大谷石の特徴
採掘したばかりの大谷石がうっすらと緑がかった上品な色をしているのは、緑泥石など緑色の鉱物を含むためで、グリーンタフ(緑色凝灰岩)ともいわれています。加えて、大谷石によく見られる茶褐色の斑点はモンモリロナイトという粘土鉱物の一種で、「ミソ」と呼ばれています。ミソが大きい石、小さい石と画一的でないさまざまな外見が、色味や質感とあいまって、大谷石特有の風情を醸し出しています。こういった石は全国でも他に類がなく、大谷地区でのみ産出する唯一無二の石なのです。
大谷石は古い時代からさまざまな場所に使われてきた
この地域の人々は大谷石とかなり古い時代から関わってきました。縄文時代には住居として大谷石の洞穴が利用されており、古墳時代には石室の石材として使われました。一般に普及したのは江戸時代で、軟らかくて加工しやすく、防火性に秀でた大谷石は、城や寺院の石垣のほか、民家の石蔵や石塀など建築材にしばしば利用されてきました。
大谷石が使われた旧帝国ホテル
大正から昭和にかけては大谷石を使った公共建築も建てられ、その代表格が1923(大正12)年に完成した、アメリカの建築家、フランク・ロイド・ライト設計の帝国ホテル旧本館(ライト館)です 。ライトはさらに、 東京の自由学園明日館(みょうにちかん)や兵庫の旧山邑(やまむら)邸にも大谷石を使用しています。
大谷石の採掘現場「大谷資料館」
1919(大正8)年から1986(昭和61)年まで、約70年かけて大谷石を採掘してきた地下採掘場跡が、今は大谷資料館となっています。その広さは2万㎡といわれ、さながら巨大な地下神殿のような荘厳さです。1960(昭和35)年まではツルハシによる手掘りが行われ、1人が1日に採掘する量は、4000回ツルハシを振るって、「六十石(ろくとお)」と呼ばれるサイズ(18×30×90㎝)の石が10本程度だったとされます。
大谷石の研究で発見された新たな魅力
大谷地区を歩くと、天然の奇岩群と人工的な切り出し面、石造りの重厚な建物など独特な景観が楽しめます。見た目が良いだけではなく、近年では大谷石の研究が進み、多孔質構造を生かしてシックハウス症候群の防止や消臭に利用したり、大量のマイナスイオンを発生させる特性を精神安定や空気清浄に活用したりするほか、大量に含むゼオライト成分が食品の腐敗やカビの発生を防ぐといった実験結果も出ています。地球が吐き出した1500万年前の贈り物の魅力は、まだ発見の途中なのです。
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