蒜山酪農にジャージー牛が導入される
第二次世界大戦後、農業の近代化を図るため稲作と酪農が農業の基幹とされます。政府は1952(昭和27)年に第2次畜産振興計画を策定。このときに乳牛増殖計画も打ち出されます。山が多く平地が少ない日本では、未利用地を活用するため酪農を振興しようとしていました。そこで選ばれたのが、粗飼料(そしりょう)の利用率が高いジャージー牛でした。粗飼料とは、草あるいは草をもとに作られた餌のことです。
低コストの牧草や干し草を消化吸収する能力が高く、それらを主餌にできるジャージー牛は、経済的な乳牛とされました。当初は美作(みまさか)で始まったジャージー牛飼育でしたが、1954(昭和29)年には、広大な牧草地に恵まれた蒜山地域でもジャージー牛の導入が開始されました。
ジャージー牛の特徴
ジャージー牛はイギリス領のジャージー島が原産の乳用種牛です。黒目がちでカフェオレ色の牛毛が特徴。数百年にわたり英国王室御用達の濃厚なミルクを出すため特別に改良された品種で、白黒柄のホルスタイン種と比べると体が一回り小さく、産乳量が2/3程度と少ないため、日本国内ではあまり飼育されていません。しかし、その牛乳は年間平均脂肪分率が約5%(季節によって変動あり)にも達する濃厚なコクと風味を持ち、世界の5大乳用種の中で最も高い乳成分を持つといわれています。ジャージー牛から搾る牛乳は牧草由来のβ-カロテンが多く含まれ、うっすらと黄色がかっていることから“ゴールデンミルク”とも呼ばれています。
蒜山酪農はジャージー牛飼育頭数日本一
現在、日本全国でのジャージー牛の飼育数は約1万頭。その内、蒜山地域では約2000頭が飼育されており(令和2年8月1日現在)、ジャージー牛の飼育頭数は市町村単位で日本一です。蒜山酪農農業協同組合の育成牧場と組合員が経営する24牧場がジャージー種を飼育しており、良質でおいしい牛乳生産を進めるため、土壌改良や牧草管理、健康なジャージー牛の飼育など、土地保全をしながら生乳生産を行っています。
蒜山酪農のジャージ牛乳は毎日集乳
淡褐色毛が特徴のジャージー牛。全ての出荷牧場が蒜山酪農農業協同組合の牛乳・乳製品製造工場から10㎞以内に位置。毎日集乳しているので、新鮮な搾りたての生乳を使った牛乳やヨーグルトなど、乳製品の製造・販売が行われています。
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・蒜山原野の開拓とジャージー牛導入の歴史
・養蚕・イグサ・綿・デニム…。岡山が誇る繊維業
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・倉敷市が一大観光地に成長した理由
・刀工集団・長船派は、どのようにして生まれたのか
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