このような稀有な自然を育んだ屋久島は、その島の成り立ちもユニークです。

屋久島のほとんどは花崗岩の岩体で形成されています。そして、北西側を除いた周囲の海岸部には、接触変成岩であるホルンフェルスや粘板岩（ねんばんがん）などの堆積岩（日向層群）が分布しています。この堆積岩の地層は、約4000万年前、太平洋側の深い海（琉球海溝）に堆積した土砂が、フィリピン海プレートの北上によって大陸側に押し付けられてできた付加体堆積物です。屋久島の付加体の地層では、海底火山から噴出した枕状溶岩や、海洋生物の生痕化石が見られます。

いっぽう、島の大部分を占める花崗岩は、より新しい時代、約1600万〜1500万年前に形成されました。プレートの沈み込み帯の深部で生成されたマグマが、付加体の堆積岩中に貫入してマグマ溜まりをつくり、それがゆっくりと冷えて固まってできたのが花崗岩です。

屋久島の花崗岩は、大きな正長石結晶を含んでいるのが特徴です。また、花崗岩と粘板岩の接触した領域では、マグマの熱によって菫靑石（きんせいせき）という鉱物が再結晶し、接触変成岩のホルンフェルスになっています。さらに入り込んだ境目にはタングステン鉱脈ができ、島内には鉱山跡も点在しています。地質図を片手に、島の岩を観察してみるのもよいでしょう。

このような屋久島の地質は、屋久杉が長寿であることにも関係しています。

そもそも、花崗岩が風化してできる土は栄養が乏しいです。その上、年間雨量8000㎜を超える雨がその花崗岩の急斜面を洗い流してしまうため、栄養豊富な土壌が堆積しにくいのです。このような貧栄養の環境は杉の生長が遅く、年輪の幅が狭くなり、丈夫で折れにくい木質になります。そのため、台風銀座に位置しながらも倒れることなく、何千年という時を生きて巨木、屋久杉に育つのです。

大川の滝
花崗岩マグマの熱に焼かれて変質した岩石（接触変成岩）が広範囲に露出しています。周囲の岩石よりも硬いため滝が形成されました。

田代海岸の枕状溶岩
溶岩が海底で噴出する際に、表面から急冷して固まり、枕が積み重なったような形状になりました。屋久島町の天然記念物です。

ウィルソン株
樹齢約3000年、周囲約 13.8ｍの屋久島最大級の杉の切り株。中に入って見上げるとハート型に縁取られて見えます。

縄文杉
屋久杉を代表する古木。幹まわりは約16ｍ、樹高は約30ｍ。樹齢は諸説ありますが、一説には3000年以上とされます。

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