早池峰山を構成する蛇紋岩
蛇紋岩とは、地球を覆う地殻の下、マントル上部(地下数十〜400㎞)に存在するかんらん岩が、水と反応して変質した岩石です。非常に密度が高く重たい岩石で、蛇皮のような文様があることから、この名があります。
早池峰山の蛇紋岩は、約4億数千年前、古生代オルビドス紀という非常に古い時代に形成されたと考えられています。つまり、早池峰山では、地下深部にあった古くて重たい岩石が何らかの作用で上昇し、山上に現れているとことになります。地球の地殻変動の激しさには改めて驚かされます。
早池峰山の森林限界値にも影響する蛇紋岩
じつは蛇紋岩は、早池峰山の植生に大きく影響しています。早池峰山の気温であれば、森林限界は本来なら標高2000mほどにあり、山頂まで森林に覆われているはずです。ところが、実際の森林限界は標高1300m付近にあります。このように森林限界が極端に低いのは、風化が進みやすい蛇紋岩の岩体の表面が崩れ、ゴロゴロとした岩塊で覆われた斜面になっており、樹木の進出を阻んでいるためです。
土壌は栄養に乏しく、そのうえ蛇紋岩は、一般的な植物には有害なマグネシウムを多く含んでいます。このような環境では、しっかりと根を張って大きく成長する樹木は育つことができません。そのため、蛇紋岩分布域の下限である標高1300m付近が、森林限界になっているというわけです。
早池峰山周辺の地質
北上北部山地は古生代初期(約5億年前)の古い地質が基盤になっています。蛇紋岩分布域(中岳蛇紋岩)の周囲にある神楽火成岩と黒森山角閃石も、中岳蛇紋岩と同時代の古い地層です。これら3つを併せて「早池峰複合岩類」と呼びます。
北側の東西に分布するエリアは古生代の泥岩で、薬師岳ほか早池峰山の南に広がるのは白亜紀の火成岩です。
早池峰山で生育する蛇紋岩植物とは
この低い森林限界のおかげで、早池峰山では森林限界から山頂までの標高差約600mにわたって、存分に高山植物を楽しむことができます。なかでも、植物が苦手とする蛇紋岩地に適応した特殊な植物が分布していることで知られ、これらは「蛇紋岩植物」と呼ばれています。
早池峰山の限られた山域で独自の進化を遂げてきた植物たち
さらに、早池峰山の蛇紋岩植物は、固有種が多いことも大きな特徴です。山名を冠したハヤチネウスユキソウをはじめ、ナンブトウウチソウやナンブトラノオなどは、早池峰山のみで見られる希少な固有種です。
このような植物の固有種の多さにも、じつは地質分布が関係しています。早池峰山の蛇紋岩域は山体上部に限られ、いわば陸の孤島になっています。蛇紋岩に適応した植物は、そこから出ることもなく、限られた領域内で独自の進化を遂げてきたのです。
このような特殊性から、1974(昭和49)年には、早池峰山の標高1300m以高全域が、「早池峰山高山植物帯」として国の特別天然記念物に指定されました。
早池峰山
- 住所
- 岩手県花巻市大迫町岳山国有林
- 交通
- JR東北本線花巻駅から岩手県交通大迫バスターミナル行きバスで47分、終点で岩手県交通河原の坊行きバスに乗り換えて45分、終点下車、徒歩3時間30分
- 料金
- 情報なし
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Part.2 岩手を駆け抜ける鉄道網
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・一ノ関以北で客車が走り続けた 大幹線・東北本線の歴史と実力
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・三陸縦貫鉄道を引き継ぎ誕生! 沿岸部を走る三陸鉄道リアス線
・龍ヶ森の急勾配を越えろ! 奥羽山脈を横断する花輪線
などなど岩手ならではの交通事情を網羅。
Part.3 岩手で動いた歴史の瞬間
・人々が定住し集落が生まれ 南北それぞれの文化が発達
・胆沢平野を中心に米作が進み 強大な権力も生まれる
・蝦夷のリーダー・アテルイと ヤマト王権の熾烈な争い
・安部氏から奥州藤原氏 やがて群雄割拠の戦乱へ
・前九年・後三年の役が終結し 花開いた黄金の平泉文化
・大崎氏と斯波氏の時代を経て 南部氏と伊達氏が台頭
・戊辰戦争での敗北から 紆余曲折ののち岩手県が成立
などなど、激動の岩手の歴史に興味を惹きつける。
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