原稿などが展示されています。

小泉八雲旧居(ヘルン旧居)

住所
島根県松江市北堀町315
交通
JR松江駅から市営バスぐるっと松江レイクラインで16分、小泉八雲記念館前下車すぐ
料金
大人310円、小・中学生150円(20名以上の団体は大人240円、小・中学生120円、障がい者手帳・療育手帳持参で本人と同伴者1名無料)

小泉八雲が松江で過ごしたのはわずか1年3か月

小泉八雲はそのあと、熊本で第五高等中学校(現・熊本大学)の教師、神戸の英字紙『神戸クロニクル』の記者、東京の帝国大学文科大学(現・東京大学文学部)の英文学講師、早稲田大学の講師として、居を転々としました。

小泉八雲が松江で過ごした期間は生涯のうちわずか1年3か月に過ぎませんでしたが、彼がこの地を愛したことは、1896年に帰化し改名した名が出雲にかかる枕詞「八雲立つ」にちなむとされていることからもうかがえます。

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Part.1 地図で読み解く島根の大地

・「弁当忘れても傘忘れるな」な島根の天気
・山陰地方と呼ばれるのは島根県と鳥取だけ?
・水質の良い一級河川「高津川」と大井谷の棚田
・隠岐諸島の「レッドクリフ」をはじめとする島々
・三県境と全国5番目に広い湖「中海」と7番目の「宍道湖」
・全盛期は東アジア最大、世界で2位の産銀量「石見銀山」は港まで続いていた?
・東京ドームほどの海浜公園「石見畳ヶ浦」

ほか

Part.2 島根を駆ける充実の交通網

・「銀の道」さらに「うなぎ街道」「鯖街道」とは?
・朝廷への情報伝達に使われた「官道」とは?
・土木学会が指定した土木遺産「福浦トンネル」
・一畑電鉄と一畑駅、大社線と大社駅
・Mランドドライビングスクールとは?
・JR木次線の「三段式スイッチバック」とは?
・島根の旧三江線トロッコ、初めて県境越え広島へ
・奥出雲おろちループ
・古代山陰道
・「ベタ踏み坂」江島大橋
・未成線広浜鉄道
・神にまつわる名前のついた10の駅
・最後の寝台列車サンライズ出雲

ほか

Part.3 島根の歴史を深読み!

・『日本書紀』『古事記』から神々を知ろう
・古墳も多い島根県
・『出雲国風土記』の世界「黄泉の穴」
・出雲大社を筆頭とする様々な「神社」
・「出雲」「石見」「隠岐」から「島根に」
・山陰のモンサンミッシェル?こと宮ケ島 衣毘須神社
・出雲の方言 東北の訛りとの共通点
・なぜ津和野町に「森鴎外記念館」が?「小京都」と呼ばれるわけ
・歴史的大打撃「廃仏毀釈」で失われたモノ
・島流しといえば「隠岐」?
・江戸時代の島根県、松江藩による出雲平野の開拓

ほか

Part.4 島根で育まれた産業や文化

・「相撲」発祥の地と言われる出雲
・名湯の多い島根県
・継承される多くの神楽と安来節
・歌舞伎の原型になったとされる「阿国歌舞伎」
・「玉鋼」と「たたら製鉄」と黒曜石
・日本で唯一「黄長石霞石玄武岩」を産出
・小泉八雲の作品と小泉邸

ほか

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