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小海線の小淵沢駅は「小淵沢の大カーブ」が見どころ
小淵沢駅から小海線の列車に乗ると、中央本線と並んで西へ向かって走り始めますが、すぐに半径300mの大きなカーブに差し掛かり、車両の向きがほぼ180度変わります。八ヶ岳から甲斐駒ヶ岳まで見渡せる、壮大なパノラマの中を列車が行くこの「小淵沢の大カーブ」は、かつて「高原のポニー」の愛称で親しまれたC56形蒸気機関車が走っていた頃から、鉄道愛好者たちの間で人気の写真撮影スポットとなっています。
なお、このように大きなカーブがある理由として、当初小海線の起点は小淵沢駅ではなく、中央本線を長野県側に2駅進んだ富士見駅となるはずでしたが、富士見駅を起点とするルートは距離が長く、多くの橋梁やトンネルの建設が必要となりその費用がかさむため、大きなカーブを設けて小淵沢駅起点のルートにしたとの説が伝わっています。ですが、他にも距離を稼いで勾配を緩和した、予定のルート上に巨石があったためそれを避けたという説もあって、真相ははっきりとはわかっていません。
【小海線の標高1000m越えの駅】甲斐小泉駅と甲斐大泉駅
最初の停車駅、甲斐小泉駅は、小ぶりながら八ヶ岳山麓に生息する蝶、オオムラサキをモチーフとした駅舎が目を引く無人駅です。標高はJR駅として山梨県内第3位、全国第6位の1044.2mで、標高886.7mの小淵沢駅から7.1㎞でおよそ160m上ったことになります。
そしてもう1駅進むと標高1158.2mが山梨県内第2位、全国第3位の甲斐大泉駅。周囲を森に囲まれた駅で、ペンションなどの宿泊施設が多いエリアに位置しています。
小海線でカーブが続く区間「オメガループ」
甲斐大泉駅を出発し、隣の清里駅に向かってさらに高度を上げていく列車は、途中左→右→右→左と大きなカーブを繰り返しながら進んでいきます。できるだけ勾配を緩くして途中の渓谷を渡る橋梁の高さと長さを抑えられるよう、地形に沿って線路を通したため大回りとなっているのです。
それを地図で見ると「Ω(オメガ)」の形を描いていることから、この区間は「オメガループ」と呼ばれており、山梨県内の小海線では「小淵沢の大カーブ」と並び、特徴ある線形の区間となっています。
【小海線の標高1000m越えの駅】リゾート地の玄関口として知られる清里駅
清里駅は、八ヶ岳連峰南麓のリゾート地として名高い清里高原の玄関口として知られ、山梨県の鉄道駅の中で最も高い場所、かつ最も北に位置する駅です。標高は1274.7mで、JR駅の標高ランキングでは隣の野辺山駅に71mの差をつけられ第2位となっていますが、1933(昭和8)年7月27日、小淵沢駅を起点とする「小海南線」の終点として開業したときは、国鉄で最も高い場所にある駅でした。
しかし、1935(昭和10)年11月29日、小諸駅を起点とする「小海北線」の終点だった信濃川上駅との間が線路で結ばれ、小淵沢駅~小諸駅間が全通し「小海線」となったのと同時に野辺山駅が開業したため、清里駅はわずか2年4カ月で「国鉄最高所の駅」の座を明け渡すことになりました。
ちなみに、JRの線路の最高地点は、野辺山駅よりさらに30mほど高い標高1375mで、清里駅~野辺山駅間の、小淵沢駅起点21.1㎞付近にありますが、そこは清里駅方面から県境を越えて300mほど進んだ地点であり、山梨県が惜しくも長野県に日本一のタイトルを譲った格好となっています。
小海線の清里駅はかつて「高原の原宿」と呼ばれたことも
1980年代後半から1990年代初頭にかけてのバブル経済期には、行楽シーズンになると若者たちが清里に大挙して訪れ、駅の周辺もカフェやブティック、タレントショップなどが軒を連ねて大いに賑わいました。
それから歳月が流れ、清里駅の周辺を包んでいた熱気はだいぶ冷めましたが、駅前に立って周囲を見渡すと、今も街並みに「高原の原宿」とも呼ばれた、当時の面影が残っています。
小海線で活躍する世界初のハイブリッド気動車
近年JR各社では、非電化区間を走る車両を、従来型のディーゼル車両から環境にやさしい次世代型の車両に切り替える動きが進んでいますが、その先駆けとなったのが、2007(平成19)年夏から小海線を走っている世界初の営業用ハイブリッド気動車、キハ E200形です。
電車と同じくモーターで走るこの車両には、発車時はリチウムイオン蓄電池から供給される電力(減速時に走行用モーターを発電機として利用し蓄電池に充電)を使用し、加速時は蓄電池の電力とディーゼルエンジン直結の発電機からの電力を合わせて使用する、「シリーズ方式」というハイブリッドシステムが採用されています。
キハE200形気動車は3両しか製造されなかったため、運用されるのは小海線のごく一部の列車に限られています。乗り心地を味わいたいのなら、時刻表にある注記「ハイブリッド車両で運転」のチェックをお忘れなく。
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Part.1 地図で読み解く山梨の大地
・山の都として栄えた甲府盆地はどのようにできたのか?
・富士五湖は富士山の溶岩でせき止められた2つの湖だった!?
・日本一の造形美をつくり出す昇仙峡は何でできている?
・3000年に“2度”の大噴火が生み出した青木ヶ原の樹海
・もうひとつの富士「黒富士」にある燕岩の正体
・富士山文化遺産の構成資産、山梨にある2つの「胎内めぐり」
・「池」だけど「八海」!神秘の風景・忍野八海
・日照時間日本一の秘密は地形にあり!?
・富士川の洪水を防いだ「信玄堤」と「万力林」
…などなど山梨のダイナミックな自然のポイントを解説。
Part.2 山梨を駆け抜ける鉄道網
・甲州市から山梨市にかけて、中央本線が北に大きく迂回するわけ
・高額運賃の私鉄が国有化の悲願を果たし、現在に至る身延線
・昭和モダンの香りを漂わせ、今も現役の山梨の駅舎たち
・ここは東京?ちょっと意外な丹波山村の公共交通事情
・甲府盆地を走り、「ボロ電」と呼ばれた山梨交通電車線
・実は2つの路線から成り立っている富士急行線
・約2年間だけ標高日本一の駅があった、小海線の山梨県内区間
・6つのスイッチバック駅に助けられ、甲斐路を辿った中央本線
・リニアモーターカーの実験線が山梨にできたわけ
・古くからの富士山吉田口登山道を継承する山梨県道701号
…などなど山梨ならではの鉄道事情を網羅。
Part.3 山梨で動いた歴史の瞬間
・古代 いにしえの八ヶ岳周辺は“星降る里”だった!?
・古代 甲斐銚子塚古墳が東日本最大級なワケ
・平安~中世 武田氏の先祖にあたる戦国エリート「甲斐源氏」
・中世(鎌倉) 日蓮聖人の波乱に満ちた生涯と身延山
・戦国時代 山梨の神!武田氏3代が鎮座した武田神社
・戦国時代 信玄が進み勝頼が広げた武田氏の最大領地は?
・江戸時代 徳川家康に対抗するために築城された甲府城
・江戸時代 幕府直轄地で発展した甲州街道と富士川舟運
・近現代 幕末の財界を牛耳った甲州商人が売ったもの
・近現代 明治40年の甲府の大水害からの復興
・近現代 空港のない山梨県にあった秘密の飛行場“ロタコ”
…などなど、激動の山梨の歴史に興味を惹きつける。
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