美しさと荒々しさの両面を持つ小浜海岸に浮かぶ衣毘須神社は昔から人を惹きつけています。1960年、宮内庁から東宮御所の壁画の依頼を受けた画家の東山魁夷（ひがしやまかいい）が当地を訪れ「壁画の参考になる」と記し、のちに壁画『朝明けの潮』を完成させました。衣毘須神社からは魁夷がスケッチした猫島の付近が望めます。

社殿に使われている赤い瓦は石州瓦といい、雪深い土地や海沿いの海風の激しい土地がある島根県では、一般の住宅にも使われています。

石見地方で取れる良質な粘土と出雲地方の特産の来待石で作った釉薬（ゆうやく）（素焼きの陶磁器に塗るガラス質の溶液。装飾と水分の吸収を防ぐために用いる）を原料として、摂氏1300度前後の高温で焼き上げます。通常の瓦の1000度前後よりも高い温度で焼くことで強度が高く雪の重みにも耐え、塩害にも強い瓦ができあがるのです。赤い色は使用している釉薬によるものです。

国道191号から１本北の道沿いにあり、神社専用の駐車場があり看板も立っていることから車で行きやすい場所です。公共交通機関でも、山陰本線の戸田小浜（とだこはま）駅から徒歩15分ほどであります。そのため、多くの観光客を集める名所となっているのです。

松江初代藩主・松平直政が入国して10年目、天候不順だったことから松江市内の城山稲荷神社の神霊を阿太加夜（あだかや）神社に移し祈祷したところ豊作となったため、吉例となり10年ごとに神幸が行なわれるようになりました。「ホーオオエンヤ　ホーランエーエ　ヨヤサノサ　エーララノランラ」と独特の節回しで唄うことが特徴で、日本三大船神事の一つに数えられる松江市を代表する祭りとなりました。

祭りは3日間行なわれ、1日目は渡御祭と呼ばれ櫂伝馬船が城山稲荷神社から阿太加夜神社の方面に向かいます。2日目の中日祭では櫂伝馬が陸船に乗り換え参道を進み阿太加夜神社に向かい境内で櫂伝馬踊を奉納します。7日間の祈祷が終わると行なわれる最終日の還御祭では1日目のコースを戻ります。渡御祭と還御祭で披露される櫂伝馬踊奉納を一目見ようと大勢の観光客が櫂伝馬船の通る大橋川の両岸に集まります。

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