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猊鼻渓の地質学的特徴

こうした猊鼻渓の特異な地形は、石灰岩が侵食されてできたものです。石灰岩は、サンゴやフズリナ(紡錘虫(ぼうすいちゅう))などの殻や骨格をもつ太古の生物の死骸が海底に堆積してできた岩石で、成分は炭酸カルシウムです。

古生代石炭紀~ペルム紀(約3億5890万年~2億5190万年前)の石灰岩が海洋プレートの移動によって日本列島に付加し、猊鼻渓のある南部北上山地の大地をつくりました。その後の侵食作用によって、現在のカルスト地形ができたのです。

猊鼻渓の地質学的特徴
国土地理院の色別標高図を元に作成

砂鉄川によって台地に深い谷が刻まれていることがわかります。

猊鼻渓の地質学的特徴
猊鼻渓舟下り

約2㎞にわたって絶壁や奇岩が続く猊鼻渓。カルスト台地を砂鉄川が削ってできた地形です。

猊鼻渓舟下り

住所
岩手県一関市東山町長坂町375
交通
JR大船渡線猊鼻渓駅から徒歩5分
料金
大人1800円、小学生900円、幼児(3歳以上)200円(団体15名以上は1割引、100名以上は2割引、障がい者手帳持参で乗船料金半額)

猊鼻渓の間近で発見された鍾乳洞「幽玄洞(ゆうげんどう)」

1980(昭和55)年には、猊鼻渓の北約1.3㎞のところに鍾乳洞が発見され、「幽玄洞」と名づけられました。鍾乳洞も、雨水や地下水などがカルスト台地を削ってできます。

幽玄洞内では石筍(せきじゅん)、石柱、つらら石、フローストンなどの鍾乳石のほか、水深10m以上あるエメラルド色の地底湖「浄魂(じょうこん)の泉」などを見ることができます。

鍾乳洞はなぜできる?

鍾乳洞とは石灰岩にできた洞窟のこと。地上に降った雨水は大気中の二酸化炭素を含んで弱酸性になっているので、地中の石灰岩を溶かしていき、隙間をつくります。やがて石灰岩の中に空洞ができ、数万年以上の時間をかけて洞窟になっていきます。

石灰岩を溶かし込んだ地下水が洞窟の天井や壁からしみ出てくると、二酸化炭素が抜けて再び石灰質の岩石になります。この石灰岩が大きくなったものが、石筍、石柱、つらら石といったさまざまな鍾乳石です。

鍾乳洞はなぜできる?

岩手県岩泉町にある鍾乳洞・龍泉洞。日本三大鍾乳洞のひとつです。

幽玄洞の地質学的特徴

約3億5000万年前の粘板岩の地層が露出しているのも幽玄洞の大きな特徴です。白い石灰層を挟んで黒茶色の珪質粘板岩(けいしつねんばんがん)が、ほぼ直立して鍾乳洞の天井まで届いています。これらの地層はかつて海底に水平に堆積したものですが、その後の地殻変動によって徐々に傾斜し、垂直に近い角度に起き上がりました。

この石灰岩層からは、日本では1~2例しか知られていないウミユリの萼(がく)の化石をはじめ、腕足類(わんそくるい)、フズリナ、四放(しほう)サンゴ(絶滅したサンゴの仲間)など、生物学上においても貴重な化石が数多く発見されています

これらの化石は、現在内陸部である一関東山町が、かつては南の温暖な浅い海だったことを示しています。

幽玄洞

住所
岩手県一関市東山町長坂東本町154-1
交通
JR大船渡線猊鼻渓駅から東磐交通幽玄洞行きバスで6分、終点下車すぐ
料金
入洞料=大人1000円、高校生700円、中学生600円、小学生400円/

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Part.1 地図で読み解く岩手の大地

・盛岡のまちを見守る名峰 岩手山はどうやってできた?
・宮沢賢治が名付けた理想の地? イーハトーヴの風景地とは
・三陸海岸のうち南部だけが リアス海岸になっている理由
・三陸沖で多発する地震と 津波発生のメカニズムを探る
・平泉の黄金文化を支えた 玉山金山はどこがすごい?
・カルスト台地に刻まれた猊鼻渓と 幽玄洞は古生代の化石の宝庫!
・ティラノサウルス類化石も発見! 国内最大の琥珀産地・久慈

などなど岩手のダイナミックな自然のポイントを解説。

Part.2 岩手を駆け抜ける鉄道網

・軌道から車両まで対策は万全! 積雪地帯を快走する東北新幹線
・一ノ関以北で客車が走り続けた 大幹線・東北本線の歴史と実力
・急勾配を克服する物流の幹線 IGRいわて銀河鉄道がすごい!
・『銀河鉄道の夜』の原風景を走る岩手軽便鉄道に始まった釜石線
・三陸縦貫鉄道を引き継ぎ誕生! 沿岸部を走る三陸鉄道リアス線
・龍ヶ森の急勾配を越えろ! 奥羽山脈を横断する花輪線

などなど岩手ならではの交通事情を網羅。

Part.3 岩手で動いた歴史の瞬間

・人々が定住し集落が生まれ 南北それぞれの文化が発達
・胆沢平野を中心に米作が進み 強大な権力も生まれる
・蝦夷のリーダー・アテルイと ヤマト王権の熾烈な争い
・安部氏から奥州藤原氏 やがて群雄割拠の戦乱へ
・前九年・後三年の役が終結し 花開いた黄金の平泉文化
・大崎氏と斯波氏の時代を経て 南部氏と伊達氏が台頭
・戊辰戦争での敗北から 紆余曲折ののち岩手県が成立

などなど、激動の岩手の歴史に興味を惹きつける。

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