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越中おわら節の魅力は気品と優雅さ

越中おわら節は、富山市八尾地域で歌い継がれてきました。その起源は諸説ありますが、始まりは江戸時代にさかのぼるといわれ、長い年月をかけて磨き上げられ、さまざまな変化が加わりながら今日の形に至っています。伴奏に胡弓が使われるのは全国の民謡のなかでも珍しく、旋律には哀調が漂います。そこには気品と優雅が混じっており、人々の心に筆舌に尽くしがたい情緒を呼び起こします。

越中おわら節の「おわら」とは?

おわらという言葉の由来も定かではありません。遊芸の達人たちが滑稽な恰好で歌を歌いながら町を練り歩き、歌詞の中に「おわらひ」という語を差し挟んで歌ったという説や、藁の束が大きくなるようにという万年豊作を願った「大おお藁わら節」から転じたという説、八尾近郊の小原村出身の娘が得意の美声で唄った糸繰り歌を由来とする「小原村節」などがあります。いずれにせよ、八尾で生まれ育った者におわらを踊れない者はいないというほど地区に根付いており、各町ではそれぞれに温習会を開き、1年を通じて練習に励んでいます。

11の町内で町流し・輪踊りがおこなわれます。

越中おわら節が有名になった背景

これほど有名になった背景としては、まずレコードの普及があります。おわら節は大正11(1922)年に初めてレコードに吹き込まれ、民謡大会でも知られるようになりました。その後、唄い手の名手といわれた江尻豊治(えじりとよじ)によって上の句と下の句を一息で歌い切る歌唱が確立して現在の節回しが完成。息の長さを必要とするだけでなく、キーも高いことから、おわら節は難曲といわれています。

越中おわら節の「おわら風の盆」

踊り子は編み笠をかぶるため、顔は見えそうで見えません。かつての踊り子は気恥ずかしさから手ぬぐいをかぶっていたとされ、それが編み笠へと変化したようです。目もとが見えない分、時折覗く口元の印象が強く残りますが、その口元すらも無表情で、踊り子は声を発することもありません。だからこそ、見る者は美しい音色と踊りに集中でき、踊り子は表情を見られることなく大胆に踊りに没頭できます。昔はこの行事が若者の社交場や婿選び・嫁選びの場でもあったといわれ、編み笠の下に驚くような美女や美男を発見して色めき立つ人々も少なくなかったようです。

「おわら風の盆」の魅力はギャップと境地への憧れ

もし夏祭りや盆踊りなどの賑やかなイメージで風の盆を見に来た人がいたならば、そのギャップに衝撃を受けるはずです。富山県民ほど「よさが分からない」と言いますが、この独特の音と踊りを知らない富山県外の人々にとっては唯一無二の体験となります。なかには、「八尾で生まれ育った人が唄い踊るからいいのだ」という人もおり、見様見真似では辿り着けない境地への憧れがあるようです。

越中おわら節の「風の盆」とは?

ところでなぜ「風の盆」なのでしょうか。この行事の始まりは、町の祝い事のたびに、町衆が3日3晩唄い踊り明かしたことによります。それが弥生初めの頃だったといわれていますが、いつからか陰暦7月の盂蘭盆(うらぼん)になり、さらに現在の開催日である9月1日からの3日間に変わりました。立春から数えて210日目にあたるため、二百十日(にひゃくとおか)として暦に記載され、台風襲来の時期といわれています。そのため、風を鎮めて五穀豊穣を祈る行事として「風の盆」と名が付きました

本祭はとにかく混むため、じっくり見たい人は8月20~30日にかけておこなわれる前夜祭がおすすめです。

おわら風の盆を観に行くならこちらの記事へ
>>【八尾】おわら風の盆へ行こう!楽しみ方をチェック!

おわら風の盆

住所
富山県富山市八尾町町内各所
交通
JR高山本線越中八尾駅から徒歩40分(八尾小学校グラウンド演舞場)
料金
演舞場入場料(要問合せ)=2100円(自由席)、3600円(指定席)/

ユネスコ無形文化遺産のたてもん祭り

おわら風の盆は五穀豊穣を祈る行事ですが、魚津の「たてもん祭り」は豊漁と航海安全を祈る行事です。江戸時代中期に始まったといわれ、2016年にはユネスコ無形文化遺産に登録されました。

たてもんとは、車輪のないソリのような台に高さ約15mの柱を立て、70~90個の提灯やぼんぼりで三角形の形をつくるように飾り付けたもの。これは神様への供え物を三方に山と積んで奉納していた形、あるいは全体が帆をあげた漁船を象ったものとされています。毎年8月第1金・土曜日の夜、諏訪神社において7基のたてもんが何十人もの男たちによって威勢よく曳き回される光景は、迫力と躍動感に満ちています。ユネスコ無形文化遺産の登録を機に、魚津市では地元の木材でたてもんをつくることを目指し、将来の担い手となる子どもたちと共に、スギ・ヒノキ・ケヤキの植樹をおこなっています。

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Part.1 地図で読み解く富山の大地

・立山連峰との高低差4000m!「きときと」ぞろいの富山湾
・黒部ダムが大電源を生み出すまで
・崩壊を続ける立山カルデラ
・極東の氷河の南限は立山! 国内初の氷河認定とライチョウ
・神秘の光景! 魚津の蜃気楼と雨晴海岸の気嵐
・2000年前に形成された魚津埋没林
・富山の水がおいしいヒミツ
・立山の地下には「何か」がある! 活断層はあるのに地震が少ない理由
・富山湾のホタルイカはなぜ有名?

…など

Part.2 富山を駆ける充実の交通網

・北陸新幹線開業による光と影
・河川敷にある富山きときと空港
・SDGs未来都市に選定 ライトレールが象徴するまちづくり
・伏木港は神戸港に憧れた男の夢
・立山の観光ルートは1つじゃない? 一般開放が待ち遠しい黒部ルート
・マッターホルンの麓町から着想 低速電気バスEMUと宇奈月温泉
・鉄オタ集結地! 富山県は公共交通の宝庫
・V字峡谷を走るトロッコ電車

…など

Part.3 富山の歴史を深読み!

・江戸時代は鮎だった! 駅販売で広がったます寿し
・富山県成立までの複雑な歴史/越中の英雄・佐々成政の人物像
・焼け野原と化した富山大空襲/富山の遺跡&古墳は個性派ぞろい
・放生津に存在した亡命政権
・越中の伊能忠敬 射水出身の測量家・石黒信由
・越中の黄金郷 加賀藩極秘の「越中の七かね山」
・北陸近代医療の父・黒川良安
・世界遺産は加賀藩の軍事工場 五箇山でおこなわれた塩硝づくり

…など

Part.4 富山で育まれた文化や産業

・「越中おわら節」はなぜ有名?
・財政難を立て直した富山の売薬
・布教のためのテキストだった 曼荼羅から読み解く立山信仰
・秀吉も称えた伝説の刀工・郷義弘
・売薬商人は危ない橋を渡っていた? 薬の密貿易が生んだ昆布文化
・有名な創業者も多く輩出 富山県民は倹約家で働き者
・ジャポニズムの立役者・林忠正
・アニメの聖地が多い富山県
・瑞泉寺再建から始まった井波彫刻

…など

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