琉球神話によれば、東の海のかなたにある理想郷ニライカナイから海を渡ってやって来た神アマミキヨが沖縄をつくったとされています。アマミキヨがそこにつくった聖地のうちの７つの聖地は「琉球開闢七御嶽」と呼ばれています。「安須森（あすむぃ）御嶽」「クボウ御嶽」「斎場（せーふぁ）御嶽」「薮薩（やぶさつ）御嶽」「アマチジ御嶽」「フボー御嶽」「首里真玉森（しゅいまだむい）御嶽」の７カ所です。

アマミキヨがつくったとされる琉球開闢七御嶽。斎場御嶽は2000（平成12）年に世界遺産に登録されました。沖縄の御嶽は、大自然に囲まれ、神秘的な雰囲気に包まれています。

数ある御嶽のなかでも琉球王国最高の聖地とされ、世界文化遺産にも登録された「斎場御嶽」が、どのような場所で、何が行われていたのかを紹介しましょう。

王府が直接管理をしていた斎場御嶽は、久高島とともにアマミキヨの霊地として国王自らが巡拝する習わしがありました。そして、斎場御嶽のなかには、イビと呼ばれる霊域が6カ所あり、そのうちの大庫理（ウフグーイ）・寄満（ユインチ）・三庫理（サングーイ）はいずれも首里城内にある建物や部屋と同じ名前であることから、両者の深いかかわりを示すものとされています。

この斎場御嶽で行われていた祭祀のひとつに、「御新下り（おあらおり）」があります。尚真王の時代に、神女の最高職として「聞得大君（きこえおおきみ）」が設けられますが、その就任の儀式が御新下りです。首里城から斎場御嶽に入った神女たちが真夜中に神歌を歌います。神島と呼ばれる久高島（くだかじま）から運ばれた砂が敷き詰められた深夜の斎場御嶽では、白装束の神女たちの歌が響いたといいます。こうした女性を中心とした信仰形態は、民間信仰から国の宗教政策に組み込まれたという流れがあります。民間信仰では、神女の役割を担う宗教職能者の女性をユタと呼び、生活集団における祭祀を取り行う重要な存在だったのです。

そもそも、御嶽のある場所には古代はムラ、集落があったと推測されています。聖域と呼ばれる場所で、かつては人々が暮らしていたのでした。自分たちの祖先たちが暮らしていた場所を神聖な場所として崇めることは、まさに祖先崇拝といえるでしょう。大自然への、そして祖先への畏怖と崇拝。独自の文化を育んできた沖縄のロマン溢れる魅力のひとつです。

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