目次
秋田がロケット打ち上げに選ばれた背景
次の段階としてロケットを上空へ打ち上げることが計画されましたが、広い砂漠などを持たない日本では、海岸からロケットを打ち上げて海に落とすしかなかったのです。
ロケットを打ち上げるには船や飛行機の航路を避け、漁業への影響が少ない場所でなければなりません。しかし当時、太平洋側はアメリカが実質的に支配していたため、最終的に日本海側の秋田県由利郡岩城町(現・由利本荘市)の勝手川(かつてがわ)河口南側の道川海岸が選ばれました。
道川海岸は十分な広さがあり、実験で急に必要になったものを調達する町工場があることなどが評価されたのでした。
「秋田ロケット実験場」は日本で最初に建設された射場
こうして建設されたのが日本で最初のロケット射場「秋田ロケット実験場」です。
1955(昭和30)年8月から道川海岸では、ペンシル300、ベビーロケット、Κカッパロケットなどの打ち上げが行われました。
ロケットの進化と事故
しかし1960(昭和35)年になるとΚ-8型ロケットの高度が200㎞に達するようになり、このまま高度が上がると、ロケットが日本海を越えて大陸に落下する可能性が出てきました。
そこで道川海岸にかわるロケット発射場候補地の調査が行われ、同年10月、鹿児島県内之浦に新たな発射場が建設されることが決まりました。
そんな折、1962(昭和37)年5月24日、道川海岸から打ち上げられたΚ-8型ロケット10号機が打上げ直後に落下、爆発するという事故が起こりました。
ロケットの破片の一部は、海岸から数百m離れた民家まで飛び散って火の手があがりました。さいわいケガ人は出ませんでしたが、調査の結果、道川の実験場では危険防止上、多額の経費が必要になることがわかったのです。
こうして道川海岸で予定されていたロケット発射は中止され、ロケット発射は、建設が始まっていた内之浦宇宙空間観測所に移行することになりました。
秋田のロケット実験の新施設「能代ロケット実験場」
いっぽう、秋田県は東京大学に対して、道川海岸にかわる施設を県内に設けることを要望。これを受けて1962(昭和37)年10月、能代(のしろ)市にロケットモータ(固体燃料ロケットのエンジン)の地上燃焼実験施設「能代ロケット実験場」が開設されました。
能代ロケット実験場では、液体酸素・液体水素ロケットエンジンの研究開発、科学衛星や「はやぶさ」などの探査機を打ち上げたΜミューロケットの固体ロケットモータの地上燃焼試験などが行われました。
現在は、Μロケットの後継機イプシロンロケットの技術要素試験や、液体水素を燃料とするエアーターボラムジェットエンジンの燃焼試験、小型の液体燃料ロケットエンジンを搭載した再使用ロケット実験機の離着陸試験など、さまざまな野外実験が行われています。
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