外城制度を確立させた薩摩藩
この制度では、領内(鹿児島城下とその近在、琉球、南西諸島を除く)を110ほどの「外城」と呼ばれる行政区画に分けていました。外城の区域内には拠点となる城砦(じょうさい)が存在し、その城砦を中心に麓(ふもと)集落を形成。麓集落に武士(外城衆中)を集住させ、各区域の地方行政と防衛を任せました。
このため領内の各地に武士団が屯田しているような状態となっていました。なお、外城衆中は半農半士であったため、城下士からは下に見られがちであったといわれます。
薩摩藩の藩庁は、1601(慶長6)年頃に初代藩主・島津忠恒(ただつね)(家久)によって築城された鹿児島城(鹿児島市城山町)であり、この鹿児島城を「内」とし、その外衛(げえ)という意味で「外城」と呼称されました。
外城制度は戦国期の本城–支城の関係を引き継いでおり、1615(慶長20)年に幕府が発した一国一城令に背くものでした。事実、1633(寛永10)年に薩摩藩領を視察した幕府巡検使(じゅんけんし)からは、なぜこのような制度を用いているのか詰問されてしまいます。このとき薩摩藩の家老たちは、武士の多さと、生産性の低い南九州の土地で武士を養う困難さを理由として説明しています。
外城は「郷」と改称される
外城の数は江戸時代初期には変動があったものの、1744(延享元)年に今和泉(指宿市)が新設されたのを最後に、113に定まります。そして、1784(天明4)年から外城は「郷」と改称され、外城衆中も「郷士」と呼ばれるようになりました。
外城制度によって薩摩藩内の一揆は抑止された
江戸時代は全国的に農民一揆が頻発し、ときには藩政を揺るがすほど大規模な一揆に発展することも珍しくありませんでした。しかし、薩摩藩では領内の各地に外城衆中がいたので、組織的な農民反乱は見られなかったのです。ただし、それは農民に不満がなかったというわけではなく、外城衆中による監視が厳しかったにすぎません。
薩摩独自の郷中教育とは?
郷中教育(ごじゅうきょういく)とは、薩摩藩における武士階級の子弟(男子に限る)の教育方法です。町単位で武家の男子を小稚児(こちご)(6〜10歳)、長稚児(おせちご:11〜15歳)、二才(にせ:元服から25歳くらいまで)に分類し、教師がいないかわりに年長者が年少者に教えました。島津中興の祖・島津忠良がつくった「日新公(にっしんこう)いろは歌」などを教育の根幹とし、読み書きや古典、武芸などを学びました。
鹿児島城下の下加治屋町の郷からは西郷隆盛や大久保利通、東郷平八郎など維新を代表する偉人が数多く輩出されました。
下加治屋郷中
西郷隆盛らを輩出した下加治屋郷中をはじめ、幕末には城下に36の郷中があったといわれています。
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・アンモナイトやクビナガリュウなど恐竜時代の化石が獅子島で続々!
・屋久島は巨大な花崗岩の塊を付加体が取り巻いている!
・超巨大火山「喜界カルデラ」に知られざる溶岩ドームが存在!
・薩摩富士・開聞岳や池田湖ほか薩摩半島南東部の火山群の歴史
・テーチ木と奄美の赤黄色土が生む日本を代表する絹織物・大島紬
…などなど鹿児島の自然のポイントを解説。
Part.2 鹿児島を駆け抜ける充実の鉄道網
・明治時代開通の鹿児島線 鹿児島~国分に始まる鉄道史
・新大阪からの直通も走る!九州新幹線鹿児島ルートの全貌
・国内屈指の大幹線として君臨・東京直通も走った鹿児島本線
・日本最長の寝台特急も走った九州東部を縦貫する日豊本線
・「おれんじ食堂」の投入など奮闘する肥薩おれんじ鉄道
・開聞岳ほか薩南の絶景を満喫!JR最南端駅もある指宿枕崎線
・県内唯一の私鉄も今や幻に・鹿児島交通枕崎線&知覧線
…などなど鹿児島の鉄道事情を解説。
Part.3 鹿児島で動いた歴史の瞬間
・鹿児島の古代史総論
・国内最古級の大規模な定住集落跡・上野原遺跡とは?
・政府と薩摩の間に起った軍事的衝突
・日本の南の玄関口・鹿児島に鉄砲やキリスト教が伝来
・九州統一を目指す島津氏VS九州攻めに乗り出した豊臣秀吉
・江戸~薩摩間約1700㎞!最も遠方からの参勤交代
・鹿児島城の築城と薩摩藩独自の外城制度
・薩英戦争が薩摩藩にもたらした近代化と倒幕への方針転換
・戦後アメリカの統治下となった奄美群島が日本復帰
…などなど鹿児島の歴史を徹底解説。
Part.4 鹿児島で育まれた産業や文化
・近代産業の礎を築いた集成館
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・かつては海軍の航空基地・鹿児島空港開港の歴史
・志布志湾に浮かぶ人工島にある志布志国家石油備蓄基地とは?
・鹿児島臨海工業地帯の造成の変遷をたどる
・ロケット打ち上げ施設は国内唯一・日本で宇宙に一番近い県
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