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大村純忠は洗礼を受けるも家臣の謀反が勃発

永禄5(1562)年、横瀬浦が開港し、翌年には大村純忠自身もイエズス会日本布教長のコスメ・デ・トーレス神父から洗礼を受け、ドン・バルトロメウとして日本初のキリシタン大名になります。

一方で、家臣や親族、領民の改宗を強引に進め、養父である大村純前(すみさき)の位牌を焼き捨てるなどの過激な行動にも出ました。こうした行為が仏教徒の家臣から反感を買い、かねて大村純忠打倒の機会を狙っていた武雄領主の後藤貴明と反純忠派の家臣による謀反が勃発

大村純忠はなんとか難を逃れるも、その騒動は横瀬浦へ飛び火し、開港からわずか1年余りで焼失してしまいます。

大村純忠領の長崎が良港として認められる

やむなくポルトガル船は再び平戸に入港しますが、その後も布教がしやすい貿易港を求め南下していきます。

次に入港した大村領の福田港は、外洋に面しているため貿易港には適していなかったこと、松浦氏による襲撃事件があったことなどから撤退。

永禄10(1567)年には布教が進んでいた有馬氏領内の口之津(くちのつ)港に入港しますが、ポルトガル船を自領内に呼び戻そうと目論む大村純忠の働きかけもあり、宣教師たちは再び大村領内で港の調査を始めます。そこで発見されたのが、三方を高い山に囲まれ水深が深い天然の良港、長崎でした。

長崎はポルトガル船の入港で発展

長崎は大村純忠の家臣であり娘婿、そしてキリシタンでもある長崎甚左衛門純景(すみかげ)の領地でした。元亀元(1570)年に開港すると、海に突き出した長い岬に最初の6町が造られ、各地から逃れたキリシタンが移住。ポルトガル船が定期的に入港するようになると、長崎は急速に発展していきます。

大村純忠はイエズス会に長崎と茂木を寄進

一方、大村純忠は強大な勢力を誇る佐賀の龍造寺氏をはじめ、領内にたびたび侵入する西郷、深堀両氏、口之津港にポルトガル船を呼び込もうと画策する有馬氏など、周辺諸国との摩擦に苦悩していました。長崎の権益を守るため一計を案じた大村純忠は、イエズス会巡察使のヴァリニャーノに長崎と茂木の寄進を申し出ます。ポルトガル船を味方につけることで、侵略を防ごうと考えたのです。

寄進の条件は、同会に長崎の司法・行政権と船の停泊料を与える代わりに、関税のみ大村氏が徴収するというもの(諸説あり)。同会の基本方針では所領の受領は禁止だったこともあり、ヴァリニャーノは苦慮しましたが、協議の末これを受け入れ、天正8(1580)年に長崎はイエズス会領になりました

寄進後、キリスト教の布教はさらに進み、天正10(1582)年にはローマに天正遣欧使節が送られます。イエズス会による統治は、豊臣秀吉が長崎を直轄地にする天正16(1588)年まで続きました。

ポルトガル船寄港地の変遷と大名の勢力図

ポルトガル船寄港地の変遷と大名の勢力図

ポルトガル船寄港地は、松浦氏の平戸から南下していきました。大村湾一帯が大村純忠の領地。北に龍造寺氏と純忠暗殺を企てた後藤貴明、東から南にかけて西郷、有馬、深堀各氏の領地があり、大村純忠は周囲を敵に囲まれていました。

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・火山活動が作ったダイナミックな地形! 島原半島ジオパークとは?
・長崎は江戸時代から埋立都市だった?
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・水中調査で解明! 横島沈没の謎
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Part.2 長崎に開かれた多彩な交通網

・初期の長崎本線は早岐経由だった
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・新旧の車両が行き交う長崎電気軌道
・小島が国際空港に! 長崎空港は世界初の海上空港
・長崎が生んだ画期的な交通手段! 坂を上る日本初のエレベーターとは!?
・東洋一と称された西海橋の誕生
・進化を遂げた長崎街道の日見峠
・松浦鉄道には3つの日本一がある!?
・当時の面影が残る雲仙鉄道の廃線跡
・島原鉄道は奇跡のローカル線!?
・吉田初三郎が描いた 長崎の鳥瞰図

Part.3 長崎で動いた歴史の瞬間

・東アジアの一大交流拠点だった! 原の辻遺跡が語る古代の交易
・“神風”の謎が海底遺跡調査で判明!? 鷹島神崎遺跡から見る蒙古襲来
・ポルトガルが平戸で貿易を始めたワケ
・なぜ長崎は教会領になったのか
・町民が主役!? 特例だらけの貿易都市長崎の誕生
・ラクダを飼っていた!? オランダ人の出島生活の実態とは
・龍馬を襲った「いろは丸事件」の真実
・倒幕の裏には大村藩士の活躍があった
・人口約4000人の村が一変!? 寒村だった佐世保が大変貌したワケ

…など

Part.4 長崎で生まれた産業や文化

・印刷も写真も通信も長崎発祥!? 長崎は“日本初”を量産していた!
・世界遺産に登録された日本造船業の原点! 三菱長崎造船所のあゆみ
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