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沖縄の本土復帰にあたり準備された730バス

ここで大きな問題となったのは、左ハンドルのバスの存在でした。左ハンドルの乗用車は、左側通行でも何とか運転はできます。しかしバスは別です。左ハンドルのバスの乗降口は、右側にしかないからです。

沖縄島には左ハンドルのバス(通称「729車」)が当時1207台も在籍しており、全車を短時間で右ハンドル、左側乗降口に改造することは不可能でした。そこで、右ハンドルの新車を944台投入し、164台を右ハンドル、左側乗降口に改造して対処したのでした。この際に大量に導入された右ハンドルのバスのことを「730車」または「730バス」と通称しています。

新車のバスは事業者によりメーカーが異なり、琉球バスが日産ディーゼル工業および日野自動車、沖縄バスが三菱自動車工業、那覇交通(現・那覇バス)がいすゞ自動車、東陽バスが日野自動車で、米軍基地だったキャンプ・ブーン跡地に集結させました。

沖縄の本土復帰前日の深夜に行われた交通方法変更実施

そして7月30日を迎えます。前日の29日午後10時より30日午前6時まで、緊急自動車を除くすべての自動車の通行が禁止され、道路設備の変更がいっせいに行われました。事前に準備されていた標識や路面の車線表示などのカバーが外され、新標識に切り替えられました。バスは29日の運行終了と同時に729車から運賃・両替金などを抜き取り、キャンプ・ブーン跡地に車両を保管。代わって、730バスをパトカーの先導で各営業所へ回送させました。車庫では路線別、ダイヤ別に車両が並べられ、両替金の積み込みなどが行われました。変更時刻の6時になると、バスは無事に各バスターミナルから次々に出発していきました。それは沖縄の本土復帰の象徴的な光景でもありました。

沖縄本土復帰の生き証人730バスの現在

その後、歴史の生き証人でもある730バスは、経年とともに次々と引退していきました。現在は、沖縄バスと東陽バスにそれぞれ1台があるのみで、歴史的記念物の730バスとして動態保存されており、日曜や祝日などに運行しています。
最後まで残った2台は、沖縄バスが三菱ふそうMP117K 、東陽バスが日野RE101で、どちらも昭和のバスを代表するモノコック構造(フレームとボディーが一体となり強度を増している)のバスで、丸みを帯びたレトロな車体です。
今後の去就は未定ですが、沖縄の歴史を語るうえでなくてはならない730バスが末永く保存されることを願うばかりです。

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沖縄県の地形や地質、歴史、文化、産業など多彩な特徴と魅力を、地図を読み解きながら紹介するマップエンターテインメント。沖縄の知っているようで知られていない意外な素顔に迫ります。地図を片手に、思わず行って確かめてみたくなる情報を満載!

Part.1 地図で読み解く沖縄

・造山運動によって形成された琉球列島/新しい地層と古い地層、南北で異なる沖縄本島の地質
・エメラルドグリーンの海は隆起してできたサンゴ礁のおかげ?
・グスクの石垣から地下ダムまで利用される琉球石灰岩
・貴重な自然の宝庫「やんばるの森」とは?
・マングローブの生態系が「生きものたちのゆりかご」と呼ばれるのはなぜ?
・県内唯一の活火山島である硫黄鳥島は硫黄の産地だった
・西表島で行われた炭鉱開発とは?…などなど沖縄の自然を解説。

Part.2 陸海空、沖縄に巡らされた交通網

・那覇空港と市街を結ぶ県内唯一の鉄道路線「ゆいレール」
・県民の足として、輸送手段としても活躍していた沖縄県鉄道とは?
・海軍の飛行場からスタートし、各地を結ぶ那覇空港
・明治初め、本州と那覇を結ぶ国内最長の定期航路が誕生!
・沖縄復興のシンボルといわれた730バスとは、どのようなバスだったのか?
・全ての道は首里城に通じる?首里城から那覇港、本島南部に通じる琉球石灰岩の道

…などなど沖縄の交通事情を解説。

Part.3 沖縄で動いた歴史の瞬間

・沖縄の古代史総論/約2000万年前に住んでいた港川人はどこからやってきたのか?
・沖縄本島を三分割して約100年も勢力争いが続いた三山時代とは?
・琉球から江戸まで片道2000㎞の長旅 琉球使節の江戸参府の全貌
・黒船が琉球にやってきた!浦賀上陸前に琉球を訪れたペリーの目的とは?
・ソテツ地獄を経て、国内で唯一戦場となった沖縄
・沖縄の日本復帰を記念して開催された沖縄海洋博覧会とは?

…などなど沖縄の歴史を徹底解説。

Part.4 沖縄で育まれた産業や文化

・元々は宮廷料理だった?沖縄の郷土料理・沖縄そば
・男子禁制の祈りの場、御嶽とはいったいどのような場所なのか?
・15世紀に伝わり戦火からも復活!沖縄を代表する酒・泡盛の奇跡
・薩摩から朝鮮人陶工がやってきたのが始まり?沖縄やちむんの魅力とは
・絣や紅型のほか多彩な染織物「染色文化の宝庫」と呼ばれる沖縄

…などなど沖縄の産業と文化を丁寧に解説。

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