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江別でレンガ生産が始まったのではなかった!北海道のレンガ生産は函館から
明治の最初期には、北海道のレンガ生産の中心は函館でした。1856(安政3)年、尻岸内(しりきしない)村(現在の函館市恵山町)で古武井(こぶい)溶鉱炉用耐火レンガが製造されたのが、北海道のレンガ生産の始まりだといいます。
地形と気象条件のため強風で火が燃え広がりやすく、たびたび火災に見舞われていた函館では、火に強いレンガに高い関心がありました。1907(明治40)年の大火を機に、一気にレンガ建築が普及します。
江別でレンガ生産が始まった理由
その後、開拓使本庁が函館から札幌へ移転し、札幌周辺でレンガを製造する必要が出てきました。
開拓使が土質調査を行ったところ、道央で良質な粘土がとれることが判明。1877(明治10)年以降、月寒(つきさっぷ)(札幌市)や白石(札幌市)、野幌(のっぽろ)(江別市)などに民営のレンガ工場が設立され、本格的なレンガ生産が始まりました。
江別でのレンガ生産の歴史
江別で最初のレンガ工場は、1891(明治24)年に幌向村江別太(ほろむいむらえべつぶと)で創業した「江別太煉化石(れんがせき)工場」だといわれています。
1898(明治31)年には、当時道内の炭鉱開発を牛耳っていた北海道炭礦鉄道株式会社(北炭)が野幌にレンガ工場を設立。2年後には約634万本のレンガを生産したといいます。
やがて、江別のレンガは、鉄道や陸軍第七師団の施設、工場など、道内の至るところで使われるようになります。
江別のレンガ工場の発展
1923(大正12)年に関東大震災が起き、京浜地方一帯のレンガ建築が倒壊。本州ではレンガ建造物がほとんどつくられなくなりました。しかし、北海道では地震が少ないため、その後も順調に生産量を伸ばし、第二次世界大戦後の復興期にピークを迎えます。1950(昭和25)年の江別には、15社の工場が存在していました。
江別でレンガ生産が盛んになった理由
江別でレンガ生産が盛んになった要因は、良質な粘土だけではありません。粘土に混ぜる砂が採取でき、レンガ焼成の燃料となる石炭も夕張鉄道を使って容易に運んでくることができました。そして、レンガの大消費地である札幌・小樽・旭川とも距離が近く、レンガの運搬には石狩川の舟運を使うことができました。
当時、レンガは屋外で手作りされていました。「しっぺ板」と呼ばれる羽子板状の道具を使って粘土を叩く音を聞いて、列車の乗客は野幌駅に近づいたことを知ったといいます。
「江別のれんが」はいまや生産量日本一!
レンガの地位を揺るがしたのは、鉄筋コンクリートの登場でした。需要急落でレンガ工場閉鎖が相次ぎ、道内では江別のみが残りました。
江別では、現在も3つのレンガ工場が操業しています。レンガの生産量は日本一で、国内20%以上のシェアを占めます。市内には小学校やサイロ(冬期の家畜飼料などを貯蔵する搭状の倉庫)、民家などレンガ建築が多数現存。 閉鎖した工場もショッピングセンターなどに利用されています。
北海道開拓を支えた「江別のれんが」は、2004年(平成16)年に北海道遺産に選定されました。
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