富山湾のホタルイカの特徴
富山湾のホタルイカが普段生息するのは、水深約200~600mの深海。それが夜になると、産卵のために浅い海へ浮上してきます。夜中から未明にかけて産卵した後、夜明けとともに再び深海へ降下して岸を離れるという行動を群れごとに繰り返します。海底地形が急に深くなっているという富山湾の特徴は、ホタルイカにとって岸に寄りやすい理由でもあるのです。オスはメスに精子を渡すとそのまま死んでしまうため、夜に浮上してくるのはメスだけです。
富山湾のホタルイカがおいしい理由
富山県の主な漁法は定置網漁で、県の漁獲量の70%以上を占めています。これは沿岸に敷設されている定置漁場へ行き、網に入った魚を水揚げする漁法です。富山県で考案されて各地に伝わったといわれ、定置網によるホタルイカ漁は全国でも富山でしかおこなわれていません。そして沿岸に設置されたこの網にかかるのは、産卵期の丸々太ったメスだけです。
山陰沖などのホタルイカは底曳網漁
一方、山陰沖などは底曳網漁なので、まだ太っていないメスや痩せたオスが獲れることもあります。この底曳網漁は重い網を海底に沈めて曳き回すため、魚を傷つけてしまうだけでなく、そこに棲むほかの海生生物の環境を壊すことも問題視されています。
富山湾のホタルイカは定置網漁
その点、富山の定置網は、産卵後に深海に戻ろうとするメスのみを捕獲できるように設置場所も考えられており、ホタルイカを傷つけるおそれも少なく、資源を守ることにも繋がっています。沿岸が漁場となるので港や加工場にも近く、鮮度が損なわれにくいのです。これが富山湾のホタルイカがおいしいといわれる理由です。
富山湾の春の風物詩「ホタルイカの身投げ」
おいしさのほかに、富山のホタルイカを有名にしたのが「ホタルイカの身投げ」。富山湾の春の風物詩で、ホタルイカが光りながら波打ち際に打ち上げられる光景です。一般的に2月下旬から5月にかけて見られ、数が多いときには、海岸線が青白くイルミネーションのように輝き、夜の海を幻想的に彩ります。
時間帯の予測は難しいですが、21時くらいから翌未明にかけて出現。月が出ているとホタルイカは浅瀬にやって来ず、新月の日の前後2日間が最も出現確率が高いといわれています。これは、ホタルイカは月の光を目印に自分の位置を把握しており、月明かりのない新月の夜にはどうしても方向を見失ってしまい、棲みかの深海へ戻ることができないことが理由と考えられています。
富山湾では毎年3月1日が解禁日。漁は6月まで続き、最盛期は4月~5月初旬あたり。
ホタルイカが光るのはなぜ?
ホタルイカが光る秘密は、体にある発光器。胴長約4~6㎝の小さな体全体に約700~1000個もの発光器を持っています。ホタルイカの発光は、外敵から身を守るための目くらましや、仲間同士の合図。さらに光ることで自分の影を消す役割もあるといわれています。ホタルイカは産卵後、海の底へ戻っていきますが、方向を見失ったり潮の流れに捕まったりすると、海岸へ打ち上げられて二度と海へは戻れません。このとき浜に打ち上がったときの刺激でホタルイカが襲われていると感じ、光ることによって見られる現象が「ホタルイカの身投げ」なのです。
富山湾の「ホタルイカ群遊海面」
ホタルイカが大群で海岸近くまでやってくるのは世界的に見ても富山湾だけです。富山湾の中でも特に常願寺川右岸から魚津市にかけて約15㎞の沖合、約1.3㎞の海面は「ホタルイカ群遊海面」として国の特別天然記念物に指定されています。
ホタルイカの群遊海面
富山市水橋町(常願寺右岸)から魚津市にかけての海域は、ホタルイカの群遊海面として有名。このような場所はほかに例がなく、富山湾の海底地形や環境などが大きく関係していると考えられています。ホタルイカの生態を学ぶことができる「ほたるいかミュージアム」では、ホタルイカや深海生物の発光ショーが見られます。
ほたるいかミュージアム
- 住所
- 富山県滑川市中川原410
- 交通
- あいの風とやま鉄道滑川駅から徒歩8分
- 料金
- 入館料(6月1日~翌3月19日)=大人620円、小人310円/入館料(3月20日~5月)=大人820円、小人410円/
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・立山連峰との高低差4000m!「きときと」ぞろいの富山湾
・黒部ダムが大電源を生み出すまで
・崩壊を続ける立山カルデラ
・極東の氷河の南限は立山! 国内初の氷河認定とライチョウ
・神秘の光景! 魚津の蜃気楼と雨晴海岸の気嵐
・2000年前に形成された魚津埋没林
・富山の水がおいしいヒミツ
・立山の地下には「何か」がある! 活断層はあるのに地震が少ない理由
・富山湾のホタルイカはなぜ有名?
…など
Part.2 富山を駆ける充実の交通網
・北陸新幹線開業による光と影
・河川敷にある富山きときと空港
・SDGs未来都市に選定 ライトレールが象徴するまちづくり
・伏木港は神戸港に憧れた男の夢
・立山の観光ルートは1つじゃない? 一般開放が待ち遠しい黒部ルート
・マッターホルンの麓町から着想 低速電気バスEMUと宇奈月温泉
・鉄オタ集結地! 富山県は公共交通の宝庫
・V字峡谷を走るトロッコ電車
…など
Part.3 富山の歴史を深読み!
・江戸時代は鮎だった! 駅販売で広がったます寿し
・富山県成立までの複雑な歴史/越中の英雄・佐々成政の人物像
・焼け野原と化した富山大空襲/富山の遺跡&古墳は個性派ぞろい
・放生津に存在した亡命政権
・越中の伊能忠敬 射水出身の測量家・石黒信由
・越中の黄金郷 加賀藩極秘の「越中の七かね山」
・北陸近代医療の父・黒川良安
・世界遺産は加賀藩の軍事工場 五箇山でおこなわれた塩硝づくり
…など
Part.4 富山で育まれた文化や産業
・「越中おわら節」はなぜ有名?
・財政難を立て直した富山の売薬
・布教のためのテキストだった 曼荼羅から読み解く立山信仰
・秀吉も称えた伝説の刀工・郷義弘
・売薬商人は危ない橋を渡っていた? 薬の密貿易が生んだ昆布文化
・有名な創業者も多く輩出 富山県民は倹約家で働き者
・ジャポニズムの立役者・林忠正
・アニメの聖地が多い富山県
・瑞泉寺再建から始まった井波彫刻
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