目次
西表島の炭鉱開発の歴史①:国内有数の炭鉱になるまで
西表島の石炭は、18世紀末の八重山の古文書に「燃石(もえいし)」として記されています。近代における西表島の石炭採掘は、1885(明治18)年、三井物産が西表島の西にある内離島(うちぱなりじま)で試掘を行ったのが最初とされています。三井物産は島の北西部で炭鉱を経営しますが、マラリア感染などを理由に、数年で撤退を余儀なくされました。その後、新規企業が進出や撤退、吸収合併を繰り返し、西表炭鉱での採掘は、終戦の1945(昭和20)年まで続けられました。最盛期の1930年代後半には、約1400名の労働者が集まり、年間産出量12万~13万トンという国内有数の炭鉱になっていました。
西表島のおもな炭鉱位置
西表島のほとんどを占める八重山層という新生代新第三紀中新世の地層には石炭層が含まれていました。西表島・西部地区には、良質の石炭を産出するいくつもの炭鉱があり、内離島には厚さ2mに及ぶ石炭層がありました。
西表島の炭鉱開発の歴史②:環境改善を図るも太平洋戦争を経て廃墟に
しかし、西表炭鉱の労働環境は劣悪なものでした。各地から集められた炭鉱労働者たちは、劣悪な環境で長時間労働を強いられますが、離島であるため逃亡もできず、マラリアの蔓延などによって亡くなる者が多かったと伝えられています。
1935(昭和10)年、浦内川(うらうちがわ)支流の宇多良川(うたらがわ)付近で操業を開始した宇多良炭鉱では、衛生状態を改善するため炭鉱夫の住居にガラス窓を使い、上下水道や防蚊装置、大浴場、診療室などを整備しました。その結果、マラリアへの罹患(りかん)率は西表島の炭鉱のなかでもとくに低くなりました。しかし、太平洋戦争が始まると、1943(昭和18)年に炭鉱は休止状態に。さらに沖縄戦でアメリカ軍の空爆を受け、炭鉱施設は崩壊しました。終戦後にはアメリカ軍や民間企業が調査を行いますが、採算がとれる見込みが低く、その後、廃墟と化しました。
西表島の炭鉱のいま
2007(平成19)年、宇多良炭鉱は「近代化産業遺産群」に認定されています。西表炭鉱は、現在、西表島西部に残された近代史の遺産として人気の観光スポットになっています。
西表島の天然記念物イリオモテヤマネコは何でも食べる!
イリオモテヤマネコは、西表島に生息している国の特別天然記念物で、ユーラシア大陸の東部に生息しているベンガルヤマネコの亜種だと考えられています。西表島に野生のネコがいるということは、現地では古くから知られていましたが、1967(昭和42)年に猟師によって生きたまま捕獲され、国立科学博物館によって新種として発表されました。狭い西表島でも生き残れたのは、ネズミやウサギ、鳥だけでなく、爬虫類、両生類、甲殻類などさまざまな生き物を捕食することができたおかげです。推定生息数は100頭ほど(2008年調査結果)で、絶滅危惧種に指定されています。
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Part.1 地図で読み解く沖縄
・造山運動によって形成された琉球列島/新しい地層と古い地層、南北で異なる沖縄本島の地質
・エメラルドグリーンの海は隆起してできたサンゴ礁のおかげ?
・グスクの石垣から地下ダムまで利用される琉球石灰岩
・貴重な自然の宝庫「やんばるの森」とは?
・マングローブの生態系が「生きものたちのゆりかご」と呼ばれるのはなぜ?
・県内唯一の活火山島である硫黄鳥島は硫黄の産地だった
・西表島で行われた炭鉱開発とは?…などなど沖縄の自然を解説。
Part.2 陸海空、沖縄に巡らされた交通網
・那覇空港と市街を結ぶ県内唯一の鉄道路線「ゆいレール」
・県民の足として、輸送手段としても活躍していた沖縄県鉄道とは?
・海軍の飛行場からスタートし、各地を結ぶ那覇空港
・明治初め、本州と那覇を結ぶ国内最長の定期航路が誕生!
・沖縄復興のシンボルといわれた730バスとは、どのようなバスだったのか?
・全ての道は首里城に通じる?首里城から那覇港、本島南部に通じる琉球石灰岩の道
…などなど沖縄の交通事情を解説。
Part.3 沖縄で動いた歴史の瞬間
・沖縄の古代史総論/約2000万年前に住んでいた港川人はどこからやってきたのか?
・沖縄本島を三分割して約100年も勢力争いが続いた三山時代とは?
・琉球から江戸まで片道2000㎞の長旅 琉球使節の江戸参府の全貌
・黒船が琉球にやってきた!浦賀上陸前に琉球を訪れたペリーの目的とは?
・ソテツ地獄を経て、国内で唯一戦場となった沖縄
・沖縄の日本復帰を記念して開催された沖縄海洋博覧会とは?
…などなど沖縄の歴史を徹底解説。
Part.4 沖縄で育まれた産業や文化
・元々は宮廷料理だった?沖縄の郷土料理・沖縄そば
・男子禁制の祈りの場、御嶽とはいったいどのような場所なのか?
・15世紀に伝わり戦火からも復活!沖縄を代表する酒・泡盛の奇跡
・薩摩から朝鮮人陶工がやってきたのが始まり?沖縄やちむんの魅力とは
・絣や紅型のほか多彩な染織物「染色文化の宝庫」と呼ばれる沖縄
…などなど沖縄の産業と文化を丁寧に解説。
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