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長崎県が「大長崎県」になるまで~廃藩置県と府県統合
はじめての廃藩置県は、藩がそのまま県になった結果、明治4(1871)年7月で全国は1使(北海道開拓使)3府302県になりました。今の長崎県、佐賀県にあたる肥前エリアには、各藩が県に置き換えられて11県が誕生。対馬藩は現在の佐賀県唐津付近にも領地をもっていたため、佐賀県へと編入され、以後、何度か府県統合が行われました。
同年11月には長崎県、大村県、平戸県、島原県、福江県が合併して、新長崎県が誕生。このとき、厳原(いづはら)(対馬)県は伊万里県に編入され、さらに諫早周辺の旧鍋島藩家臣の知行地(諫早領、深堀領、神代領)も伊万里県に編入されました。明治5(1872)年、伊万里は佐賀県になりましたが、同年には諫早周辺が長崎県に編入するにともない対馬も長崎県へ移りました。
明治9(1876)年になると、佐賀県が三潴(みずま)県(現在の福岡県の一部)と合併して消滅します。消滅した佐賀県は長崎県に組み入れられて「大長崎県」が誕生しましたが、これには大きな事件が関わっていました。
長崎県に佐賀県が組み入れられることになった佐賀の乱とは
明治6(1873)年、佐賀では征韓論(朝鮮を武力で開国させようという考え)に賛成する士族が征韓党を結成する一方で、旧藩時代の体制を支持する士族が憂国党を結成。明治政府は佐賀県を鹿児島県と並んで難治県として警戒しました。
そこに、中央政府で征韓論を唱えて破れた前参議・江藤新平が帰国。士族たちの暴発を抑えようとしましたが、逆に政府は鎮圧軍を配備し武力で制圧に乗り出しました。
反発した士族は明治7(1874)年、江藤新平を前面に押し立てて政府軍と戦いますが、兵器力に勝る政府軍の前に制圧され、大量の処分者を出すことになりました。「佐賀事件(佐賀の乱)」です。
明治新政府で最初の司法卿を務めるなど明治維新に功労のあった江藤新平は高知県で逮捕され、軍事裁判で梟首(きょうしゅ)の刑となりました。
長崎県は佐賀県の復県によって現在の形になった
佐賀の乱ののち、佐賀県は廃止され三潴県となり、その後長崎県に併合されました。
佐賀の乱の厳しい処分から、分県への動きはしばらくありませんでしたが、明治15(1882)年頃になるとようやく旧佐賀県内で分県運動が盛り上がりました。
翌16(1883)年5月、ついに長崎県から佐賀県が独立します。佐賀県の復県により、ほぼ現在の長崎県ができました。
長崎県周辺の県境の変遷:①明治5(1872)年5月29日
明治4(1871)年の廃藩置県。同年11月には5県が統合されて長崎県になります。対馬は一時佐賀県になるがのちに長崎県に。
長崎県周辺の県境の変遷:②明治9(1876)年4月18日
佐賀事件への厳しい処分を反映して佐賀県が消え、三潴県に併合されます。やがて三潴県が廃止となり長崎県に移管。
長崎県周辺の県境の変遷:③明治9(1876)年8月21日 (3府35県時代)
佐賀県は順次長崎県に移管。明治9年(1876)8月に三潴県が廃止されて旧佐賀県域はすべて長崎県へ併合されました。
長崎県周辺の県境の変遷:④明治16(1883)年5月9日
明治15(1882)年、佐賀県で分県運動が起き、翌年5月長崎県から佐賀県が分離。ほぼ現在の長崎県域になりました。
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