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雨宮敬次郎はどんな人物?我田引鉄を行ったとされる根拠とは?
社会基盤の分野を中心にさまざまな事業に参画していた雨宮敬次郎は、鉄道との関わりも深くなっていました。中央本線御茶ノ水駅~八王子駅間の前身である甲武(こうぶ)鉄道をはじめ、いくつかの鉄道会社の取締役や社長を務めたほか、1908(明治41)年に全国8つの軽便鉄道事業者を合併した鉄道会社、「大日本軌道」を設立しその経営にあたったことなどから、「鉄道王」の異名もとっていました。
この雨宮敬次郎が奥野田村牛奥(うしおく)、現在の甲州市塩山牛奥出身であったことから、彼が中央本線を生家のある方向にねじ曲げ、塩山駅をつくらせたと取り沙汰されることになったのです。中央本線の初鹿野(はじかの)駅(現在の甲斐大和駅)~甲府駅間の開業を3カ月後にひかえた1903(明治36)年3月、雨宮敬次郎は塩山駅の手前の線路に接していた自邸に、伊藤博文をはじめとする県内外の有力者を招いて鉄道開業を祝う宴を開いており、このとき鉄道当局は、雨宮邸のすぐ前に臨時駅を設置して祝宴の開催に便宜を図っています。この史実も、雨宮敬次郎による「我田引鉄」を裏付けるものとして捉えられているようです。
雨宮敬次郎の「我田引鉄」ではなく技術的な制約だった
ですが、現在では中央本線建設当時の状況を踏まえ、このルートが大回りとなったのは雨宮敬次郎の力のせいではなく、技術的な制約によるものだったと考えられています。
当初は笹子トンネルから甲府盆地へまっすぐ下りていくルートが検討されましたが、30‰(パーミル)を超える急勾配を上下することになるため、大量の盛土をするかアプト式鉄道にしなければならないことから、一直線のルートは断念されたようです。大規模な盛土を何カ所も築くことはほぼ不可能でしたし、アプト式鉄道も、すでに群馬・長野県境の碓氷(うすい)峠で採用されてはいましたが、普通の鉄道に比べ輸送力が劣るという弱点が指摘されていました。当時の技術水準では、鉄道の勾配は25‰程度が限界です。その範囲内に笹子トンネルと甲府駅との間の勾配を収めるには、線路を大回りで敷くほかなかったのです。
甲州市から山梨市にかけての中央本線ルート図
甲斐大和駅と山梨市駅の間は直線距離で約10㎞ですが、両駅間にはおよそ300mの標高差があります。そのため、一直線で線路を敷くと平均約30‰の急勾配区間となりますが、塩山駅を経由する大回りルートとしたことで、勾配が緩和されています。
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Part.1 地図で読み解く山梨の大地
・山の都として栄えた甲府盆地はどのようにできたのか?
・富士五湖は富士山の溶岩でせき止められた2つの湖だった!?
・日本一の造形美をつくり出す昇仙峡は何でできている?
・3000年に“2度”の大噴火が生み出した青木ヶ原の樹海
・もうひとつの富士「黒富士」にある燕岩の正体
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・「池」だけど「八海」!神秘の風景・忍野八海
・日照時間日本一の秘密は地形にあり!?
・富士川の洪水を防いだ「信玄堤」と「万力林」
…などなど山梨のダイナミックな自然のポイントを解説。
Part.2 山梨を駆け抜ける鉄道網
・甲州市から山梨市にかけて、中央本線が北に大きく迂回するわけ
・高額運賃の私鉄が国有化の悲願を果たし、現在に至る身延線
・昭和モダンの香りを漂わせ、今も現役の山梨の駅舎たち
・ここは東京?ちょっと意外な丹波山村の公共交通事情
・甲府盆地を走り、「ボロ電」と呼ばれた山梨交通電車線
・実は2つの路線から成り立っている富士急行線
・約2年間だけ標高日本一の駅があった、小海線の山梨県内区間
・6つのスイッチバック駅に助けられ、甲斐路を辿った中央本線
・リニアモーターカーの実験線が山梨にできたわけ
・古くからの富士山吉田口登山道を継承する山梨県道701号
…などなど山梨ならではの鉄道事情を網羅。
Part.3 山梨で動いた歴史の瞬間
・古代 いにしえの八ヶ岳周辺は“星降る里”だった!?
・古代 甲斐銚子塚古墳が東日本最大級なワケ
・平安~中世 武田氏の先祖にあたる戦国エリート「甲斐源氏」
・中世(鎌倉) 日蓮聖人の波乱に満ちた生涯と身延山
・戦国時代 山梨の神!武田氏3代が鎮座した武田神社
・戦国時代 信玄が進み勝頼が広げた武田氏の最大領地は?
・江戸時代 徳川家康に対抗するために築城された甲府城
・江戸時代 幕府直轄地で発展した甲州街道と富士川舟運
・近現代 幕末の財界を牛耳った甲州商人が売ったもの
・近現代 明治40年の甲府の大水害からの復興
・近現代 空港のない山梨県にあった秘密の飛行場“ロタコ”
…などなど、激動の山梨の歴史に興味を惹きつける。
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