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島原鉄道は水害によって大ダメージを負う

ここまでは順風満帆の経緯をたどる島原鉄道に見えますが、台風の通り道のような地域だけに、暴風雨や水害には繰り返し悩まされ続けました

最大の試練は、昭和32(1957)年7月の諫早・島原地方を襲った大水害でしょう。諫早駅〜島原駅で線路流出が約180か所、橋梁流出が約45か所などの被害を被り、55日間にわたって列車の運行ができなくなる事態に見舞われました。同じ水害に遭った近隣の山鹿温泉鉄道は、この時の被害が原因となり廃止に追い込まれています。

島原鉄道は雲仙普賢岳噴火によって存亡の危機に

さらに1990年に発生した雲仙普賢岳噴火による災害でも、線路埋没や流出によって不通と復旧を繰り返しました。運休は最長4年におよび、1997年4月に全線復旧しています。

まさに危急存亡の状況でしたが、国や県などから支援を取り付ける形で復旧にこぎつけたのです。島原鉄道の復旧は、未曾有の大災害に沈む人々の心に力を与える明るい話題となりました。

島原鉄道の生き残りをかけたさまざまな戦略

しかし、時代は必死のローカル線を容赦なく翻弄します。モータリゼーションに押される鉄道の状況、沿線住民の少子高齢化などにより、2000年代に入ると島原鉄道の輸送人員は右肩下がりで減ってゆきます。そして2008年、島原外港駅(現・島原港駅)〜加津佐(かづさ)駅の南目線を廃止するという苦渋の決断を下しました。

残った北目線に生き残りをかけるべく、北目線の増発や急行のスピードアップで利便性向上を図る一方、「幸せの黄色い列車王国」プロジェクトや公式キャラクター「さっちゃん」誕生など、数々の打開策に力を注ぎました。

2017年には、経営状況の悪化により単独での事業継続が困難となるも、長崎自動車の傘下となり経営を再建。新たなスタートを切りました。

島原鉄道路線図

島原鉄道路線図

現在の島原鉄道は、諫早駅〜島原港駅の24駅、43.2kmの区間で営業しています。かつては島原外港駅〜加津佐駅の南目線があ り、島原半島の南側まで海岸線に沿って走っていましたが、沿線人口の減少などの理由で2008年に廃止となりました。

島原鉄道は観光列車で復活をはかる

そして現在、島原鉄道はかつてのにぎわいを取り戻しつつあります。日本一海に近い駅のひとつといわれる大三東(おおみさき)駅や、地元のスイーツなどを景色とともに楽しめる観光列車「しまてつカフェトレイン」がSNSなどで話題となり、若い観光客の利用も増えはじめました。

また、2020年には九州のローカル線で初めて全車両にWi-Fiを導入。2022年秋には、九州新幹線西九州ルート開業で諫早に新幹線がやってきます。

何度転んでも起き上がり続ける「島鉄」の次の一手は、まだ続きます。

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・島の数971! 長崎は日本一の多島県
・火山活動が作ったダイナミックな地形! 島原半島ジオパークとは?
・長崎は江戸時代から埋立都市だった?
・「国境の島」対馬の特殊な生態系
・水中調査で解明! 横島沈没の謎
・国内初のティラノサウルス発掘! 長崎は白亜紀の化石の宝庫だった
・世界でも稀な西海市の七ツ釜鍾乳洞
・最先端をゆく五島の洋上風力発電

…など

Part.2 長崎に開かれた多彩な交通網

・初期の長崎本線は早岐経由だった
・新幹線開業に向け再開発中! 長崎駅の今昔
・新旧の車両が行き交う長崎電気軌道
・小島が国際空港に! 長崎空港は世界初の海上空港
・長崎が生んだ画期的な交通手段! 坂を上る日本初のエレベーターとは!?
・東洋一と称された西海橋の誕生
・進化を遂げた長崎街道の日見峠
・松浦鉄道には3つの日本一がある!?
・当時の面影が残る雲仙鉄道の廃線跡
・島原鉄道は奇跡のローカル線!?
・吉田初三郎が描いた 長崎の鳥瞰図

Part.3 長崎で動いた歴史の瞬間

・東アジアの一大交流拠点だった! 原の辻遺跡が語る古代の交易
・“神風”の謎が海底遺跡調査で判明!? 鷹島神崎遺跡から見る蒙古襲来
・ポルトガルが平戸で貿易を始めたワケ
・なぜ長崎は教会領になったのか
・町民が主役!? 特例だらけの貿易都市長崎の誕生
・ラクダを飼っていた!? オランダ人の出島生活の実態とは
・龍馬を襲った「いろは丸事件」の真実
・倒幕の裏には大村藩士の活躍があった
・人口約4000人の村が一変!? 寒村だった佐世保が大変貌したワケ

…など

Part.4 長崎で生まれた産業や文化

・印刷も写真も通信も長崎発祥!? 長崎は“日本初”を量産していた!
・世界遺産に登録された日本造船業の原点! 三菱長崎造船所のあゆみ
・細部まで技巧を凝らした圧巻の建築美! 数々の教会堂を手がけた鉄川与助とは
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