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立山に氷河は現存するのか?

氷河期と呼ばれる時期、立山に氷河があったことは、氷河で山が削られたことを示す山崎圏谷(やまさきけんこく)などが確認されていることからも明らかでした。しかし、“現存する”氷河の存在を探して、富山県立山カルデラ砂防博物館の研究チームが2009年から調査を開始します。もともと立山連峰には厚い氷体を持つ万年雪が存在することが知られていましたが、なかでも注目したのが立山の雄山(おやま)(3003m)東面の御前沢(ごぜんざわ)雪渓、剱岳(つるぎだけ)(2999m)東面の三ノ窓(さんのまど)雪渓小窓(こまど)雪渓。万年雪は、氷河と違って流動しない単なる雪氷体のことをいいます。しかし、これらの雪渓の中に流動する氷河が現存するかが調査の焦点だったのです。

立山に氷河はあった! 極東地域の氷河の南限は立山に

研究チームは、アイスレーダーを用いて氷体の厚さを測定。また、氷体が露出する9月に雪渓上にポールを固定し、その位置を10月まで高精度GPSで測量することで、氷体の流動を確認しようと試みます。その結果、三ノ窓雪渓、小窓雪渓、御前沢雪渓のそれぞれで氷体が流動していると判明。これらの流動量は、ヒマラヤなどの小型氷河の流動量に匹敵するものであり、2012年、調査された万年雪が現存する国内初の氷河であると学術的に認定されたのでした。これにより、極東の氷河南限が北緯57度のカムチャツカ半島から北緯36度の立山まで大きく南下したことになります。世界的に見ても極めて珍しい、温暖な地域に存在する氷河です。

立山に氷河が存在するのはなぜ?

列島のほとんどが温帯に属する日本に、なぜ氷河が存在したのでしょうか。要因は、世界的な豪雪と急峻な地形だと考えられています。大量に降った雪は、季節風の風下側の深い谷にたまりやすく、そこで積雪が多くなると、上部の雪の重さで下部の雪が圧縮されて次第に氷に変化します。そうして長い時間をかけてできた厚い氷体が重力で動き出して氷河になります。実際、立山東斜面にある内蔵助(くらのすけ)氷河の氷体底部からは、1700年前の日本最古の氷が発見されています。通常、登山者が氷河に立ち入ることはできませんが、この内臓助氷河は立山東斜面にあり、氷河の近くに登山道が通っていることでも知られています。

立山にライチョウが生息している

地球温暖化に伴い、縮小や消滅が懸念されている氷河。地球環境のバロメーターであり、いわばタイムカプセルのような役割を果たしています。ライチョウの存在もまさにその最たる例です。ライチョウは、北半球の北アメリカ大陸やユーラシア大陸などの中緯度から高緯度地域にかけて生息<しています。日本へは約2万年前の氷河期に移ってきて定住したといわれています。しかし、氷河期が終わって温暖になると、多くのライチョウは北へと戻り、ごく一部が高山帯にとどまって生息しています。「氷河期の生き残り」と呼ばれるのは、こうした経緯からです。ライチョウ科の鳥は北極周辺が主な生息地であるため、日本のライチョウは最も南に生息していることになります。立山では、昔から「神の使い」として大切にされる存在で、昭和30(1955)年、国の特別天然記念物に指定されました。

立山のライチョウを守るために

立山の室堂(むろどう)周辺には、295羽(平成28年調べ)のライチョウが生息しています。日本では頸城山塊(くびきさんかい)、北アルプス、乗鞍岳、御嶽山、南アルプスに分布しており、八ヶ岳、蓼科山ではすでに絶滅。白山でも絶滅したといわれていましたが、2009年にメスが1羽だけ確認されて話題になりました。1980年代には約3000羽と推定されていましたが、2000年代には2000羽弱に減少したと推定されています。それを考えると、300羽近くが確認されている立山は稀少な生息地。日本では、生息地の多くを国立公園や鳥獣保護区に指定し、保護に努めています。

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Part.1 地図で読み解く富山の大地

・立山連峰との高低差4000m!「きときと」ぞろいの富山湾
・黒部ダムが大電源を生み出すまで
・崩壊を続ける立山カルデラ
・極東の氷河の南限は立山! 国内初の氷河認定とライチョウ
・神秘の光景! 魚津の蜃気楼と雨晴海岸の気嵐
・2000年前に形成された魚津埋没林
・富山の水がおいしいヒミツ
・立山の地下には「何か」がある! 活断層はあるのに地震が少ない理由
・富山湾のホタルイカはなぜ有名?

…など

Part.2 富山を駆ける充実の交通網

・北陸新幹線開業による光と影
・河川敷にある富山きときと空港
・SDGs未来都市に選定 ライトレールが象徴するまちづくり
・伏木港は神戸港に憧れた男の夢
・立山の観光ルートは1つじゃない? 一般開放が待ち遠しい黒部ルート
・マッターホルンの麓町から着想 低速電気バスEMUと宇奈月温泉
・鉄オタ集結地! 富山県は公共交通の宝庫
・V字峡谷を走るトロッコ電車

…など

Part.3 富山の歴史を深読み!

・江戸時代は鮎だった! 駅販売で広がったます寿し
・富山県成立までの複雑な歴史/越中の英雄・佐々成政の人物像
・焼け野原と化した富山大空襲/富山の遺跡&古墳は個性派ぞろい
・放生津に存在した亡命政権
・越中の伊能忠敬 射水出身の測量家・石黒信由
・越中の黄金郷 加賀藩極秘の「越中の七かね山」
・北陸近代医療の父・黒川良安
・世界遺産は加賀藩の軍事工場 五箇山でおこなわれた塩硝づくり

…など

Part.4 富山で育まれた文化や産業

・「越中おわら節」はなぜ有名?
・財政難を立て直した富山の売薬
・布教のためのテキストだった 曼荼羅から読み解く立山信仰
・秀吉も称えた伝説の刀工・郷義弘
・売薬商人は危ない橋を渡っていた? 薬の密貿易が生んだ昆布文化
・有名な創業者も多く輩出 富山県民は倹約家で働き者
・ジャポニズムの立役者・林忠正
・アニメの聖地が多い富山県
・瑞泉寺再建から始まった井波彫刻

…など

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