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大宮が鉄道の町となった理由:大宮工場の成り立ちと国産初の電気機関車

大宮工場は1894(明治27)年10月に日本鉄道(高崎線・東北本線の前身)の汽車課として開設されました。

当初は客車や貨車の修繕を行っていましたが、1919(大正8)年からは信越本線横川〜軽井沢間(碓氷峠)用の10020形(ED40形=鉄道博物館で保存)を国産初の電気機関車として製造しました。

1935(昭和10)年から10年間にわたって製造されたD51形蒸気機関車も大宮工場で31両が新製されており、高い技術力を証明しています。

大宮工場製の機関車ナンバープレートがすごい

大宮工場の秀でた技術のひとつに機関車のナンバープレートの製造があります。

大宮工場製のナンバーは他工場やメーカーに比べ厚さが約10㎜薄いといわれ、文字も細く、数字の「2」や「5」などの曲線もなめらかで優美です。木型、砂型による鋳物の製造は薄いものや細い曲線が一般に難しいですが、大宮工場の繊細なナンバープレートはその技術の高さを表しています。

大宮が鉄道の町となった理由:大宮駅の歴史と「鉄道の町」大宮の発展

いっぽう、大宮工場の南に位置する大宮駅は、日本鉄道の第一区線である上野〜熊谷間開業時には存在しなかった駅です。当時の大宮駅付近は宿場から遠い寒村だったため、駅は必要とされませんでした。

さらに、第二区線福島(白河)への延伸が計画された際も、分岐点は熊谷にする案さえもち上がったほどで、こと鉄道敷設に関して大宮の地位は非常に低かったのです。

これに対し、当時の鉄道局長・井上勝(いのうえまさる)は、大宮分岐案を断固として推進します。結果として距離が短く、工費もかからない大宮分岐案が採用され、大宮の面目が保たれました。

また、大宮の衰退を危惧した白井助七(しらいすけしち)(のちの大宮町長)らの尽力で大宮駅も開設されました。大宮駅の用地は白井の私財で賄っており、同様に大宮工場も白井が私財を投げうって誘致したものでした。

こうして、大宮が高崎線と東北本線の分岐点となったこと、大宮工場が開設されて就労人口が増えたことなどから、大宮は「鉄道の町」として栄えていきます。大量輸送を可能にする鉄道開通はまた、製糸業の発展にもつながり大宮は急速に発展しました。

大宮が鉄道の町となった理由:大宮に鉄道はなくてはならない存在

現在のさいたま新都心には、貨物の操車場の大宮操車場が1927(昭和2)年に開設され、こちらも大いに活躍しました。今日の大宮の繁栄は“鉄道ありき”なのです。

大宮工場は国鉄分割民営化によりJRの工場になりましたが、日本一を競った技術や精神は現在も受け継がれ、近年では蒸気機関車の検査や修繕業務も復活しています。

2020(令和2)年の大宮駅周辺

2020(令和2)年の大宮駅周辺

大発展した大宮には、旧・国鉄の大宮工場が今も健在。他方、かつての大宮操車場は在来線と新幹線とに挟まれた「さいたま新都心」に生まれ変わっています。

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