胆沢平野に到達していた稲作文化
岩手県内では金田一川遺跡(二戸市)、大日向Ⅱ遺跡や君成田)Ⅳ遺跡(九戸郡軽米町)、兵庫館遺跡(北上市)といった遺跡から遠賀川式土器やその影響下にある土器が出土しており、弥生時代前期の前半には胆沢(いさわ)扇状地に稲作文化が到達していたようです。清水下(しみずした)遺跡(奥州市)からは石包丁が出土しています。石包丁は稲の穂を刈る道具であり、稲作農耕とともにもたらされました。
なお、弥生文化は津軽海峡を越えることができませんでした。北海道の寒冷な気候で当時の稲は生育できなかったため、北海道では縄文時代同様に狩猟採集に重きを置く続縄文文化が生まれます。岩手県域の人々は、北の続縄文文化と西からの弥生文化の両方の影響を受けながら生活を営んでいきました。
胆沢平野は古代における岩手県域の中心地だった
古代における岩手県域の中心地は胆沢地方で、4世紀の高山遺跡(奥州市)からは一辺が約5mの竪穴住居1棟が発見されています。5世紀になると胆沢地方には面塚遺跡・中半入遺跡・大畑遺跡(奥州市)、猫谷地(ねこやち)遺跡(北上市)などが形成されました。
胆沢平野に造営された角塚古墳とは
やがて5世紀後半頃になると、胆沢平野の中央に角塚古墳(奥州市)が造営されます。
角塚古墳は前方後円墳で、全長は45m、後円部の径は28.3m、前方部長は16.1~17.3m、同幅15~16m、後円部の最大比高4.3m、前方部最大比高1.5m。前方部が短くて低く、「帆立貝式古墳」と呼ばれるものに近いものです。
墳丘には円筒埴輪、朝顔形埴輪、形象埴輪が立てられていたようで、周濠(しゅうごう)内に転倒した状態で出土しました。
岩手県域のおもな古墳
古墳は、主要な河川沿いに多く立地します。近世以降、地元では「エゾ塚」や「エゾ森」などと呼ばれてきました。黒曜石製の石器などの副葬品からは、北方文化との交流がうかがえます。
角塚古墳(奥州市胆沢南都田)
胆沢扇状地の標高約76mの低位段丘上に位置します。日本最北の前方後円墳です。
江釣子古墳群
五条丸、猫谷地、八幡、長沼の各支群の総称。墳丘の内部に川原石を積んだ特異な石室があります。
胆沢平野の角塚古墳は日本最北の前方後円墳!
前方後円墳とは、元来は3~4世紀頃に畿内に誕生したヤマト王権が用いた墓制です。ヤマト王権に服属した各地の首長に造営が許されたものであり、前方後円墳の被葬者はヤマトとのつながりがあった人物と考えられます。
岩手県域で確認された古墳の大半は、7~8世紀の「末期古墳」と呼ばれる小規模な円墳からなる群集墳であり、前方後円墳はこの角塚古墳のみ。もっとも近い前方後円墳(宮城県大崎地方)からは約70kmも離れており、日本最北の前方後円墳です。角塚古墳は、ヤマト王権の支配が及んだ北限の地と考えられます。
角塚古墳の系譜、出土した埴輪などの系譜は、宮城県側の古墳造営集団と関連性があると指摘されています。角塚古墳の被葬者が誰なのかは判明していませんが、宮城県域の首長層を媒介として、全国的な政治的秩序(ヤマト王権の影響下)の一端に連なっていたようです。
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などなど岩手のダイナミックな自然のポイントを解説。
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・一ノ関以北で客車が走り続けた 大幹線・東北本線の歴史と実力
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・『銀河鉄道の夜』の原風景を走る岩手軽便鉄道に始まった釜石線
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・龍ヶ森の急勾配を越えろ! 奥羽山脈を横断する花輪線
などなど岩手ならではの交通事情を網羅。
Part.3 岩手で動いた歴史の瞬間
・人々が定住し集落が生まれ 南北それぞれの文化が発達
・胆沢平野を中心に米作が進み 強大な権力も生まれる
・蝦夷のリーダー・アテルイと ヤマト王権の熾烈な争い
・安部氏から奥州藤原氏 やがて群雄割拠の戦乱へ
・前九年・後三年の役が終結し 花開いた黄金の平泉文化
・大崎氏と斯波氏の時代を経て 南部氏と伊達氏が台頭
・戊辰戦争での敗北から 紆余曲折ののち岩手県が成立
などなど、激動の岩手の歴史に興味を惹きつける。
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