やちむんの歴史の原点は朝鮮人陶工の朝鮮式技法
時代が下り1616年、琉球王府が薩摩から招いた朝鮮人陶工、一六、一官、三官が、湧田窯(わくたがま)で朝鮮式技法を教えました。それが現在まで受け継がれてきたやちむんの原点となります。
さらに、1682年には琉球王府が産業振興政策として知花、宝口、湧田にあった窯(かま)をひとつに統合。那覇の南にある牧志(まちし)村の壺屋(つぼや)にまとめて移転しました。今は那覇市街にある壺屋では、現在もやきものの町として多くのやちむん「壺屋焼」がつくられています。
壺屋の場所は立地条件が満たされていた
壺屋は首里城に近く管理しやすいこともありましたが、その地には安里川が流れ、窯の運用に不可欠な土と水、さらにさまざまな物資を運ぶのが容易でした。当時のやちむんの甕(かめ)や壺は、泡盛を入れたり海産物を入れたりする容器として使われ、そのまま目的地まで運ばれたといいます。その後、家庭で一般的に使う器、皿、酒器などもつくられるようになり、やちむんは幅広く使われるやきものとして発達していきました。
やちむんの歴史は昭和の民藝運動で再注目
明治時代、泡盛の輸出量が増えるのに合わせ、甕、壺の生産量も増加しましたが、いっぽうで廃藩置県により沖縄県となって以降、県外から安価なやきものが大量に流入し、いつしかやちむんの勢いは衰えて、長い低迷の時代を迎えます。
やちむんが息を吹き返すきっかけになったのは、1926(昭和元)年頃に活発化した「民藝運動」でした。日常生活のなかで使われるさまざまな道具に注目し、そこに美しさを見出そうという民藝運動は日本全国で展開され、沖縄にもその波が押し寄せます。そこでやちむんが再注目されるようになったのでした。
やちむんの長い歴史を受け継ぐ
その後、かつての勢いを取り戻したかに見えたやちむんでしたが、今度は戦禍に見舞われ、沖縄は焦土と化してしまいます。幸いにも壺屋周辺は被害が少なかったことで、戦後すぐに窯は再始動し、人々の暮らしに必要な器、皿などの日用品をつくりはじめました。
1970年代、窯から立ち昇る黒煙が公害だとして登り窯の使用が壺屋で禁じられると、新しい文化構想を進めていた沖縄中部の読谷村(よみたんそん)が登り窯を引き受け、多くの陶工たちもこの地に移り住みました。現在は、壺屋と読谷村、ふたつの「やちむんの聖地」には、国の内外から多くの観光客が訪れ、400年の歴史のなかで受け継がれてきた素朴で温もりのあるやちむんの美に魅入られています。
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Part.1 地図で読み解く沖縄
・造山運動によって形成された琉球列島/新しい地層と古い地層、南北で異なる沖縄本島の地質
・エメラルドグリーンの海は隆起してできたサンゴ礁のおかげ?
・グスクの石垣から地下ダムまで利用される琉球石灰岩
・貴重な自然の宝庫「やんばるの森」とは?
・マングローブの生態系が「生きものたちのゆりかご」と呼ばれるのはなぜ?
・県内唯一の活火山島である硫黄鳥島は硫黄の産地だった
・西表島で行われた炭鉱開発とは?…などなど沖縄の自然を解説。
Part.2 陸海空、沖縄に巡らされた交通網
・那覇空港と市街を結ぶ県内唯一の鉄道路線「ゆいレール」
・県民の足として、輸送手段としても活躍していた沖縄県鉄道とは?
・海軍の飛行場からスタートし、各地を結ぶ那覇空港
・明治初め、本州と那覇を結ぶ国内最長の定期航路が誕生!
・沖縄復興のシンボルといわれた730バスとは、どのようなバスだったのか?
・全ての道は首里城に通じる?首里城から那覇港、本島南部に通じる琉球石灰岩の道
…などなど沖縄の交通事情を解説。
Part.3 沖縄で動いた歴史の瞬間
・沖縄の古代史総論/約2000万年前に住んでいた港川人はどこからやってきたのか?
・沖縄本島を三分割して約100年も勢力争いが続いた三山時代とは?
・琉球から江戸まで片道2000㎞の長旅 琉球使節の江戸参府の全貌
・黒船が琉球にやってきた!浦賀上陸前に琉球を訪れたペリーの目的とは?
・ソテツ地獄を経て、国内で唯一戦場となった沖縄
・沖縄の日本復帰を記念して開催された沖縄海洋博覧会とは?
…などなど沖縄の歴史を徹底解説。
Part.4 沖縄で育まれた産業や文化
・元々は宮廷料理だった?沖縄の郷土料理・沖縄そば
・男子禁制の祈りの場、御嶽とはいったいどのような場所なのか?
・15世紀に伝わり戦火からも復活!沖縄を代表する酒・泡盛の奇跡
・薩摩から朝鮮人陶工がやってきたのが始まり?沖縄やちむんの魅力とは
・絣や紅型のほか多彩な染織物「染色文化の宝庫」と呼ばれる沖縄
…などなど沖縄の産業と文化を丁寧に解説。
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