盛岡藩はこの広大な藩領を支配するために、三代藩主・南部重直（しげなお）の頃から領内の街道整備に力を注ぎます。なかでも重視されたのが、奥州道中（奥州街道）でした。

奥州道中は日本橋（東京都中央区）を起点とする五街道のひとつで、千住（せんじゅ）（東京都足立区）から宇都宮宿（栃木県宇都宮市）までは日光街道と共用し、その先で分岐して福島県域、宮城県域、岩手県域、青森県域を通過して蝦夷地（えぞち）（北海道）へと至ります。藩領を南北に縦断する主要街道であり、1657（明暦（めいれき）3）年、重直の命で盛岡以南の街道は新道に改修され、最終的に県域には一関宿（一関市）から金田一宿（二戸市）まで16の宿場が設けられました。

この奥州道中を幹として、県域では鍛冶町（かじちょう）（盛岡市紺屋町）を起点に秋田街道（雫石街道）、鹿角街道、宮古街道（閉伊街道）、大槌街道、釜石街道、野田街道といった脇街道が整備されていきました。

江戸時代の初期は、参勤交代の際に奥州道中が利用されました。参勤交代は1635（寛永12）年に確立した制度で、全国の諸大名は1年おきに交代で領国と江戸に在住することが義務づけられました。

江戸との往復の際には大名行列が行われ、行列の規模は石高や家格に応じて規定がありました。江戸から遠く離れた盛岡藩にとっては藩財政を圧迫する悩みの種であり、江戸までの行程は11泊12日もかかったといいます。

陸路だけでなく水路も整備され、慶安年間（1648～1652年）以降は北上川舟運が利用されるようになります。新山河岸（しんざんかし）（明治橋付近）から郡山河岸（紫波町）を経由して黒沢尻（くろさわじり）河岸（北上市）まで小繰船を利用し、黒沢尻で大型の船に積荷を乗せ換えて石巻湊（宮城県石巻市）まで運ぶルートです。

その後は海に出て太平洋岸を南下する東廻り航路を用いました。北上川舟運と東廻り航路により、年貢米だけでなく、鮭や鱒などの川魚など、藩領内の特産品も江戸へ出荷されていったのです。

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