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黒田清隆に招へいされた外国人専門家たち
北海道の農業の基本方針が立てられたのは明治時代。1871(明治4)年、当時開拓使次官だった黒田清隆(くろだきよたか)により、10年間で1000万円の財政投資を行う「開拓使十年計画」 が策定されました。これにより、洋式農法の導入、官営工場の設立、鉱山の開発、鉄道の設置などが進められました。
【黒田清隆が招いた外国人専門家】ホーレス・ケプロン:気候に適した農作物や農法の選定
黒田清隆はアメリカから農務局長のホーレス・ケプロンを招へい 。ケプロンは、北海道の寒冷な気候に畑作と酪農の混同農業が適していると判断しました。函館、札幌、七重に設置した試験農園(官園)で、輸入した種子や洋式畜力農具など欧米技術の試験を実施。北海道に合う農作物や農法を見定めていきました。
【黒田清隆が招いた外国人専門家】ウィリアム・スミス・クラーク:大規模有畜農業の拠点を築く
黒田清隆は、1876(明治9)年には、マサチューセッツ農科大学学長のウィリアム・スミス・クラーク博士を招いて、札幌農学校(現在の北海道大学)を設立。クラーク博士の指導で開かれた大農場は、近代的な大規模有畜農業を日本に導入する拠点となりました。
【黒田清隆が招いた外国人専門家】エドウィン・ダン:北海道の農業と酪農の基礎を築く
同時期に招へいされたエドウィン・ダンは、1877(明治10)年に真駒内(まこまない)放牧場を建設。牛・豚の飼育、品種改良、ハムやバターなどの加工技術などを指導し、北海道の酪農の基礎を築きました。
黒田清隆が提唱した北海道の大規模民間農場の誕生
その後、北海道庁により1886(明治19)年に「北海道土地払下規則」が制定。国有未開発地の払い下げ面積は1人10万坪までと定められていましたが、大規模な事業に対しては制限面積以上の払い下げが認められるようになりました。
1897(明治30)年には「北海道国有未開地処分法」が制定されます。開墾や牧畜に利用する土地を無償で貸し付け、一定期間内に成果を上げればそのまま土地を与えるという内容でした。
1人当たりの貸付地面積は、開墾地が150万坪以内、植樹地が200万坪以内、牧畜地が250万坪以内と大幅に引き上げられました。会社や組合の場合は、さらにこの2倍の貸付を受けることができました。これらの法により、本州の富豪や華族らが投資し、大規模な民間農場が次々と誕生しました。
北海道の農産物や畜産物は収穫・生産量はもちろん知名度もバツグン!
現在、北海道は小麦、大豆、タマネギ、にんじん、生乳などで収穫・生産量が日本一。牛肉では「十勝和牛」「白老牛」、米では「ゆめぴりか」「ふっくりんこ」「ななつぼし」など全国的に北海道産ブランドが知られています。
北海道の主要な農産物と水産物
地域によって気象や立地条件が異なるため、小麦は十勝地方、そばは道北地方など、多彩な農産物が生産できます。四方を海に囲まれていることから、海産物も種類豊富にとれます。
ニシン漁の盛衰
1880(明治13)~1903(明治36)年、ニシンの漁獲量は年間75万トン前後とピークを迎えました。余市、小樽などの日本海沿岸には、ニシン漁で得た莫大な利益で、豪華な番屋「ニシン御殿」が建てられました。しかし昭和に入ると漁獲量が減り、1957(昭和32)年頃を最後にニシンが北海道から姿を消し、「幻の魚」と呼ばれるようになりました。近年、稚魚の放流などが行われ、 徐々に水揚量が戻ってきています。
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『北海道のトリセツ』見どころ―目次より抜粋
Part.1 地図で読み解く北海道の大地
地球規模のプレート運動が北海道の大地と山々をつくる!
むかわ町穂別で発見された新種恐竜カムイサウルスとは!?
国内最大の湿地・釧路湿原が3000年以上も陸地化しない謎 ほか
Part.2 北海道を駆け抜ける鉄道網
日本初の軌道交通は茅沼を走り手宮~札幌に道内初の本格鉄道
ゴムタイヤで性能は上々 札幌市営地下鉄3路線の実力
樺太の鉄道と稚泊連絡船 最北の鉄路・宗谷本線 ほか
Part.3 北海道で動いた歴史の瞬間
4000年前の縄文時代に築かれたストーンサークルとは何か?
海を駆け巡る北の民アイヌ 樺太進出を狙い元と戦う!
松前藩が誕生し支配体制が確立! 南下を狙うロシアとのにらみあい
土方歳三の戦死で戊辰戦争終結! 旧幕府軍が描いた蝦夷共和国とは ほか
Part.4 北海道で育まれた産業や文化
150年で200万都市へ成長! 道都・札幌が大発展した理由とは?
北海道らしい大規模農業は開拓時代に黒田清隆が提唱した!
サッポロビールにニッカウヰスキー 北の大地で銘酒が誕生するまで ほか
<コラム>
データで分かる全189市区町村 人口、所得、農業・漁業
初三郎が描いた北海道の鳥瞰図
過酷な気候と労働が生んだ 小林多喜二のプロレタリア文学
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