三陸鉄道リアス線の前身「三陸縦貫鉄道」とは
三陸沿岸を縦貫する鉄道は大正期から計画されていましたが、着工までは約40年の歳月が流れました。
三陸沿岸の鉄道は岩手県内では盛〜釜石間、宮古〜久慈間を除き大船渡線(おおふなとせん)、山田線が戦前に開通。残りの2路線は盛線、久慈線として昭和30年代に建設へ動き出します。これに宮城県で建設が進められる気仙沼線(けせんぬません)を加えれば、八戸までの三陸沿岸が鉄道で結ばれることになり、これらを三陸縦貫鉄道と総称しました。
三陸縦貫鉄道はどんどん路線を延伸
1965(昭和40)年に久慈線の久慈〜普代(ふだい)間が着工したのを皮切りに、ほかの路線も順次着工します。1970(昭和45)年3月には盛〜綾里(りょうり)間の盛線が部分開業し、3年後には吉浜(よしはま)駅まで延伸。また、1972(昭和47)年2月、宮古〜田老(たろう)間が宮古線の名称で開業。久慈線は、1975(昭和50)年7月に久慈〜普代間で開業し、普代〜田老間の建設も順調に進められました。
三陸縦貫鉄道の全通
ところが、1980(昭和55)年に国鉄再建法が制定され、完成を目前に不採算路線である盛・宮古・久慈線は国鉄線としての存続が困難になります。
そこで、岩手県と関係市町村が協議し、3路線と未開通区間の開業を前提とした第三セクターの三陸鉄道が、1981(昭和56)年11月に誕生しました。
その後は未開業区間の工事が急速に進められ、2年半後の1984 (昭和59)年4月に開業。地域住民の宿願である三陸縦貫鉄道がついに全通したのです。
三陸鉄道リアス線の現在
気仙沼・盛・宮古・久慈線は線路規格も幹線並みの高規格で設計され、トンネルも交流電化を前提に建設し、特急列車や貨物列車の運転も考慮されました。それだけに三陸鉄道の軌道は強固でたくましく、三陸縦貫鉄道として大きな期待を背負って開業しました。
それから27年。東日本大震災で甚大な被害を受けましたが、多大な熱意と努力により復旧を遂げ、より地域に期待される重要な鉄道として再出発、現在に至っています。
大船渡線の今と昔
一ノ関~気仙沼間の62 ㎞を結ぶ大船渡線は、かつて盛駅を終点としていました。
東日本大震災で気仙沼~盛間が被災し2013(平成25)年3月、バス高速輸送システム「大船渡BRT」として復旧。しかし、同区間の鉄道は2020(令和2)年4月に廃止。三陸縦貫鉄道としての機能は失われました。
開通当初、大船渡線は道中、政治的な影響から、猊鼻渓(げいびけい)へ迂回するU字形の線形となったため「鍋鉉線(なべつるせん)」と揶揄されました。近年、曲がりくねった線形から「ドラゴンレール大船渡線」の愛称がつけられ親しまれています。
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・三陸海岸のうち南部だけが リアス海岸になっている理由
・三陸沖で多発する地震と 津波発生のメカニズムを探る
・平泉の黄金文化を支えた 玉山金山はどこがすごい?
・カルスト台地に刻まれた猊鼻渓と 幽玄洞は古生代の化石の宝庫!
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などなど岩手のダイナミックな自然のポイントを解説。
Part.2 岩手を駆け抜ける鉄道網
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・一ノ関以北で客車が走り続けた 大幹線・東北本線の歴史と実力
・急勾配を克服する物流の幹線 IGRいわて銀河鉄道がすごい!
・『銀河鉄道の夜』の原風景を走る岩手軽便鉄道に始まった釜石線
・三陸縦貫鉄道を引き継ぎ誕生! 沿岸部を走る三陸鉄道リアス線
・龍ヶ森の急勾配を越えろ! 奥羽山脈を横断する花輪線
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Part.3 岩手で動いた歴史の瞬間
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・安部氏から奥州藤原氏 やがて群雄割拠の戦乱へ
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