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富山湾から立山連峰までの高低差は4000m!
この「きときと」の魚介を育むのが、富山のダイナミックな地形です。立山連峰を含む北アルプスは標高3000m級(最高峰は大汝山(おおなんじやま)3015m)。一方、富山湾の海底の最深部は1000mを超えています。富山県自体は富山市を中心に半径50㎞というまとまりのよい地形ですが、そのコンパクトな範囲のなかに、高低差4000mにも及ぶ山と海が存在していることが一番の特徴です。この急峻さは、世界的にも類を見ません。
富山湾が「きときと」ぞろいの理由
平野部の三方を囲むように山々がそびえる富山県は、県土面積の約67%を森林が占め、豊かな森林にも恵まれています。立山に降る雪や雨は、年間約6000mm。立山連峰や、それに連なる山々から森林へと、雪解け水や雨水が流れ込み、森林で有機質をたっぷりと蓄えながら、河川へ、やがて海へと辿り着きます。富山湾は、海岸から離れると急激に深くなり、海岸から20km地点ですでに水深は1000mに。湾底へと一気に落ち込むこの海底谷は「藍瓶(あいがめ)」や「ふけ」と呼ばれ、ここに流れ込んだ河川の水が豊富なプランクトンを培養します。魚たちがこのプランクトンを求めてふけ沿いに回遊してくるために好漁場となっており、なかでも最も大陸棚が発達した氷見沖はこの特性が顕著に見られます。
富山湾の生態系を支える海底湧水
立山からの雪解け水や雨水は、森林や河川を伝って海へ注ぐだけではありません。地中に染み込み、何十年も経ってから、海底湧水として富山の海底から湧き出します。豊富な栄養分を含んだこの淡水は、絶えず海底から湧き出して富山湾の生態系を支えており、「海底のオアシス」や「栄養の泉」などと呼ばれています。世界各国で海底湧水に関する調査が始まっていますが、富山湾の海底湧水は流量が豊かで観測しやすいため、研究において格好のモデルとなっています。
富山湾の海流は?
きときとの認知度が高い一方で、富山湾の海流について理解している富山県民はどれくらいいるでしょうか。隣県である石川県の近海では寒流と暖流が交わっていますが、富山湾には寒流が流れ込んでいないのです。にも関わらず、巷で見られるパンフレットには、暖流と寒流が合流していると記したものが少なくありません。その誤認の理由は、アマエビやスケトウダラなど、寒流系の魚が獲れるからでしょう。実際、300m以深となると、水温は年間を通じて1~2℃。この低い水温によって寒流系の魚が育まれ、寒流が流れ込んでいると思えるほどに豊かな漁場が出来上がっているのです。
富山湾はなぜ冷たいの?
ではなぜ、富山湾は冷たいのでしょうか。富山湾の海水は3層に分類されます。最上部には、河川水と海底湧水が混ざった「沿岸表層水」。その下には、「対馬暖流水系」。さらにその下、300m以深には、「日本海固有水(海洋深層水)」の層が横たわっています。富山湾の容積の約60%を占めるのがこの「日本海固有水(海洋深層水)」です。清浄性、富栄養性が高く、ミネラルバランスも良いので、ヒラメやアワビ、カキの養殖のほか、健康飲料や食品、医薬品などの商品開発にも活用される水となっています。
日本海固有水が清浄で栄養豊富な状態を保てる理由
この水が清浄で栄養豊富なまま保たれているのは、ひとえに水温の低さによります。富山湾の日本海固有水は、日本海の北部で冷やされた海水が沈み込んで生まれるといわれています。その冷たさゆえに太平洋などの深海の水と比べて速く沈むため、沈んでいく間に生物に消費される酸素量も少なくて済みます。よって酸素量は多いままで、生物が生息するのに適していることがメリットとなっているのです。
富山湾が育んだ「きときと」魚介を味わおう!
富山県には、富山湾で獲れたネタのみを使った「富山湾鮨」を提供している店が多くあります。山と海の激しい高低差、栄養豊富な水を生み出す山々、深海の清浄な海水。富山の地形だからこそ育まれる海の幸に、舌鼓を打ってみてはどうでしょうか。
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富山県の地形や地質、歴史、文化、産業など多彩な特徴と魅力を、地図を読み解きながら紹介するマップエンターテインメント。富山の知っているようで知られていない意外な素顔に迫ります。地図を片手に、思わず行って確かめてみたくなる情報満載!
Part.1 地図で読み解く富山の大地
・立山連峰との高低差4000m!「きときと」ぞろいの富山湾
・黒部ダムが大電源を生み出すまで
・崩壊を続ける立山カルデラ
・極東の氷河の南限は立山! 国内初の氷河認定とライチョウ
・神秘の光景! 魚津の蜃気楼と雨晴海岸の気嵐
・2000年前に形成された魚津埋没林
・富山の水がおいしいヒミツ
・立山の地下には「何か」がある! 活断層はあるのに地震が少ない理由
・富山湾のホタルイカはなぜ有名?
…など
Part.2 富山を駆ける充実の交通網
・北陸新幹線開業による光と影
・河川敷にある富山きときと空港
・SDGs未来都市に選定 ライトレールが象徴するまちづくり
・伏木港は神戸港に憧れた男の夢
・立山の観光ルートは1つじゃない? 一般開放が待ち遠しい黒部ルート
・マッターホルンの麓町から着想 低速電気バスEMUと宇奈月温泉
・鉄オタ集結地! 富山県は公共交通の宝庫
・V字峡谷を走るトロッコ電車
…など
Part.3 富山の歴史を深読み!
・江戸時代は鮎だった! 駅販売で広がったます寿し
・富山県成立までの複雑な歴史/越中の英雄・佐々成政の人物像
・焼け野原と化した富山大空襲/富山の遺跡&古墳は個性派ぞろい
・放生津に存在した亡命政権
・越中の伊能忠敬 射水出身の測量家・石黒信由
・越中の黄金郷 加賀藩極秘の「越中の七かね山」
・北陸近代医療の父・黒川良安
・世界遺産は加賀藩の軍事工場 五箇山でおこなわれた塩硝づくり
…など
Part.4 富山で育まれた文化や産業
・「越中おわら節」はなぜ有名?
・財政難を立て直した富山の売薬
・布教のためのテキストだった 曼荼羅から読み解く立山信仰
・秀吉も称えた伝説の刀工・郷義弘
・売薬商人は危ない橋を渡っていた? 薬の密貿易が生んだ昆布文化
・有名な創業者も多く輩出 富山県民は倹約家で働き者
・ジャポニズムの立役者・林忠正
・アニメの聖地が多い富山県
・瑞泉寺再建から始まった井波彫刻
…など
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