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金沢の文豪・徳田秋聲の生い立ちと浅野川周辺の風景

泉鏡花が生まれる前年、徳田秋聲(とくだしゅうせい)は同じく浅野川周辺で生まれました。代々加賀藩に仕えた家柄でしたが、廃藩置県後に家は困窮。のちに日常や人生をありのままに描ききるリアルな筆致が評価を得ましたが、根底にはこの不遇な幼少時代があったといわれます。

旧制第四高等学校に通いましたが、中退し、尾崎紅葉の門を叩きました。泉鏡花らとともに紅門の四天王と称されましたが、作家としては後輩の泉鏡花に遅れをとるばかりでした。

転機となったのは、明治44(1911)年に発表した私小説『』(かび)。結婚の経緯とその後の無気力な生活を描き、動かざる事実をそのまま描くという自然主義作家としての地位を築きました

『黴』のなかで、浅野川周辺の風景を「川を隔てて山の木の繁みが見え、家の周りには田畑が多く、刺激の多い都会生活に疲れた神経が柔らかいブラシで撫でられるようだった」と表現しており、望郷の念が読み取れます。田畑は少なくなったものの、徳田秋聲を癒した風情は今もそれほど変わっていないはずです。

浅野川周辺地図

浅野川周辺地図

浅野川大橋の上流側に架かる梅ノ橋。橋のそばには、『義血俠血』のヒロイン・瀧の白糸像が建てられています。

浅野川周辺地図

金沢の文豪・室生犀星の生い立ちと犀川

一方、室生犀星(むろうさいせい)は犀川近く、現在の千日町で生まれました。父は加賀藩の足軽頭だった武家の出でしたが、母にあたるハルは父の女中に過ぎず、室生犀星は私生児でした。このため、生後すぐに近くの寺の住職の内縁の妻ハツにもらわれ、照道と名付けられました

俳句に興味をもち、15歳のときに初めて北國新聞に句が掲載され、その2年後には文芸雑誌『文章世界』で小品が入選。この頃から室生犀星と名乗り始めました。

21歳で上京してから小説家として才能を開花させ、40歳以降はほとんど帰郷しませんでしたが、金沢については「郷土がいつも私の仕事を助けてくれる」と話しています。特に犀川への愛着はひとしおで、『抒情小曲集』では、「うつくしき川は流れたり そのほとりに我は住みぬ」と詠っており、犀川への愛情を惜しみなく表現しました。

犀川周辺地図

犀川周辺地図

犀川沿いには流し雛を象った赤御影石の室生犀星詩碑があり、室生犀星自筆の碑面には『小景異情』の一節あんずの詩が刻まれています。

現代の金沢の文豪・五木寛之氏

金沢の川に魅了されたのは、三文豪だけではありません。作家の五木寛之氏も、金沢で執筆活動に励んだ経歴をもちます。出身は福岡ですが、夫人が金沢出身であったため、昭和40(1965)年に金沢へ移住して小立野台地のアパートで暮らしました。金沢を離れてからも、金沢を舞台とする作品を多く執筆しています。

主計町が舞台となった作品『浅の川暮色』は、新聞記者と芸妓見習いの恋物語。作中に出てくる鍋料理店は浅野川沿いの「太郎」がモデルとなっており、店の前には記念碑が設置されています。実際、五木寛之氏はこの風情溢れる川沿いの店が大のお気に入りだったようです。

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Part.1 地図で読み解く石川の大地

・石川県は天気予報が難しい?能登と加賀の地形と天気
・伊能忠敬を苦しめた外浦・内浦
・珠洲岬はなぜパワースポット?
・霊峰白山と「しらやまさん」
・金沢は街そのものが博物館
・能登の歴史的遺産「千枚田」
・金沢の用水が果たした役割
・坂を上ると世界が変わる?魔性が宿る金沢の坂
・市内に25ヵ所以上の石切り場が存在!小松は日本の宝玉の産地

Part.2 石川を走る交通網のアレコレ

・開業後、石川はどう変わったか?北陸新幹線のココがすごい!
・活発化する海の玄関口、金沢港
・官民共用で発展する小松飛行場
・路面電車「青電車」が消えた理由
・鉄道交通の要「金沢駅」の誕生秘話
・粟崎へ人々を運んだ浅野川電鉄
・石川の伝統工芸が随所にあしらわれた、能登を走る2つの観光列車
・石川県唯一の私鉄、北陸鉄道の歴史をふりかえる

Part.3 石川の歴史を深読み!

・実は3代利常が名君だった!
・前田家の運命を決めた末森城
・利家の妻が有名なのはなぜ?賢妻としてまつが残した功績
・地名の由来はお坊さん?金沢モダンを象徴した香林坊
・縁結びの聖地、恋路海岸に伝わる悲恋伝説
・城郭建築の美を感じる金沢城
・芭蕉や与謝野晶子が愛した加賀四湯
・江戸時代から続く近江町市場
・日本在来馬「能登馬」とは?
・「小京都」と呼ばれたくない!金沢で受け継がれる武家文化
・那谷寺は胎内くぐりの聖地だった
・平家の末裔と2つの時国家
・倶利伽羅峠と安宅関で辿る義経の悲劇
・有名古墳&遺跡はココに注目

…etc.

Part.4 石川で育まれた文化や産業

・六の数字に込められた意味とは?日本三名園「兼六園」は理想の庭
・人間国宝の数が日本一!石川県に息づく伝統工芸の土壌
・古九谷に込めた前田家の対抗心
・あの国宝は実は下絵だった!? 等伯の最高傑作『松林図屏風』
・三文豪が愛した犀川と浅野川
・大伴家持の能登巡行と万葉集
・偉人を輩出した第四高等学校
・祭りのない金沢、祭り天国能登
・和倉温泉と日本一の宿「加賀屋」
・県民の寿司愛と豊富な海の幸
・北前船で発展した大野醤油

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