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長崎街道の難所「日見峠」の開削工事

長崎街道のなかでも、長崎市街から東へ向かう際に越えることになる日見峠は、街道一急峻な坂道で、その険しさから「西の箱根」とも呼ばれていました。それが明治期になると、人力車や荷馬車といった当時の交通手段に対応するために、日見峠の開削工事による道路の近代化が図られます。

まず、明治13(1880)年に日見峠を幅2間(約3.64m)の道路に改修しました。続く明治14(1881)年から翌15(1882)年にかけて、峠を110尺(33m)切り下げる開削工事が行われました。さらに明治20(1887)年に幅5間(約9.1m)へ改修

「日見新道」と呼ばれた工事後の道では、工費の不足分を補うために人や牛馬に対する通行料の徴収が数年間実施されました。一説によれば、これが日本における有料道路の先駆けだといわれています。

長崎街道の日見峠に開通した日見トンネル

大正期には、本格的な自動車交通を考慮した道路整備の必要性が叫ばれ、日見隧道(すいどう)(トンネル)が計画されます。日見峠では開削工事が行われたものの、新道にはまだ急勾配の坂道が多かったためです。

国道改修費の国庫補助を受けて日見トンネルが着工したのは大正13(1924)年。2年後の大正15(1926)年に完成します。全長642m、幅7.4mで、当時としては日本最大規模でした。

昭和に入ってモータリゼーションが進展するにつれ、日見トンネルは長崎に通じる唯一の動脈として大きな役割を果たしました。また、技術的にもデザイン的にも貴重な土木遺産であることが認められて、2002年に国の有形文化財に登録されています。

長崎街道の日見峠の現状

そして1999年には、国道34号日見バイパス事業によって新日見トンネルも開通。さらに2020年、その4車線化が実現して交通渋滞区間の定時制と安全性が向上しました。

長崎における陸路の要衝である日見峠は、土木史的観点から捉えても価値が高いといわれます。急坂の多い江戸時代の街道、人力車や荷車が通る新道、自動車のために造られたトンネルといった具合に、道路の変遷の見本のような場所ともいえるのです。

長崎街道の日見峠の現状

長崎市中心部と各都市を結ぶ国道34号のバイパスとして、新日見トンネルは日見トンネルの北側に建設されました。

長崎街道がシュガーロードと呼ばれる由縁

長崎のカステラや金平糖をはじめとして、諫早のおこし、平戸のカスドース、武雄の甘納豆、小城(おぎ)羊羹、佐賀の丸ボーロ、飯塚の千鳥饅頭、北九州の八幡饅頭など、長崎街道沿いには砂糖をふんだんに使った菓子の発祥地がたくさんあります。

出島に荷揚げされた砂糖が街道を通って、京、大坂、江戸へと運ばれる過程で、各地にもたらされたためです。砂糖を使う菓子作りの技法も一緒に伝えられ、地域の文化や風土と結びついて、個性豊かな銘菓として花開いたのでした。砂糖文化を広めた長崎街道は別名「シュガーロード」とも呼ばれています。

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・島の数971! 長崎は日本一の多島県
・火山活動が作ったダイナミックな地形! 島原半島ジオパークとは?
・長崎は江戸時代から埋立都市だった?
・「国境の島」対馬の特殊な生態系
・水中調査で解明! 横島沈没の謎
・国内初のティラノサウルス発掘! 長崎は白亜紀の化石の宝庫だった
・世界でも稀な西海市の七ツ釜鍾乳洞
・最先端をゆく五島の洋上風力発電

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Part.2 長崎に開かれた多彩な交通網

・初期の長崎本線は早岐経由だった
・新幹線開業に向け再開発中! 長崎駅の今昔
・新旧の車両が行き交う長崎電気軌道
・小島が国際空港に! 長崎空港は世界初の海上空港
・長崎が生んだ画期的な交通手段! 坂を上る日本初のエレベーターとは!?
・東洋一と称された西海橋の誕生
・進化を遂げた長崎街道の日見峠
・松浦鉄道には3つの日本一がある!?
・当時の面影が残る雲仙鉄道の廃線跡
・島原鉄道は奇跡のローカル線!?
・吉田初三郎が描いた 長崎の鳥瞰図

Part.3 長崎で動いた歴史の瞬間

・東アジアの一大交流拠点だった! 原の辻遺跡が語る古代の交易
・“神風”の謎が海底遺跡調査で判明!? 鷹島神崎遺跡から見る蒙古襲来
・ポルトガルが平戸で貿易を始めたワケ
・なぜ長崎は教会領になったのか
・町民が主役!? 特例だらけの貿易都市長崎の誕生
・ラクダを飼っていた!? オランダ人の出島生活の実態とは
・龍馬を襲った「いろは丸事件」の真実
・倒幕の裏には大村藩士の活躍があった
・人口約4000人の村が一変!? 寒村だった佐世保が大変貌したワケ

…など

Part.4 長崎で生まれた産業や文化

・印刷も写真も通信も長崎発祥!? 長崎は“日本初”を量産していた!
・世界遺産に登録された日本造船業の原点! 三菱長崎造船所のあゆみ
・細部まで技巧を凝らした圧巻の建築美! 数々の教会堂を手がけた鉄川与助とは
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