甑島列島は、かつて九州の西南に突き出していた半島が陥没してできたと考えられ、ほとんどの島において、急峻な山肌が海に迫っています。とくに島の北西側と南東側の海岸に断崖が多く、これは北西・南東方向に吹く激しい風や波の侵食によるものです。海岸は複雑に入り組んだリアス海岸で、浦内湾（うらうちわん）など陸地の奥まで海が入り組んだ地形も見られます。

上甑島・中甑島・下甑島の主要3島は、河川の侵食による沖積平野（ちゅうせきへいや）が少ないです。そのいっぽうで、上甑島・中甑島にはなだらかな丘陵が広がっているのに対し、下甑島は山地が多く、西側には切り立った断崖が点在しています。

上甑島の里町（さとちょう）地区では、トンボロという日本では珍しい地形があります。トンボロとは、イタリア語で陸地と島を繋ぐ陸繋砂州（りくけいさす）のこと。

里町の中心地付近は、海底の砂や石が沿岸流によって運ばれ、波の作用によって水面上に現れたトンボロの上に位置しています。このトンボロは、長さ約1500m、最大幅約1000m、最小幅約250m、高さ2～3mに達しています。

トンボロと並ぶ景勝地「長目の浜」は、太古からの風波で崩れた上甑島北西部の山裾が、沿岸流や季節風で運ばれてリアス海岸を埋め立て、幅約50m、長さ約4㎞の砂州になったものです。

長目の浜には、砂州によって外海から隔てられた三つの海跡湖（かいせきこ）（海鼠（なまこ）池、貝池、鍬崎池（くわざきいけ））が並んでおり、さらに隣接して須口池があります。これらは「甑四湖」と呼ばれています。

下甑島は400～500mの険しい山地が多く、西海岸の鹿島（かしま）断崖や瀬々野浦（せせのうら）断崖では、高さ100～200mの海食崖（かいしょくがい）が連続し、幾重にも重なった地層を見ることができます。この地層は、約8000万年前の中生代白亜紀後期のもので、姫浦層群から恐竜の歯や肋骨の化石も発見されています。

下甑島の西側、東シナ海の沖合には「ナポレオン岩」と呼ばれる高さ127mの巨岩がそびえ立ち、下甑島のシンボル的存在になっています。

甑島は、多様な海岸景観などが評価され、2015（平成27）年に国定公園に指定されています。トンボロ、海食崖、岩礁など国内でも貴重な地形を数多く有しているのが、甑島なのです。

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