1924（大正13）年、大船渡セメントが設立されました。ところが、経済不況により、工場の建設はなかなか進展しませんでした。
昭和に入っても工事が遅々として進まないなか、さらに1933（昭和8）年に「三陸大津波」が発生し、多大な被害を受けたことから、一時は気仙沼（けせんぬま）湾などへの移転も検討されたといいます。

1936（昭和11）年に「東北セメント株式会社」が設立され、工場は翌1937（昭和12）年に操業を開始しました。

その後、1942（昭和17）年に小野田セメント株式会社大船渡工場となり、合併等を経て、1998（平成10）年に太平洋セメント株式会社大船渡工場として現在に至っています。

岩手のみならず、東北地方の近代化、産業発展に貢献してきた太平洋セメントですが、そこには、岩手開発鉄道の存在を忘れるわけにはいきません。

岩手開発鉄道は大船渡市の盛（さかり）駅を起点とし、日頃市（ひころいち）線（盛駅〜日頃市駅）・赤崎線（盛駅〜赤崎間）の2路線を運行する全長11.5kmの貨物鉄道です。

日頃市線は1950（昭和25）年、赤崎線は1957（昭和32）年に開業。当初は森林資源の運送や旅客鉄道として運行していましたが、あまり業績は振るいませんでした。しかし、1957（昭和32）年から1960（昭和35）年にかけて大船渡鉱山から産出した石灰石を大船渡工場に輸送しはじめたところ、もち直すことができたといいます。

その後、旅客運輸は1992（平成4）年に廃止となりました。岩手開発鉄道によって大船渡工場の生産量は上がり、東北一帯の産業は大いに発展することになりました。

高度経済成長期が終わっても東北のセメント基地として重要な役割を担い続けてきた太平洋セメント大船渡工場。ですが、2011（平成23）年に発生した「東日本大震災」により、かつてない危機を迎えます。

長年、東北地方のセメント基地として稼働してきたなかで、東日本を襲った大震災。津波は大船渡の町並みを流し去り、太平洋セメント大船渡工場も地震と津波によって全設備の7割が被害を受けました。

そんななか、太平洋セメント大船渡工場はわずか3カ月で災害廃棄物焼却処理を開始しました。さらにセメントの大敵である、塩分を除去して災害廃棄物セメントの資源化を実現。そして、岩手以外にも宮城、福島など復興を進める地域に必須なセメントを供給し続けたのです。

震災後3年の間に太平洋セメント大船渡工場でセメント資源化した災害廃棄物は、じつに96万9千トンに及びます。現在は震災以前の姿を取り戻し、2017（平成29）年に操業80周年を迎えました。

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