目次
JR木次線の歴史と魅力
木次線は1916年10月11日に私鉄「簸上鉄道(ひかみてつどう)」として宍道駅から木次駅(大原郡斐伊村、現・雲南市木次町)までが開業しました。その後、1934年に国が簸上鉄道を買収して木次線となり、出雲坂根(いずもさかね)〜三井野原(みいのはら)の「三段式スイッチバック」の工事を経て1937年に全通しました。
車窓からの景色は、鉄道ファンのみならず観光客にも人気があります。宍道駅から木次駅までは名産品の茶畑が車窓に広がります。雨の多い出雲地方は茶の栽培に適しており、松江藩主で大名茶人としても知られる松平不昧(まつだいらふまい)が茶の湯文化を広めた“茶どころ”でもあります。
長さ2241mの下久野(しもくの)トンネルを抜けると奥出雲町に入ります。たたら製鉄の跡を利用した棚田が車窓に広がり、一帯はブランド米「仁多米(にたまい)」が有名です。奥出雲町を代表するもうひとつの名産が「蕎麦」。初秋の車窓からは蕎麦の白い花が眺められています。
JR木次線を走る「観光トロッコ列車奥出雲おろち号」
広島県との県境を越える三井野原駅付近は中国地方の鉄道路線でも最も標高が高く、秋はナナカマドなど高山性樹木の鮮やかな紅葉が広がります。木次線では春から秋にかけて週末を中心に「観光トロッコ列車奥出雲おろち号」が運行されています。
木次線観光トロッコ列車「奥出雲おろち号」は、トロッコ客車と冷暖房完備の控車をディーゼル機関車が牽引します。1枚の指定席券でトロッコ客車と控車両方の席に座ることができます。
JR木次線亀嵩駅は松本清張の小説の舞台にもなった
松本清張の小説『砂の器』の舞台として知られている亀嵩駅。事件解決の鍵になるのが「ズーズー弁」です。被害者と犯人が「東北弁」で会話し、「カメダ」という言葉がくり返されていたという証言をつかみます。ズーズー弁が出雲地方でも使われていることを知った刑事は「カメダ」が東北ではなく島根県の亀嵩であることを突き止めました。
亀嵩駅のある仁多郡奥出雲町の方言、「仁多弁」は出雲地方のズーズー弁の中でもいっそうやわらかい響きを持ちます。「仁多弁は“おんぼら”とした言葉だ」といわれます。「おんぼら」とは仁多弁で“穏やかな、角を立てない”という意味です。冬の寒さが厳しい山間地で助け合って暮らす、この土地のぬくもりが方言に表れています。
JR木次線の神にまつわる名前の付いた駅の一部を紹介!
出雲大東駅(いずもだいとうえき)…神阿多津姫命(かむあつたひめのみこと)
別の名を木花之佐久夜毘売ともいう美しい姫神で、駅の北東にある加多神社の配祀神。
南大東駅(みなみだいとうえき)…佐世の髪飾り(させのかみかざり)
素戔嗚尊が佐世の葉を髪飾りにして踊っておられるとき、その枝がこの地に落ちて佐世という地名になりました。
木次駅(きすきえき)…八岐大蛇(やまたのおろち)
木次の町を流れる斐伊川流域には八岐大蛇伝説が数多く残ります。八口神社の境内にある壺は八塩折の酒を入れた八つの壺のうちの一つといわれます。
日登駅(ひのぼりえき)…素戔嗚尊(すさのおのみこと)
八岐大蛇を退治した素戔嗚尊が奇稲田姫(くしいなだひめ)と須賀へ向かう途中、この駅の南方にある大森の地で婚儀の準備をしたといわれます。
下久野駅(しもくのえき)…動動(あよあよ)
昔男が田を耕していると鬼が襲って来て食おうしました。両親は竹やぶの中に隠れましたが、枝が動いていたので、男は「動動(あよあよ)」と叫んだのです。それで阿用という地名になったという。
出雲三成駅(いずもみなりえき)…大国主命(おおくにぬしのみこと)
昔大国主命がこの三成を含む三澤郷におられ、御子の阿遅須伎高日子命(あじすきたかひこのみこと)が大きくなっても泣き止まないので、神に祈られたところ泣き止んで立派な御子になられたといいます。
亀嵩駅(かめだけえき)…少彦名命(すくなひこなのみこと)
大国主命と一緒に病気治療の法や、動物の災いを除くまじないの法などを定め国造りに励まれました。駅の東北の湯野神社に大国主命とともに祀られ、神社の近くから湧く温泉の効能も守護されています。
出雲横田駅(いずもよこたえき)…奇稲田姫(くしなだひめ)
駅の東南の稲田神社に祀られ、この辺りで生まれたと伝わります。父神は脚摩乳、母神は手摩乳。
出雲坂根駅(いずもさかねえき)…天真名井(あめのまない)
駅の周りから「延命水」と呼ばれる名水が湧きます。高天原にも清らかな水が湧く天真名井があり、神々が浄めに用いられるといいます。
三井野原駅(みいのはらえき)…高天原(たかまがはら)
素戔嗚尊は神々の世界・高天原から出雲の鳥上の峰に天降られ、八岐大蛇を退治して奇稲田姫と結婚して出雲の国を治められました。
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Part.1 地図で読み解く島根の大地
・「弁当忘れても傘忘れるな」な島根の天気
・山陰地方と呼ばれるのは島根県と鳥取だけ?
・水質の良い一級河川「高津川」と大井谷の棚田
・隠岐諸島の「レッドクリフ」をはじめとする島々
・三県境と全国5番目に広い湖「中海」と7番目の「宍道湖」
・全盛期は東アジア最大、世界で2位の産銀量「石見銀山」は港まで続いていた?
・東京ドームほどの海浜公園「石見畳ヶ浦」
ほか
Part.2 島根を駆ける充実の交通網
・「銀の道」さらに「うなぎ街道」「鯖街道」とは?
・朝廷への情報伝達に使われた「官道」とは?
・土木学会が指定した土木遺産「福浦トンネル」
・一畑電鉄と一畑駅、大社線と大社駅
・Mランドドライビングスクールとは?
・JR木次線の「三段式スイッチバック」とは?
・島根の旧三江線トロッコ、初めて県境越え広島へ
・奥出雲おろちループ
・古代山陰道
・「ベタ踏み坂」江島大橋
・未成線広浜鉄道
・神にまつわる名前のついた10の駅
・最後の寝台列車サンライズ出雲
ほか
Part.3 島根の歴史を深読み!
・『日本書紀』『古事記』から神々を知ろう
・古墳も多い島根県
・『出雲国風土記』の世界「黄泉の穴」
・出雲大社を筆頭とする様々な「神社」
・「出雲」「石見」「隠岐」から「島根に」
・山陰のモンサンミッシェル?こと宮ケ島 衣毘須神社
・出雲の方言 東北の訛りとの共通点
・なぜ津和野町に「森鴎外記念館」が?「小京都」と呼ばれるわけ
・歴史的大打撃「廃仏毀釈」で失われたモノ
・島流しといえば「隠岐」?
・江戸時代の島根県、松江藩による出雲平野の開拓
ほか
Part.4 島根で育まれた産業や文化
・「相撲」発祥の地と言われる出雲
・名湯の多い島根県
・継承される多くの神楽と安来節
・歌舞伎の原型になったとされる「阿国歌舞伎」
・「玉鋼」と「たたら製鉄」と黒曜石
・日本で唯一「黄長石霞石玄武岩」を産出
・小泉八雲の作品と小泉邸
ほか
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