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宇奈月温泉はEMU導入でエコリゾート地を目指す

宇奈月は、単なる温泉街ではありません。世界有数のエコリゾートを目指し、壮大なプロジェクトを進める町です。その核となっているのがEV(電気自動車)です。2012年、宇奈月温泉に初めてeCOM-8という低速電気バスが導入され、EMU(エミュー)の愛称で親しまれてきました。製造元である株式会社シンクトゥギャザーはEV事業に取り組んでいることで知られる企業で、いくつかのEVや関連製品を開発しています。

宇奈月温泉のEMUの特徴

なかでもEMUとして導入されたeCOM-8は、最高速度時速19㎞で安全性に優れ、街並みをゆっくり鑑賞できるため観光地にふさわしいのです。屋根には太陽光パネルを設置してあり、排気ガスを出さないだけでなく、走行しながら太陽光発電でバッテリーを充電できるというエコ仕様となっています。

宇奈月温泉のEMUの着想はマッターホルンの麓町から

実はこのEMUの着想は、スイスの小さな街から得ています。マッターホルンの麓にあるEV100%の街、ツェルマットです。街を走るのは電気タクシーや電気トラック、電気バスなどで、見事なまでに電気だけで交通システムが成り立っています。驚くべきは、この街にEVが初めて導入されたのが昭和22(1947)年であったこと。そして昭和36(1961)年には住民投票によって、ガソリン車で街へ入ることを禁止しました。第二次世界大戦終戦から間もない頃、すでに住民たちはエコに取り組んでいたのです。

宇奈月温泉はEMU導入でめざすもの

観光客の交通手段が公共交通機関である電車から観光バスや自家用車に移行したことで、問題となったのは大型バスや自動車による排気ガスの放出。温泉街付近の清涼な空気を汚し、自然豊かな温泉地というイメージを損なってしまうため、観光客のニーズともミスマッチが生じることに。せっかくやってきても、街歩きを存分に楽しめる状況ではありませんでした。そこで導入されたEMUは、観光客が快適に街めぐりを楽しめることと、温泉街にクリーンな空気を取り戻すことの両方を叶えるものだったのです。

宇奈月温泉のEMUの名前の由来

名前の由来については、Electric Mobility in Unazukiの頭文字からEMUとなりますが、それでは味気ないことと、もっと親しみを持ってもらいたいという理由から、「笑顔で(E)満喫(M)宇奈月温泉(U)」の意味も込められています。

宇奈月温泉のEMUは観光ガイドも評判

EMUの運行が始まって2年間は、黒部市内のタクシー会社に運転が委託されていました。しかし、経費削減やタクシー運転手の人手不足もあり、3年目からは黒部市シルバー人材センターから運転手が派遣されるようになり、これが宇奈月温泉にとって良い効果をもたらします。契約した業務内容は車両の運転でしたが、派遣されてきた運転手は自ら進んで観光ガイドの役割も務めるように。乗客アンケートでは、運転手の対応について高評価が多く見られています。

宇奈月温泉はEMU以外のエコプロジェクト

さらに宇奈月のすごいところは、小さな温泉街でありながら、EMU以外のプロジェクトも同時に進行している点です。

宇奈月温泉のエコプロジェクト①:小水力発電による電力自給

そのうちの1つは、小水力発電による電力自給。温泉街を流れる水を利用して小水力発電をおこない、発電したエネルギーをEMUの充電や公共設備に供給するという狙いで進められています。2014年に完成した宇奈月谷小水力発電所「でんきウォー太郎1号」によって、宇奈月温泉に3台あるEMUのうち1台の電力を賄っており、今後も小水力発電所を建設し、すべてのEVへの電力自給を目指しています。

宇奈月温泉のエコプロジェクト②:木質バイオマスによる熱供給

森林資源をエネルギーへと変える動きも見られます。温泉街そばにある宇奈月ダムには、雪解けや豪雨で倒れた黒部川上流の流木が大量に流れ着き、下流域に流下させないために定期的に除去作業がおこなわれています。また、流木や、隣町で森林組合が間伐した木材を、福祉施設と連携して薪割りをしてもらい利用することで、木質バイオマスによる熱供給が進んでいます。

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・立山連峰との高低差4000m!「きときと」ぞろいの富山湾
・黒部ダムが大電源を生み出すまで
・崩壊を続ける立山カルデラ
・極東の氷河の南限は立山! 国内初の氷河認定とライチョウ
・神秘の光景! 魚津の蜃気楼と雨晴海岸の気嵐
・2000年前に形成された魚津埋没林
・富山の水がおいしいヒミツ
・立山の地下には「何か」がある! 活断層はあるのに地震が少ない理由
・富山湾のホタルイカはなぜ有名?

…など

Part.2 富山を駆ける充実の交通網

・北陸新幹線開業による光と影
・河川敷にある富山きときと空港
・SDGs未来都市に選定 ライトレールが象徴するまちづくり
・伏木港は神戸港に憧れた男の夢
・立山の観光ルートは1つじゃない? 一般開放が待ち遠しい黒部ルート
・マッターホルンの麓町から着想 低速電気バスEMUと宇奈月温泉
・鉄オタ集結地! 富山県は公共交通の宝庫
・V字峡谷を走るトロッコ電車

…など

Part.3 富山の歴史を深読み!

・江戸時代は鮎だった! 駅販売で広がったます寿し
・富山県成立までの複雑な歴史/越中の英雄・佐々成政の人物像
・焼け野原と化した富山大空襲/富山の遺跡&古墳は個性派ぞろい
・放生津に存在した亡命政権
・越中の伊能忠敬 射水出身の測量家・石黒信由
・越中の黄金郷 加賀藩極秘の「越中の七かね山」
・北陸近代医療の父・黒川良安
・世界遺産は加賀藩の軍事工場 五箇山でおこなわれた塩硝づくり

…など

Part.4 富山で育まれた文化や産業

・「越中おわら節」はなぜ有名?
・財政難を立て直した富山の売薬
・布教のためのテキストだった 曼荼羅から読み解く立山信仰
・秀吉も称えた伝説の刀工・郷義弘
・売薬商人は危ない橋を渡っていた? 薬の密貿易が生んだ昆布文化
・有名な創業者も多く輩出 富山県民は倹約家で働き者
・ジャポニズムの立役者・林忠正
・アニメの聖地が多い富山県
・瑞泉寺再建から始まった井波彫刻

…など

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