甲州街道を往来した人々
参勤交代で甲州街道を利用した大名は、信州諏訪の高島藩と、伊那の高遠藩、飯田藩の3藩だけでしたが、他の藩が臨時でこの街道を通行したこともありました。
1724(享保9)年に甲州が幕府直轄地となってからは、老中の下に属し、甲府城の警固に当たった甲府勤番の武士もこの道を往来するようになりました。
また、200年以上続いたという将軍家御用の茶を運ぶ「お茶壷道中(ちゃつぼどうちゅう)」も、この街道を利用して行われていました。
これは将軍通行に匹敵するほど格式の高い行事とされ、道中で行き合った場合、それが参勤交代の大名や御三家クラスの重鎮であったとしても、駕籠(かご)から降りて道を譲らなければならないほどでした。
お茶壷道中と「ずいずいずっころばし」
お茶壷道中は、街道沿いの村人たちにも負担を強いるものでした。前もって道の修理が命ぜられ、田畑の仕事や煮炊きの煙、葬式の行列までも禁止。凧揚げや子どもたちの家の出入りさえとがめられたといいます。
「ちゃつぼにおわれて(お茶壷道中が近づいたら)、とっぴんしゃん(戸をぴしゃんと閉めて閉じこもり)、ぬけたらどんどこしょ(通過したらやれやれと息をつく)」
今に残るわらべ歌「ずいずいずっころばし」は、このように村人たちから恐れられたお茶壷道中に、幾分の風刺をこめて歌われたものだったのです。
富士川舟運の開通と発展
甲州街道と同じく江戸初期に整備されたのが富士川舟運です。甲斐から江戸への流通ルートとしては、当時は笹子峠を山越えして行くか、あるいは駿河の岩淵(現在の静岡県富士市)まで人力か馬の背に荷駄をつけて運んで行くしかありませんでした。
しかし、徳川家康から富士川開削の命を受けた京都の豪商・角倉了以(すみのくらりょうい)らの手により、鰍沢(かじさわ)から岩淵までの水路が開通しました。ちょうど信州往還と駿州往還の交わる地点に位置していた鰍沢は、この開削によって富士川舟運の要衝地となり、鰍沢河岸は流通の拠点として大きく発展していきました。
富士川舟運と駿州往還
駿州往還は甲斐の国と駿河の国を結ぶ街道のひとつ。富士川舟運が開始される前は、山の中を縫うように進まなければならず、難所も多いところでした
甲州街道と富士川舟運のその後
当時の主な積み荷は「下げ米、上げ塩」と呼ばれ、下り荷は甲州や信州から幕府への年貢米、上り荷は塩などの海産物が中心でした。
その後、富士川舟運は繁栄を極めましたが、徐々に物資の輸送方法が鉄道へと移り、1928(昭和3)年、300年余りのその歴史に幕を閉じました。
江戸時代後半には庶民の旅が流行し、多くの旅人が甲州街道と富士川舟運の二筋を通って、身延詣や富士登山などに向かったという記録が残っており、学者や文化人なども日記や紀行文を残しています。その道筋は現在の交通網にも名残をとどめています。
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・3000年に“2度”の大噴火が生み出した青木ヶ原の樹海
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Part.2 山梨を駆け抜ける鉄道網
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・高額運賃の私鉄が国有化の悲願を果たし、現在に至る身延線
・昭和モダンの香りを漂わせ、今も現役の山梨の駅舎たち
・ここは東京?ちょっと意外な丹波山村の公共交通事情
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・実は2つの路線から成り立っている富士急行線
・約2年間だけ標高日本一の駅があった、小海線の山梨県内区間
・6つのスイッチバック駅に助けられ、甲斐路を辿った中央本線
・リニアモーターカーの実験線が山梨にできたわけ
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・古代 いにしえの八ヶ岳周辺は“星降る里”だった!?
・古代 甲斐銚子塚古墳が東日本最大級なワケ
・平安~中世 武田氏の先祖にあたる戦国エリート「甲斐源氏」
・中世(鎌倉) 日蓮聖人の波乱に満ちた生涯と身延山
・戦国時代 山梨の神!武田氏3代が鎮座した武田神社
・戦国時代 信玄が進み勝頼が広げた武田氏の最大領地は?
・江戸時代 徳川家康に対抗するために築城された甲府城
・江戸時代 幕府直轄地で発展した甲州街道と富士川舟運
・近現代 幕末の財界を牛耳った甲州商人が売ったもの
・近現代 明治40年の甲府の大水害からの復興
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