トップ > カルチャー >  九州・沖縄 > 長崎県 >

原の辻遺跡の船着場からわかる壱岐と大陸との密な交流

この原の辻遺跡の大きな特徴のひとつが、西側で発見された東アジア最古と考えられる約2000年前の船着場を備えていること。基礎部分には「敷粗朶(しきそだ)」と呼ばれる中国式の工法が用いられ、木の枝や樹脂、石などが敷かれていました。

その建設には、技術者として朝鮮半島系の人々が関わっており、すでにこの頃から日本と大陸の間に密な交流があったことを示します。

原の辻遺跡の多彩な出土品

日本と大陸との交流は、非常に多彩な出土品の数々からもうかがい知ることができます。その数は、土器などの土製のものだけで711点。ほかに木器や石器、ガラス製、金属製なども合わせると1670点が国の重要文化財に指定されています。

日本製の遺物だけでなく中国古代の貨幣もあり、中国系の商人が訪れ国際的な経済活動を活発に行っていたことがわかります。また、朝鮮半島系の無文土器など100点以上が集落内からまとまって出土したことから、渡来人が九州に移住するための中継地として長期滞在していたのではないかと考えられます。

出土品の年代は弥生前期から古墳時代初期におよび、約600年の長期間にわたり交易都市として栄えていたようです。

原の辻遺跡は『魏志倭人伝』に登場する一支国の王都だった!?

これらの状況から、中国の歴史書『三国志』の『魏志倭人伝(ぎしわじんでん)』に登場する一支国(いっきこく)は壱岐を指しており、原の辻がその王都だったという説があります。同書には、一支国について「三千ばかりの家あり。やや田地あり。田を耕せどもなお食するに足らず。また南北に市糴(してき)す」と記されています。“市糴”とは交易を意味しており、自給自足で補えなかった壱岐では、食糧を確保するためにも交易が大きな役割を担っていました。

しかし、朝鮮半島の後ろ盾となる西晋の滅亡と日本国内の政権変動により、交易ルートが壱岐から福岡(九州本土)に移ってしまいます。これにともない原の辻の役割も小さくなり、4世紀中頃に歴史から姿を消すこととなりました。

原の辻一支国王都復元公園

住所
長崎県壱岐市芦辺町深江鶴亀触1092-5
交通
芦辺港から壱岐交通印通寺方面行きバスで30分、原の辻遺跡下車すぐ
料金
入園料=無料/火おこし体験=100円/勾玉づくり=200円/土器づくり=400円/ガラス玉づくり=300円/

壱岐市立一支国博物館

調査研究機関の「長崎県埋蔵文化財センター」と、展示施設「壱岐市立一支国博物館」が一体になった複合施設。原の辻遺跡をはじめとする壱岐島内の遺跡や古墳から出土した約2000の遺物が常設展示されています。

また、弥生時代の原の辻の人々の暮らしを再現した巨大ジオラマや当時の交易の様子がわかるビューシアター、木造古代船の模型、原の辻遺跡を一望できる展望台なども見どころです。弥生時代の原の辻を再現した巨大ジオラマには、165体の弥生人フィギュアを展示。その中には、実在する壱岐市民をモデルにした、表情豊かなフィギュアも紛れています。

一風変わった外観は、周辺の景観と弥生時代の風景の調和を目指して黒川紀章氏がデザインしたもので、同氏の遺作にもなりました。

壱岐市立一支国博物館

住所
長崎県壱岐市芦辺町深江鶴亀触515-1
交通
芦辺港から壱岐交通印通寺方面行きバスで26分、一支国博物館下車すぐ
料金
入館料=大人400円、高校生300円、小・中学生200円/クッキー=135円(1枚)/(障がい者手帳持参で本人と介護者1名半額)

『長崎のトリセツ』好評発売中!

地形、交通、歴史、産業…あらゆる角度から長崎県を分析!
長崎県の地形や地質、歴史、文化、産業など多彩な特徴と魅力を、地図を読み解きながら紹介するマップエンターテインメント。長崎の知っているようで知られていない意外な素顔に迫ります。地図を片手に、思わず行って確かめてみたくなる情報満載!

Part.1 地図で読み解く長崎の大地

・地殻変動と火山が生んだ唯一無二の景観! 海に囲まれ平地が少ない長崎の地形
・島の数971! 長崎は日本一の多島県
・火山活動が作ったダイナミックな地形! 島原半島ジオパークとは?
・長崎は江戸時代から埋立都市だった?
・「国境の島」対馬の特殊な生態系
・水中調査で解明! 横島沈没の謎
・国内初のティラノサウルス発掘! 長崎は白亜紀の化石の宝庫だった
・世界でも稀な西海市の七ツ釜鍾乳洞
・最先端をゆく五島の洋上風力発電

…など

Part.2 長崎に開かれた多彩な交通網

・初期の長崎本線は早岐経由だった
・新幹線開業に向け再開発中! 長崎駅の今昔
・新旧の車両が行き交う長崎電気軌道
・小島が国際空港に! 長崎空港は世界初の海上空港
・長崎が生んだ画期的な交通手段! 坂を上る日本初のエレベーターとは!?
・東洋一と称された西海橋の誕生
・進化を遂げた長崎街道の日見峠
・松浦鉄道には3つの日本一がある!?
・当時の面影が残る雲仙鉄道の廃線跡
・島原鉄道は奇跡のローカル線!?
・吉田初三郎が描いた 長崎の鳥瞰図

Part.3 長崎で動いた歴史の瞬間

・東アジアの一大交流拠点だった! 原の辻遺跡が語る古代の交易
・“神風”の謎が海底遺跡調査で判明!? 鷹島神崎遺跡から見る蒙古襲来
・ポルトガルが平戸で貿易を始めたワケ
・なぜ長崎は教会領になったのか
・町民が主役!? 特例だらけの貿易都市長崎の誕生
・ラクダを飼っていた!? オランダ人の出島生活の実態とは
・龍馬を襲った「いろは丸事件」の真実
・倒幕の裏には大村藩士の活躍があった
・人口約4000人の村が一変!? 寒村だった佐世保が大変貌したワケ

…など

Part.4 長崎で生まれた産業や文化

・印刷も写真も通信も長崎発祥!? 長崎は“日本初”を量産していた!
・世界遺産に登録された日本造船業の原点! 三菱長崎造船所のあゆみ
・細部まで技巧を凝らした圧巻の建築美! 数々の教会堂を手がけた鉄川与助とは
・テーマパークの枠に留まらない魅力に迫る! 進化するエコシティ ハウステンボス

『長崎のトリセツ』を購入するならこちら

リンク先での売上の一部が当サイトに還元される場合があります。
1 2

記事をシェア

※掲載の情報は取材時点のものです。お出かけの際は事前に最新の情報をご確認ください。

まっぷるトラベルガイド編集部は、旅やおでかけが大好きな人間が集まっています。
皆様に旅やおでかけの楽しさ、その土地ならではの魅力をお伝えすることを目標に、スタッフ自らの体験や、旅のプロ・専門家への取材をもとにしたおすすめスポットや旅行プラン、旅行の予備知識など信頼できる情報を発信してまいります!