目次
獅子島を覆う地層とその特徴
獅子島の大部分を覆っているのは、熊本・天草から続く「御所浦層群」と呼ばれる約1億年前の地層です。1億年前といえば中生代白亜紀(約1億4500万~6600万年前)中期~後期にあたり、恐竜が地上を支配していた時代です。
御所浦層群は砂岩頁岩互層(さがんけつがんごそう)(砂岩と頁岩の互い違いの層)や砂岩からなります。さらにこの地層は、二枚貝やアンモナイトの化石が多く見つかる幣串(へぐし)層と、汽水性の二枚貝や巻貝が多く見つかる片側(かたそば)層に分けることができます。なかでも多く見つかるのは、「トリゴニア(三角貝)」と呼ばれる海にすんでいた二枚貝の化石です。
獅子島北西岸の地層「姫浦層群」とその特徴
また獅子島の北西岸にある御所ノ浦周辺では、「姫浦(ひめのうら)層群」という御所浦層群よりやや新しい地層が露出しています。姫浦層群は、御所ノ浦港周辺と北東端の白浜海岸の狭い範囲にブロック状、あるいは断層に挟まれた形で分布しており、アンモナイトや二枚貝の化石が多く見つかります。
さらに北西海岸沿いには、新生代古第三紀(約6600万~2303万年前)の数千万年前の地層が露出しています。
獅子島で見つかったクビナガリュウの化石
近年、獅子島がとくに注目を集めているのは、2004(平成16)年2月、獅子島南西部幣串地区の海岸付近でクビナガリュウの化石が見つかったからです。発見したのはアマチュア化石採集家の宇都宮聡(うつのみやさとし)氏です。
獅子島で見つかったクビナガリュウの化石とは
クビナガリュウとは、中生代ジュラ紀から白亜紀にかけて栄えた、海にすむ大型の爬虫類のことで、発掘されたのは頭や首を中心とする体の前方部分。日本でもクビナガリュウの仲間の化石は比較的多く見つかっていますが、九州ではこれが初めて。しかも国内最大級のクビナガリュウの化石でした。
獅子島のクビナガリュウの化石は東アジアで最古のものだった
2004(平成16)年8月~2006(平成18)年1月にかけて発掘地点周辺の調査が行われた結果、獅子島で見つかったクビナガリュウは全長5~6m、首の長さが全長の3分の2もあるエラスモサウルスの仲間であることなどがわかりました。
そして一緒に見つかったアンモナイトの化石などから、このクビナガリュウが生きていたのは、約9800万年前の白亜紀後期だったことも判明したのでした。現在、この化石は、東アジアで最古のクビナガリュウの化石とされています。
獅子島で見つかったクビナガリュウの化石は「サツマウツノミヤリュウ」と命名
獅子島で見つかったクビナガリュウの化石は、鹿児島県の古い地名である「薩摩」と発見者の名前から「サツマウツノミヤリュウ」と名づけられました。サツマウツノミヤリュウの化石をはじめ、獅子島全域で発見された化石は長島町の天然記念物に指定されています。
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Part.1 地図で読み解く鹿児島の大地
・鹿児島を筆頭に九州になぜ火山が多く一直線に並ぶ?
・大正時代に驚くべき大噴火!桜島の形成とメカニズム
・アンモナイトやクビナガリュウなど恐竜時代の化石が獅子島で続々!
・屋久島は巨大な花崗岩の塊を付加体が取り巻いている!
・超巨大火山「喜界カルデラ」に知られざる溶岩ドームが存在!
・薩摩富士・開聞岳や池田湖ほか薩摩半島南東部の火山群の歴史
・テーチ木と奄美の赤黄色土が生む日本を代表する絹織物・大島紬
…などなど鹿児島の自然のポイントを解説。
Part.2 鹿児島を駆け抜ける充実の鉄道網
・明治時代開通の鹿児島線 鹿児島~国分に始まる鉄道史
・新大阪からの直通も走る!九州新幹線鹿児島ルートの全貌
・国内屈指の大幹線として君臨・東京直通も走った鹿児島本線
・日本最長の寝台特急も走った九州東部を縦貫する日豊本線
・「おれんじ食堂」の投入など奮闘する肥薩おれんじ鉄道
・開聞岳ほか薩南の絶景を満喫!JR最南端駅もある指宿枕崎線
・県内唯一の私鉄も今や幻に・鹿児島交通枕崎線&知覧線
…などなど鹿児島の鉄道事情を解説。
Part.3 鹿児島で動いた歴史の瞬間
・鹿児島の古代史総論
・国内最古級の大規模な定住集落跡・上野原遺跡とは?
・政府と薩摩の間に起った軍事的衝突
・日本の南の玄関口・鹿児島に鉄砲やキリスト教が伝来
・九州統一を目指す島津氏VS九州攻めに乗り出した豊臣秀吉
・江戸~薩摩間約1700㎞!最も遠方からの参勤交代
・鹿児島城の築城と薩摩藩独自の外城制度
・薩英戦争が薩摩藩にもたらした近代化と倒幕への方針転換
・戦後アメリカの統治下となった奄美群島が日本復帰
…などなど鹿児島の歴史を徹底解説。
Part.4 鹿児島で育まれた産業や文化
・近代産業の礎を築いた集成館
・日本の金産出量の約9割を占める菱刈鉱山がすごい!
・かつては海軍の航空基地・鹿児島空港開港の歴史
・志布志湾に浮かぶ人工島にある志布志国家石油備蓄基地とは?
・鹿児島臨海工業地帯の造成の変遷をたどる
・ロケット打ち上げ施設は国内唯一・日本で宇宙に一番近い県
・古代より栄えた坊津の港に代わり枕崎が遠洋漁業の拠点に!
・本土が半分がやせたシラス台地なのになぜ全国有数の農業県になれた?
…などなど鹿児島の産業と文化を丁寧に解説。
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