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【十和田湖の歴史】十和田火山の埋没によって原型が誕生
約20万年前に始まった十和田火山の火山活動は、約4万3000〜約1万3000年前の間に大規模な噴火が少なくとも6回あり、そのうちの3回は高温の火山ガスと玄武岩(げんぶがん)質安山岩(あんざんがん)溶岩を流出するとともに大規模な火砕流(かさいりゅう)が発生したことがわかっています。このときに流出した火砕流堆積物は、十和田湖から100m以上離れた場所まで到達しています。
このような噴火によって十和田火山の中心部が陥没し始め、約1万5000年前には最大径約11㎞の第一カルデラができました。ここに雨水などが溜まり、現在の十和田湖の原形となる湖が誕生したのです。
十和田火山の度重なる噴火
その後、十和田火山は約2000年間噴火が続き、現在の中湖があるあたりに、円錐状の小型の成層火山、五色岩(ごしきいわ)火山ができました。この火山も何度も噴火を繰り返し、そのたびに火口が深くえぐられていきました。
約8600年前の噴火の際に噴出した南部軽石は十和田湖の南東地域で見つかっています。
【十和田湖の歴史】約6000年前の噴火で中湖が誕生
そして、約6000年前の噴火では、五色岩火山の北側が崩れ、湖水が火口に流入して、マグマと接触。その結果、大規模な水蒸気爆発が発生しました。この時に噴出した中掫(ちゅうせり)軽石は、東北地方のほとんど全域で見つかっています。この水蒸気爆発では、第一カルデラの中にもうひとつ、カルデラができました。これが中湖です。
湖底の深さ約70〜100mと比較的平坦な十和田湖のなかで、この中湖がある場所は深さ約326.8mもあり、そのときの噴火の激しさを物語っています。中湖の直径は約3.00〜3.45㎞あり、二重カルデラがある湖としては、十和田湖は世界最大の規模を誇ります。
【十和田湖の歴史】現在も噴火の可能性がある火山
さらに、中湖は10世紀前半には、火山灰や軽石・スコリアなどの火砕物が東北地方全日本全域に降下し大きな被害をもたらしたほか、噴火によって発生した火砕流が泥流となって米代川(よねしろがわ)を下り、毛馬内(けまない)から大館(おおだて)、鷹巣(たかのす)で多くの集落が埋没させるという災害をもたらしたという記録も残っています。
このように十和田湖は、長い休止期間をおいて、大規模な噴火を繰り返す火山であることから、現在も監視が続けられています。
火山灰から生まれた美しい青色の「十和田石」
十和田石とは、秋田県大館市比内町(ひないまち)で産出される緑色凝灰岩(ぎょうかいがん)(グリーンタフ)の商品名で、約1000万年前に比較的浅い海底で噴火した際の火山灰が固まってできた岩石です。
緑色凝灰岩は、北海道のオホーツク海側から北海道の西南部、東北から西日本の日本海側に広く分布していますが、ここで産出されるものは、青白い色の地に青緑色の地紋が入っているのが特徴。保温性や保水性が高いことから、温泉や浴室の床石や内装壁材などの建材として使用されています。
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