トップ > カルチャー >  北海道・東北 > 岩手県 >

三閉伊一揆の背景にあった盛岡藩の逼迫した財政

このような状況にもかかわらず、幕府から盛岡藩への手伝普請(てつだいぶしん)(建築や河川改修などの公共事業)の要請が相次ぎました。さらに、1792(寛政4)年にロシア使節ラクスマンが根室に来航したのを契機として、幕府は蝦夷地(北海道)防衛のために東北諸藩に北方警備を命じるようになり、盛岡藩の負担はさらに増しました。

1808(文化5)年、盛岡藩の石高は10万石から20万石へと高直しされますが、これは実高をともなわない表高のものであり、それでいて表高に見合った軍役を課せられるようになり、藩財政は破綻寸前にまで追い込まれます。

三閉伊一揆の勃発!盛岡藩が課した臨時徴税への領民の反発

1847(弘化4)年、盛岡藩は6万両の御用金(ごようきん)(臨時徴税)を課すと、領民はこれに一斉に反発。三閉伊通(さんへいどおり)(野田、宮古、大槌の三つの通り)の農民が藩政改革を求めて遠野の領主に25カ条の要求を強訴すると、周辺の村々からも賛同者が合流し、一揆勢は1万2000人に膨れあがりました。

結果、25カ条の要求のうち、12カ条を飲ませることに成功しました。

弘化の三閉伊一揆

弘化の三閉伊一揆
遠野市教育委員会HPを元に作成

三陸沿岸地域の漁業に目をつけた盛岡藩が臨時徴税をかけたことが三閉伊地方の領民の反発を呼びました。藩は税の廃止などを約束して一揆を収めましたが、のちに約束は反故にされ、一揆の中心人物も逮捕されて獄死したといいます。

三閉伊一揆が再発!盛岡藩への反発と藩政改革の要求

1853(嘉永6)年、盛岡藩は再び御用金の徴集を発しました。すると、田野畑村周辺の農民が蜂起し、釜石に到着するまでには一揆勢は1万6000人にまで達しました。

このときの一揆では、藩政改革が叶わなければ三閉伊の幕領化もしくは仙台藩領化を願い出ており、結果的に49カ条の要求のうち39カ条を受け入れさせ、藩首脳部を交代させることに成功したのです。

なお、これらの一揆の影響を受け、1856(安政3)年までのあいだに17件もの農民一揆が起こることになります。

嘉永の三閉伊一揆

嘉永の三閉伊一揆
遠野市教育委員会HPを元に作成

弘化の三閉伊一揆で取りつけた約束が破棄されたため、領民たちは仙台藩へ越訴しました。交渉は長引き、一揆勢は代表者45名を残して帰国しましたが、仙台藩の協力を受けて最終的には要求を通すことに成功しました。

『岩手のトリセツ』好評発売中!

日本の各県の地形や地質、歴史、文化、産業など多彩な特徴と魅力を、地図を読み解きながら紹介するマップエンターテインメント。岩手の知っているようで知られていない意外な素顔に迫ります。地図を片手に、思わず行って確かめてみたくなる情報を満載!

Part.1 地図で読み解く岩手の大地

・盛岡のまちを見守る名峰 岩手山はどうやってできた?
・宮沢賢治が名付けた理想の地? イーハトーヴの風景地とは
・三陸海岸のうち南部だけが リアス海岸になっている理由
・三陸沖で多発する地震と 津波発生のメカニズムを探る
・平泉の黄金文化を支えた 玉山金山はどこがすごい?
・カルスト台地に刻まれた猊鼻渓と 幽玄洞は古生代の化石の宝庫!
・ティラノサウルス類化石も発見! 国内最大の琥珀産地・久慈

などなど岩手のダイナミックな自然のポイントを解説。

Part.2 岩手を駆け抜ける鉄道網

・軌道から車両まで対策は万全! 積雪地帯を快走する東北新幹線
・一ノ関以北で客車が走り続けた 大幹線・東北本線の歴史と実力
・急勾配を克服する物流の幹線 IGRいわて銀河鉄道がすごい!
・『銀河鉄道の夜』の原風景を走る岩手軽便鉄道に始まった釜石線
・三陸縦貫鉄道を引き継ぎ誕生! 沿岸部を走る三陸鉄道リアス線
・龍ヶ森の急勾配を越えろ! 奥羽山脈を横断する花輪線

などなど岩手ならではの交通事情を網羅。

Part.3 岩手で動いた歴史の瞬間

・人々が定住し集落が生まれ 南北それぞれの文化が発達
・胆沢平野を中心に米作が進み 強大な権力も生まれる
・蝦夷のリーダー・アテルイと ヤマト王権の熾烈な争い
・安部氏から奥州藤原氏 やがて群雄割拠の戦乱へ
・前九年・後三年の役が終結し 花開いた黄金の平泉文化
・大崎氏と斯波氏の時代を経て 南部氏と伊達氏が台頭
・戊辰戦争での敗北から 紆余曲折ののち岩手県が成立

などなど、激動の岩手の歴史に興味を惹きつける。

『岩手のトリセツ』を購入するならこちら

リンク先での売上の一部が当サイトに還元される場合があります。
1 2

記事をシェア

※掲載の情報は取材時点のものです。お出かけの際は事前に最新の情報をご確認ください。

まっぷるトラベルガイド編集部は、旅やおでかけが大好きな人間が集まっています。
皆様に旅やおでかけの楽しさ、その土地ならではの魅力をお伝えすることを目標に、スタッフ自らの体験や、旅のプロ・専門家への取材をもとにしたおすすめスポットや旅行プラン、旅行の予備知識など信頼できる情報を発信してまいります!

エリア

トップ > カルチャー >  北海道・東北 > 岩手県 >

この記事に関連するタグ