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北海道の炭鉱開発:石炭の起源と炭田ができるまで

北海道の石炭の起源は、古第三紀始新世(こだいさんきししんせい)(約5600万年~約3390万年前)までさかのぼります。

かつての北海道は現在の西日本ほどの気温で、メタセコイアやニレ、フウ、カツラなどの森林や湿原が広がっていました。こうした植物が枯れて腐らずにゆっくりと分解されてできる泥炭層が、下部で圧力を受け押し固められて石炭ができます。厚さ1mの石炭層ができるためには、枯れた植物が10mあまり堆積する必要があるとされます。

ライマンの助手・坂市太郎(ばんいちたろう)が1888(明治21)年に発見し、現在は道指定天然記念物となっている「石炭の大露頭(だいろとう)」(夕張市)は、合計約7.3mに及ぶ石炭層が露出している場所。これができるまでには、厚さ100mを超える膨大な量の植物が堆積したことになります。このように、太古から植物が積もり積もってできた炭田が、北海道には多くあるのです。

北海道の炭鉱開発:鉄道の開通と北海道の石炭業の発展

まず開発されたのは、石狩炭田に属する幌内(ほろない)炭鉱。1879(明治12)に官営の炭鉱として開鉱し、1882(明治15)年には石炭輸送のための幌内鉄道も開通しました。

1889(明治22)年、内地資本を呼び込むため、幌内炭鉱・鉄道は民間の「北海道炭礦(たんこう)鉄道会社(北炭)」に払い下げられます。政府と道庁の手厚い保護を受けながら、夕張炭鉱や空知炭鉱などに開発の手を広げ、北炭は道内石炭生産量の約8割という圧倒的なシェアを得るに至りました。

北海道の炭鉱開発:鉄道の国有化を契機とする財閥系資本の進出

北炭の強みのひとつは、石炭の輸送に不可欠な鉄道を自社専用線として独占使用していたこと。しかし、1906(明治39)年に鉄道が国有化されてパワーバランスが崩れました。

三井・三菱・住友など財閥系資本が進出し、道内の炭鉱を次々に買収。日露戦争後の不況で経営が悪化した北炭(鉄道売却後、北海道炭礦汽船株式会社に改称)も、1913(大正2)年には完全に三井の支配下に置かれました。三井と三菱は釧路炭田にも進出します。こうして、1930(昭和5)年には道内石炭生産量の96.3%を財閥が占めることとなります。

北海道のおもな炭田

北海道のおもな炭田
『揺れ動く大地 プレートと北海道』(北海道新聞社、2018年)ほか各種資料を元に作成

夕張地方と空知地方にまたがる石狩炭田は、国内でも有数の質と量を誇りました。夕張は北炭最大の生産拠点としてとくに栄えました。釧路炭田がそれに続きます。

北海道の炭鉱開発:軍需による北海道の石炭業の栄華と衰退

主要炭鉱会社でカルテルを組んで世界恐慌を乗りきると、満州事変をきっかけに戦争が始まり、軍需で石炭は増産。石炭業の栄華は戦後まで続きます。

その後、石油エネルギーへの転換や事故の多発によって、1960年代以降は閉山が相次ぎました。現在は、国内で唯一坑内掘りを続けている釧路コールマインのほか、数カ所の露天掘り炭鉱が稼働しています。

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地球規模のプレート運動が北海道の大地と山々をつくる!
むかわ町穂別で発見された新種恐竜カムイサウルスとは!?
国内最大の湿地・釧路湿原が3000年以上も陸地化しない謎 ほか

Part.2 北海道を駆け抜ける鉄道網
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Part.3 北海道で動いた歴史の瞬間
4000年前の縄文時代に築かれたストーンサークルとは何か?
海を駆け巡る北の民アイヌ 樺太進出を狙い元と戦う!
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<コラム>
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初三郎が描いた北海道の鳥瞰図
過酷な気候と労働が生んだ 小林多喜二のプロレタリア文学

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