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溶結凝灰岩と柱状節理の形成の仕組み

鹿児島県には大噴火によって生まれたカルデラが四つあり(加久藤(かくとう)カルデラ、姶良(あいら)カルデラ、阿多(あた)カルデラ、鬼界(きかい)カルデラ)、さらに日本の活火山の約1割にあたる11の活火山があります。かつて、これらの火山から噴出された火砕流堆積物が冷え固まり、長い年月のうちに溶結凝灰岩になっていったのです。

溶結凝灰岩は冷え固まるとき、柱のような割れ目(柱状節理(ちゅうじょうせつり))ができます。そのため切り出しや加工が容易で、古くからさまざまな石造物に利用されてきたのです。

鹿児島の溶結凝灰岩の代表「たんたど石」

ひと口に鹿児島の溶結凝灰岩といっても、約20種類もの岩石があるといわれています。その代表的なもののひとつが「たんたど石」です。たんたど石は、約50万年前、姶良カルデラから噴出した吉野火砕流堆積物の溶結凝灰岩だと考えられており、吉野台地で産出されます。

鹿児島城の石垣に多く使われているほか、幕末に薩摩藩の大砲を設置した「お台場」(砲台跡)、集成館事業のひとつである反射炉の燃料として用いる木炭を製造した「寺山炭窯跡(てらやますみがまあと)」など、鹿児島の歴史的に重要な建造物にも使われています。

鹿児島の溶結凝灰岩「小野石」

約30万年前に加久藤カルデラから噴出した火砕流堆積物が溶結したのが「小野石」です。鹿児島市の中心部を流れる甲突川(こうつきがわ)流域、とくに小野周辺で採れる石材のため、小野石と呼ばれました。

同じ溶結凝灰岩でも、たんたど石とは性質が違い、断熱性にすぐれ、粘りがあるため、旧集成館機械工場(現・尚古集成館)、旧鹿児島刑務所などの建材として使われています。

鹿児島の溶結凝灰岩「加治木石」

姶良市で採れる「加治木(かじき)石」は、約60万年前の鍋倉火砕流の溶結擬灰岩です。

この石は硬い反面、多くの気泡を含んでいるため、断熱性・保湿性にすぐれ、初代帝国ホテルの玄関に使われました。姶良市では、酒蔵などによく利用されています。

鹿児島の溶結凝灰岩「山川石」

指宿(いぶすき)市山川福元(やまがわふくもと)周辺で採れる「山川石」は、黄色みがかった溶結凝灰岩です。かつて竹島の南に浮かぶ俣川洲(またごし)付近にあった火口から噴出した火砕流堆積物だと考えられています。

山川石は、のこぎりで切れるほど柔らかく、微細な隙間が多いので断熱効果にすぐれています。この石に舌をつけると毛細管現象のため唾液が吸われ、舌に吸いつくような感じがします。膨張や収縮しにくく、風化に強いので、墓石としてよく利用されており、島津家の墓所がある福昌寺(ふくしょうじ)跡の歴代藩主の墓石に使われているのも山川石です。

鹿児島市内の溶結凝灰岩でつくられたおもな建造物

鹿児島市内の溶結凝灰岩でつくられたおもな建造物

鹿児島県には約20種類の溶結凝灰岩があり、さまざまな建造物に利用されています。旧集成館では反射炉にたんたど石(諸説あり)、機械工場(現・尚古集成館)に小野石など、用途によって使い分けがされていました。

旧鹿児島刑務所正門
1908(明治41)年に建てられました。鹿児島県出身の建築家・山下啓次郎の設計です。

鹿児島城
石垣にもっとも多く使われているのは、吉野台地で採れる「たんたど石」です。

島津斉彬(なりあきら)夫妻の墓
使われているのは山川石。加工しやすく経年劣化が少ないです。

鹿児島の石文化の発展は火山の噴火が生み出した恵み

このように鹿児島では、古来さまざまな溶結凝灰岩が目的に応じて使われてきました。鹿児島で多様な石文化が発展したのも、火山の噴火が生み出した恵みのひとつといえるでしょう。

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Part.1 地図で読み解く鹿児島の大地

・鹿児島を筆頭に九州になぜ火山が多く一直線に並ぶ?
・大正時代に驚くべき大噴火!桜島の形成とメカニズム
・アンモナイトやクビナガリュウなど恐竜時代の化石が獅子島で続々!
・屋久島は巨大な花崗岩の塊を付加体が取り巻いている!
・超巨大火山「喜界カルデラ」に知られざる溶岩ドームが存在!
・薩摩富士・開聞岳や池田湖ほか薩摩半島南東部の火山群の歴史
・テーチ木と奄美の赤黄色土が生む日本を代表する絹織物・大島紬

…などなど鹿児島の自然のポイントを解説。

Part.2 鹿児島を駆け抜ける充実の鉄道網

・明治時代開通の鹿児島線 鹿児島~国分に始まる鉄道史
・新大阪からの直通も走る!九州新幹線鹿児島ルートの全貌
・国内屈指の大幹線として君臨・東京直通も走った鹿児島本線
・日本最長の寝台特急も走った九州東部を縦貫する日豊本線
・「おれんじ食堂」の投入など奮闘する肥薩おれんじ鉄道
・開聞岳ほか薩南の絶景を満喫!JR最南端駅もある指宿枕崎線
・県内唯一の私鉄も今や幻に・鹿児島交通枕崎線&知覧線

…などなど鹿児島の鉄道事情を解説。

Part.3 鹿児島で動いた歴史の瞬間

・鹿児島の古代史総論
・国内最古級の大規模な定住集落跡・上野原遺跡とは?
・政府と薩摩の間に起った軍事的衝突
・日本の南の玄関口・鹿児島に鉄砲やキリスト教が伝来
・九州統一を目指す島津氏VS九州攻めに乗り出した豊臣秀吉
・江戸~薩摩間約1700㎞!最も遠方からの参勤交代
・鹿児島城の築城と薩摩藩独自の外城制度
・薩英戦争が薩摩藩にもたらした近代化と倒幕への方針転換
・戦後アメリカの統治下となった奄美群島が日本復帰

…などなど鹿児島の歴史を徹底解説。

Part.4 鹿児島で育まれた産業や文化

・近代産業の礎を築いた集成館
・日本の金産出量の約9割を占める菱刈鉱山がすごい!
・かつては海軍の航空基地・鹿児島空港開港の歴史
・志布志湾に浮かぶ人工島にある志布志国家石油備蓄基地とは?
・鹿児島臨海工業地帯の造成の変遷をたどる
・ロケット打ち上げ施設は国内唯一・日本で宇宙に一番近い県
・古代より栄えた坊津の港に代わり枕崎が遠洋漁業の拠点に!
・本土が半分がやせたシラス台地なのになぜ全国有数の農業県になれた?

…などなど鹿児島の産業と文化を丁寧に解説。

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