しかし、こうした中世的権威を背景とした名族は次第に力を失っていきました。かわりに台頭したのが南部氏や伊達氏、葛西氏です。これらの勢力は実力によって頭角を現したのち、室町幕府に献金して将軍から偏諱（へんき）（名前の一字拝領）や官途（かんと）を授かりました。中央政府と結びつくことで権威的な裏付けを得たわけです。

1522（大永2）年に伊達稙宗（たねむね）が陸奥国守護に任じられ、1539（天文8）年には、三戸南部氏の南部彦三郎（ひこさぶろう）が12代将軍・足利義晴（よしはる）から偏諱を受けて南部晴政（はるまさ）と名乗るようになりました。

南部晴政の死後、家臣の大浦為信が反旗を翻して津軽地方で独立しますが、南部氏の家督を継承した、南部信直は斯波氏を滅ぼして勢力を拡大。1590（天正18）年には豊臣秀吉の小田原征伐に参陣し、その後の奥州仕置でも本領を安堵されました。

このとき改易を命じられた大崎氏や葛西氏は反乱を起こします（葛西大崎一揆）が、秀吉の命を受けた伊達政宗（まさむね）によって鎮圧され、大崎氏と葛西氏の旧領は伊達氏の所領となります。

また、南部領でも九戸（くのへ）氏が反乱を起こしますが、豊臣軍の援軍を受けた南部氏が鎮圧し、南部氏は盛岡を拠点に支配体制を固めていきました。

上閉伊郡大槌町の大槌城は、大槌川と小槌川に挟まれた標高141mの丘陵に築かれた山城で「浜崎城」とも呼称されました。稜線の尾根に沿って東西700m、南北100mと区画され、三陸地方では最大規模を誇ります。

築城年代は室町時代で、阿曾沼（あそぬま）次郎が築いて大槌氏を称し、その子孫が居城としました。戦国時代には南部氏に臣従しましたが、1617（元和3）年に主家から謀叛を疑われ大槌氏は家名断絶。1659（万治2）年に廃城となりました。

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