薩摩藩の初代藩主・島津家久（忠恒（ただつね））は、1609（慶長14）年に徳川家康の許可を得て琉球王国（沖縄県）へと侵攻。奄美群島を支配下に置き、琉球王国を服属させました。琉球は、形式上は独立国家の体裁を保ちましたが、薩摩藩は琉球を窓口として中国貿易で利益をあげるようになっていきます。

琉球を含めた薩摩藩の石高は72万石とされましたが、実高は50万石にも満たなかったといわれます。しかし、幕府から課せられる諸役は72万石から起算されたため、薩摩藩の財政はつねにひっ迫していたのです。

とりわけ幕府から命じられた手伝普請は負担が大きく、宝暦治水（木曽川、揖斐川、長良川）では莫大な借金を負いました。予算を切り詰めた工事現場では赤痢の流行により凄惨を極め、さらに幕府側から嫌がらせを受けたといわれています。

なお、このときの借金返済のために白羽の矢が立てられたのが奄美群島のサトウキビであり、島民に苛烈な収奪を行ったのです（のちに「黒糖地獄」と呼ばれます）。

幕末に黒船が来航して安政の五カ国条約が結ばれるようになると、日本の鎖国体制は崩壊します。生麦事件から薩英戦争に発展すると、ヨーロッパとの力の差を目の当たりにした薩摩藩は、積極的に西洋文化を取り入れるようになりました。

情勢が大きく変化するなか頭角を現したのが、西郷隆盛と大久保利通です。土佐脱藩士・坂本龍馬の働きかけで薩摩藩は長州藩と密約を結び（薩長同盟）、そして明治維新を成功させるのでした。

なお、江戸時代には全国的に神仏混淆（しんぶつこんこう）の傾向が見られましたが、1868（明治元）年に明治新政府から神仏分離令が出されると、薩摩藩内では廃仏毀釈（はいぶつきしゃく）（仏教の排斥）が徹底されました。

薩摩藩内にあった1616の寺院はすべてなくなり、2964人の僧侶が還俗させられたのです。薩摩藩は廃寺によって得た財源で軍備の拡充を図ったとされます。

地形、交通、歴史、産業…あらゆる角度から鹿児島県を分析！
鹿児島県の地形や地質、歴史、文化、産業など多彩な特徴と魅力を、地図を読み解きながら紹介するマップエンターテインメント。鹿児島の知っているようで知られていない意外な素顔に迫ります。地図を片手に、思わず行って確かめてみたくなる情報を満載！