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小坂鉄道開業の経緯

小坂鉱山からの輸送は当初、馬車に頼っていましたが、のちに小坂と奥羽本線白沢(しらさわ)駅を結ぶ架空索道(かくうさくどう)が建設されました。

しかし、増加する出荷貨物量に対応しきれず、鉄道敷設が決定。大館〜茂内間および茂内〜二ッ屋(のちの長木沢)間の官有森林鉄道を譲り受けて改修、茂内(しげない)〜小坂間を新設して、1908(明治41)年9月に軌間762㎜の小坂鉱山専用鉄道が運行を開始しました。

翌年1月には小坂鉄道が設立され地方鉄道となり、旅客営業も開始します。鉱山からの製品や鉱石のほか木材も多く運ばれ、長木沢の天然杉は全国へ輸送されました。

小坂鉄道の各線の変遷

大館に近い花岡鉱山では精錬の一部を小坂で行うことになり、花岡〜小坂間の花岡鉱山専用鉄道が敷設されます。1916(大正5)年1月、花岡〜小坂間で鉱石輸送が始まり、のちに小坂鉄道に譲渡されて花岡線となりました。

いっぽう、長木沢支線は森林鉄道の面影が強く木材輸送を主体に運行されていましたが、旅客輸送を止め、1951(昭和26)年4月、早々に廃止となりました。

小坂鉄道の小坂線と花岡線の最盛期

小坂、花岡線は増加する鉱石輸送に対応するのが急務で、一部区間の電化が行われ、1962(昭和37)年には全線の軌間が1067㎜に改軌。同時にディーゼル化も行われ、輸送力の増強が図られました。旅客車にはスマートな気動車キハ2100形が新製され、長らく活躍します。

この間、1957(昭和32)年12月に、小坂鉄道は同和鉱業に吸収合併され小坂鉄道事業所となりました。その後、貨物営業は昭和40年代中頃に最盛期を迎えますが、鉱石輸送は次第にトラックへと移り、貨物は精錬過程での副産物である濃硫酸の輸送に切り替えられました

小坂鉄道の花岡線と小坂線の廃止

その後、花岡線は花岡鉱山の閉山を受け、1983(昭和58)年に貨物営業を廃止。その1年半後には旅客営業も終了し廃止となりました。

小坂線は1989(平成元)年、同和鉱業から小坂製錬が分離され同社の小坂線となりましたが、1994(平成6)年10月には旅客営業を廃止。2008(平成20)年3月、新型炉の導入により、旧型炉での濃硫酸製造を終えたことから貨物輸送も廃止され、翌年4月に全線廃止。1世紀におよぶ長い歴史の幕を閉じました。

小坂鉄道の廃線後の姿

線路跡は廃線後も残され、レールバイクを走行するイベントも開催されています。

終点の小坂駅は「小坂レールパーク」として駅舎や鉄道施設、蒸気機関車、ディーゼル機関車、客車などの数多くの車両が保存されたテーマパークに変身しました。なかでも寝台特急の車両を使用した「ブルートレインあけぼの」は宿泊ができる列車ホテルで、1日2回、構内を実際に走行する動態保存が行われ、全国から注目されています。

小坂鉄道レールパーク

住所
秋田県鹿角郡小坂町小坂鉱山古川20-9
交通
JR花輪線十和田南駅から秋北バス小坂行きで20分、小坂小学校前下車すぐ
料金
入場料=大人600円小人300円、幼児無料/観光トロッコ=大人300円、小人150円/レールバイク=大人500円、小人250円/小坂鉄道クリアファイル=200円/駅名ストラップ=500円/

廃線・廃線跡を地図から詳しく知るなら『レールウェイマップル』

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1945年(昭和20年)の終戦以降に廃止となった鉄道路線を地図上に表示。かつての路線網の充実ぶりに驚かされます。各廃線にも解説コメントを添えるのはもちろんのこと、歴史的価値の高い建造物や橋梁、隧道(トンネル)などの遺構群のプロットにも注力。日本の発展とともに歩んだ鉄道の歴史を、地図を辿りながら読み解きます。

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Part.2 秋田を駆ける充実の交通網

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・一部レール幅を変えて新幹線もいく!福島~青森を結ぶ幹線・奥羽本線
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・小坂鉱山の鉱石輸送のため開業 旅客輸送も担った幻の小坂鉄道/昭和40年代に消えたローカル私鉄 羽後交通の雄勝線・横荘線とは?

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・秋田の近世史総論
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・近現代史総論/奥羽越列藩同盟を離脱し新政府側へ 秋田藩の戊辰戦争と戦後のゆくえ
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Part.4 秋田で育まれた産業や文化

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