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琉球使節団は幕府の拍付け

道中、尚寧の乗った輿こしの屋根には金の鳳凰(ほうおう)が飾られていたといいます。駿府では家康に謁見しますが、このとき家康は直衣(のうし)(公家の平服)を着用し、大広間の上座で尚寧を出迎えます。あくまで「異国の王」としてもてなしたのです。幕府の権威を高めるため、異国を支配していることを周囲に誇示したわけです。なお、尚寧は駿府のあとには江戸で2代将軍・徳川秀忠にも謁見しています。

琉球使節団の成立と江戸上り

琉球は実質的には薩摩藩に支配されていましたが、形式的には独立国家であり続けました。そのため江戸時代に幕府が鎖国体制を敷いたあとも、琉球は「通信の国」として、中国(明(みん)、清(しん))との交易の窓口となっていきます。

琉球使節団は幕府への服従を示すためのもの

独立国である琉球に対しては、徳川幕府は服属儀礼として使節を派遣することを求めました。徳川将軍が代替わりした際には奉祝のための「慶賀使(けいがし)」を派遣し、琉球国王が代替わりした際には新王の就任を認めてもらい、その返礼としての「謝恩使(しゃおんし)」を派遣することになりました。この使節派遣を「江戸上り」といいます

琉球使節団の江戸上りは参勤交代は別物

「江戸上り」の開始については諸説ありますが、一般的には1634(寛永11)年から始まったとされ、1850(嘉永3)年まで江戸時代を通じて合計18回実施されました。幕藩体制下での参勤交代は藩主自らが江戸にいく必要がありましたが、「江戸上り」では琉球国王が江戸にいく義務はなく、琉球国王の国書を携えた正使(せいし)が派遣されました。

琉球使節団のなが~い旅路

琉球使節団は200名規模で構成され、まず那覇港から薩摩の山川港(鹿児島県指宿(いぶすき)市)に向かいます。琉球館(鹿児島県鹿児島市)に滞在したのち、薩摩藩の参勤交代に合わせて薩摩を出発し、海路で天草(あまくさ)、長崎、平戸(ひらど)を経て下関に入ります。その後は船で瀬戸内海を渡って大坂に上陸し、京を経て東海道で江戸へと向かいます。片道約2000km、往復およそ1年がかりの旅です。

1832(天保3)年6月13日に那覇を出発し、薩摩を経て江戸に着いたのが同年11月16日。江戸で諸行事を終えて、首里に戻ってきたのが翌1833(天保4)年4月8日。1年に及ぶ長旅です。

琉球使節団との文化交流により大衆文化が花開く

江戸に到着した使節団は、徳川将軍と会見し、国書と献上品を渡し、楽童子(がくどうじ)が御座楽(うざがく)(室内用の琉球音楽)を演奏したり琉球舞踊を披露したりしました。そして返礼として使節団には銀や綿、服などが与えられました。

「異国風(=中国風)」の装いで行進しながら路次楽(るじがく:野外での琉球音楽)を演奏した琉球使節はいく先々で歓迎され、道中の村々の郷土芸能にも影響を及ぼしました。また、こうした文化交流によって琉球には和歌や茶道といった日本文化がもたらされ、琉球独自の大衆文化を形成する一助となっていったのです。

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Part.1 地図で読み解く沖縄

・造山運動によって形成された琉球列島/新しい地層と古い地層、南北で異なる沖縄本島の地質
・エメラルドグリーンの海は隆起してできたサンゴ礁のおかげ?
・グスクの石垣から地下ダムまで利用される琉球石灰岩
・貴重な自然の宝庫「やんばるの森」とは?
・マングローブの生態系が「生きものたちのゆりかご」と呼ばれるのはなぜ?
・県内唯一の活火山島である硫黄鳥島は硫黄の産地だった
・西表島で行われた炭鉱開発とは?…などなど沖縄の自然を解説。

Part.2 陸海空、沖縄に巡らされた交通網

・那覇空港と市街を結ぶ県内唯一の鉄道路線「ゆいレール」
・県民の足として、輸送手段としても活躍していた沖縄県鉄道とは?
・海軍の飛行場からスタートし、各地を結ぶ那覇空港
・明治初め、本州と那覇を結ぶ国内最長の定期航路が誕生!
・沖縄復興のシンボルといわれた730バスとは、どのようなバスだったのか?
・全ての道は首里城に通じる?首里城から那覇港、本島南部に通じる琉球石灰岩の道

…などなど沖縄の交通事情を解説。

Part.3 沖縄で動いた歴史の瞬間

・沖縄の古代史総論/約2000万年前に住んでいた港川人はどこからやってきたのか?
・沖縄本島を三分割して約100年も勢力争いが続いた三山時代とは?
・琉球から江戸まで片道2000㎞の長旅 琉球使節の江戸参府の全貌
・黒船が琉球にやってきた!浦賀上陸前に琉球を訪れたペリーの目的とは?
・ソテツ地獄を経て、国内で唯一戦場となった沖縄
・沖縄の日本復帰を記念して開催された沖縄海洋博覧会とは?

…などなど沖縄の歴史を徹底解説。

Part.4 沖縄で育まれた産業や文化

・元々は宮廷料理だった?沖縄の郷土料理・沖縄そば
・男子禁制の祈りの場、御嶽とはいったいどのような場所なのか?
・15世紀に伝わり戦火からも復活!沖縄を代表する酒・泡盛の奇跡
・薩摩から朝鮮人陶工がやってきたのが始まり?沖縄やちむんの魅力とは
・絣や紅型のほか多彩な染織物「染色文化の宝庫」と呼ばれる沖縄

…などなど沖縄の産業と文化を丁寧に解説。

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