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白米千枚田の地すべり対策

輪島市の面積426km2のうち山地が約8割と、急峻な地形が大半のため、平地はきわめて少ない土地です。

狭くて急な斜面で、地すべりを抑えつつどうやって活用するべきか。千枚田を耕作する白米町では、当時19戸しかなかった農家がこの課題と向き合いました。

試行錯誤を重ね、急斜面を開墾して段状の農地に変えることで、地滑り対策にもなるという気付きの結果、高低差約50mの急斜地に小区画の水田が見事に耕作された白米千枚田は、「天まで耕作する」と表現されました。

明治12(1879)年の白米村内の土地利用を示した絵図によると、ほぼ現状の畦畔(けいはん)に近い水田の形状が完成していたようです。

白米千枚田の地すべり対策として施された2つの工夫

その後の調査によって、滑り面は地表から10mほどの地中に存在することが判明。ここに杭を打って移動を止める工法が地すべり防止としては一般的ですが、白米千枚田では滑りを助長する地下水を集めるための井戸を掘り、排水するという工法が採られました。この井戸の存在は現在も確認できます。

また、地すべり地帯の中央を横切る国道249号にも工夫が施されました。大型の発泡スチロールブロックを盛土材料として積み重ね、軟弱な地盤に対する負担を軽減するというもので、この方法は当時日本初の施工例といわれました。以前は年間約3cm滑動していましたが、これらの工事によって、現在の滑動は年1cm程度に収まっています。

白米千枚田の水田としての特徴

水田一面あたりの平均面積は約20㎡と狭小で、約4haの斜面に1000枚以上の棚田が広がります。「千枚田」という呼び名は枚数に由来するという説もあれば、「狭い田」からきているという説もあります。

古くからの農具が保有されており、伝統的な農業技術の畦切り法が今もおこなわれます。これは、冬を越した田んぼの畦は保水する能力が低くなるため、その機能を整えるために、畦を削る方法です。

白米千枚田で行われる日本古来の農法「苗代田」

さらに、日本古来の農法「苗代田(なわしろだ)」を復活させ、実際に種籾から苗を育成し、稲作に取り組んでいます

しかし、狭い田んぼには機械を入れることができず、これらの農作業はすべて地元住民とボランティアの手作業によっておこなわれます。当然多くの時間と労力を必要としますが、地域の高齢化や後継者不足により、白米千枚田の存続そのものに暗雲が立ち込めています。

白米千枚田のオーナー制度

そこで誕生したのが白米千枚田オーナー制度です。オーナー会員はお気に入りの田んぼを選び、そこに自分の標柱を建てて「マイ田んぼ」をもてるというものです。

年間7回の耕作作業があり、義務ではなく都合の良いときに作業に参加できるうえ、収穫米10㎏や地元の特産品を受け取れる特典もあります。

このオーナー制度は、白米千枚田の保全だけではなく、地域の活性化と特産物販売による収入増や雇用創出を促進しています。

白米千枚田ではさまざまなイベントも行われる

また、毎年9月には一般募集で選ばれたカップルの結婚式がおこなわれます。能登特有の花嫁行列で千枚田へ向かい、初めての共同作業として稲刈りを体験するというユニークなものです。

観光イベントとしては「あぜのきらめき」が有名で、2万5000個のイルミネーションが畦道に配置され、夜の白米千枚田を彩ります。

耕作条件の厳しい棚田は、日本各地から消えつつあります。そのなかで、地形や農業史、環境保全などの視点で高い評価を得ている千枚田がいかに貴重であるかが分かるでしょう。

単なる観光地としてではなく、農業遺産として後世へ受け継いでいくための取り組みが地域ぐるみでおこなわれています。

白米千枚田

住所
石川県輪島市白米町ハ99-5
交通
能越自動車道のと里山空港ICから県道1号を経由して、国道249号を輪島方面へ車で25km
料金
情報なし

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